第403話 第二ラウンド──

 ……ピッ……ピッ。ピピッ。ビー! ビー! ビー!


 眠っていたらプランデットがけたたましく鳴った。な、なんだ!?


「イチノセ。動体反応に感。ローダーと思われます」


 飛び起きたらイチゴが目の前にいて、そう言ってきた。


「ローダー? どこだ?」


「東に二キロ。湖の上空を飛んでいます」


 プランデットをかけて三次元マップを開いて動体反応センサーをつけた。


 確かに大きな反応が移動している。産卵していたのより半分くらい小さい。通常のローダーのようだ。


「タカト、どうした?」


 昨日、酒を飲んでいたサイルスさんやエルフたちが一瞬で起き上がり、オレの周りに集まっていた。さすが厳しい世界で生き抜いてきた者たちである。


「通常型ローダーが現れました。今、巣の辺りに下りました」


「どこを探しても産卵する場所が見つからなかったが、ここがローダーたちの産卵地だったってことか」


 なるほど。確かにここには天敵となる者は存在せず、気温も一定でエサもいる。卵を産むには適したところだろうよ。


「カインゼルさん。マンダリンを建物の陰に隠します」


 タワマンの前は大通りであり、こちらにきたとき見つかってしまう。マナックを入れたばかりのものを潰されたら堪らんよ。ブラックリンはホームに戻します。


「わかった」


 すぐに外に出てマンダリンはカインゼルさんに任せ、オレはブラックリンをホームに入れた。


「ミサロ! 新たなローダーが現れた! ラダリオンとミリエルにも伝えておいてくれ。すぐに戦闘にはならない。状況がわかってから報告するから」


 ガレージですり鉢をゴリゴリやっていたミサロに告げてすぐに外に出た。


 通常型ローダーは下りたところからあまり移動しておらず、動体反応で捉えられるくらいの微かな動きしか見せてなかった。


 ドローンを取り寄せ、すぐに飛ばした。


「カインゼルさん、先に入ってますね!」


 そう叫んでタワマンの中に入った。


「全員、プランデットをかけてください。ドローンの映像を映します」


 スケッチブックに手順を書いて映像を見れるようにする。


 ドローンは湖の上に出ており、旋回させてローダーを探した。いた!


 そちらに向けてローダーを拡大させる。


「昔見たローダーと同じだ」


 あれを生身で倒すとかふざけているよな。対物ライフルを持ってても対峙したくないサイズだぞ。


 通常型だからか、映像のローダーはロスキートに似ている。違うと言ったら色だ。


 オレが倒したのは濃い緑であり、今回のは焦茶色をしている。マルスの町で遭遇したのは枯葉色だったな。


「ローダーの基本、ってことですね」


 あんな十メートルの虫が他にもいるとか嫌すぎるぜ。


「あれも産卵しているみたいですね」


「普通の虫は秋に産んで春に孵化するんだがな。なにかあったのか?」


 そういや、カインゼルさんが暖かいところの虫とか言ってたな。外は雪だし、よく死ななかったものだ。


「なにか弱っている感じですな」


「ああ。脚の一本がなくなっているぞ」


 エルフは目がいいのか、細かいところまで見えているよ。


「弱っているなら好機ですね。どうします?」


 サイルスさんに尋ねる。オレはゴブリン以外凡人なので。ベテランの判断に従います。


「やる。ローダーは倒すべき存在だ」


「わかりました。ローダーに弱点はあるんですか?」


 RPG−7を撃てば弱点もないのだが、あるのなら知っておきたい。なんかまた遭遇しそうな気がするし……。


「まず火には弱い。腹が柔らかい。明るいところでは動きが鈍い」


「火に弱いですか。確かによく燃えましたね」


 腹が柔らかいのはなんかわかる。明るいところで動きが鈍いのは視力がいいからだな。


「夜は動きますか?」


「動くな。おそらく夜行性だと思う」


 明るいのは明るいが、眩しくはない。気温も手頃。虫が活動するには最高の場所だろうよ。


「作戦はどうします?」


「突撃はわたしとタカト、イチゴ。ロズたちドワーフは万が一のときのために後方待機。マイズたちエルフは中距離からの攻撃。目を狙え。カインゼルは狙撃だ」


 スケッチブックに配置を書いて自分たちの役割を確かめ合う。


「カインゼルさん。マンダリンでこの建物の上にいってください。湖が一望できると思うので」


 バレットを取り寄せてカインゼルさんに渡す。徹甲弾入りのマガジン二本も。


「わかった。任せろ」

 

 次はリンクスを取り寄せてイチゴに持たせ、専用のマガジンケースを腰に取りつけた。

 

 オレはEARだ。どうせサイルスさんの援護になるだろうからな。軽いほうがいい。


 準備が整えばドローンでローダーの確認をする。


 産卵を始めたようでケツだかを湖に入れていた。絶好のチャンスだ。


 ドローンを戻したらサイルスさんを先頭に湖に向かった。


 一キロの距離なので十分くらいで到着。エルフたちは林の中を移動させ、突撃組のオレらは切り開いた道を進んだ。


「ローダー、未だに産卵中です」


「どうせならどのくらい時間がかかるか知りたいところだが、そんな余裕もないな。ここから頭は狙えるか?」


「問題ありません。イチゴ、ローダーの頭を狙え」


「ラー」


 リンクスを構え、照準を合わせたら引き金を引いた。


 さあ、第二ラウンドだ!


 ────────────────


 そろそろゴブリン要素どこいった? とか突っ込まれそうだけど、しばらくない! と言っておきます。タカトの七転八倒祭りは始まったばかり。

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