第391話 飛行
夜遅くまでマンダリンの練習を続けた。
まあ、さすがにそればかりやってられない。二十時に集まるように言ってたので、その前にマンダリンを二台、引っ張り出してきてホームに運び込んだ。ふー。間に合った。
ホームにはラダリオンもミリエルも集まっており、結構待たせたっぽい空気だった。
「すまない。マンダリンの練習に集中しすぎた」
「難しいんですか?」
「そうだな。プランデットをつければかなり扱いやすくなるんだが、マンダリン単体で動かそうとすると操作が難しいな」
プランデットと連動したら簡単に操縦できたが、ないとガツンガツン床にぶつけてばかり。練習が終わればあれは廃棄だな。もちろん、アルズライズやビシャが使ったものもな。
「一台をミリエルに渡すからプランデットなしで練習しておいてくれ。オレたちは明日にでも仮拠点に戻り、カインゼルさんに教えるから」
「わかりました」
基本操作を教えたら皆で夕食を囲みながらミーティングをした。
ラダリオンのほうはまた暖かくなり、雪が解けていて、砦の拡張と東と南の拠点を繋ぐ道を整備しているそうだ。
アシッカも暖かくなって各男爵領から買い出しにきているとか。また食料が足らなくなるな~。
逆にコラウスは寒さと雪に襲われていて、街にいくのも大変なんだそうだ。そんな中をハーフエルフのミロルドが酒を買いにきているとか。買い出しを隠れ蓑にして館の食堂で甘いものを食っているとみた。
ミーティングを終えたらミリエルをマンダリンに乗せて、どんなものかを教えた。
「凄い風ですね!」
「ああ。この風を調整するのが難しいんだ」
アクセルで風の噴出を調整するとかムズすぎて神経を使うのだ。
「地上の空を飛ぶならヘルメットは必須だ。プランデットなしで飛べたほうがいい」
地下ならそう速く飛ぶこともないし、鳥や虫が飛んでいることもない。だが、地上の空は鳥も虫もいる。まともに風が当たったらプランデットなんてすぐに飛んでいってしまうよ。
噴出風が凄いのですぐに停止させた。
「外に出すなら広いところでやれよ。この風は迷惑になるからな」
「わかりました。城壁の外に出てやってみます」
うんと頷き、シャワーを浴びて下着を着替えてから外に出て、イチゴに任せて早々に眠りについた。
六時くらいに目覚めたらイチゴの魔力量の減りを確認する。
二十一時から六時までで半分が減ったか。動かないのに減りが半分とかセンサー系に使っているんだろうか?
マナックを二つ補給して百パーセントにしたら416Dとグロック19の整備を教えた。
珍しくアルズライズたちが寝坊して起きてきた。
朝の支度を済ませたらホームから朝飯を運んできて、食べながら今日の予定を話した。
「九時くらいにここを発つ。マンダリンの初飛行といこうじゃないか」
「タカト、あたしも乗りたい! 飛ばすようにできたからいいでしょう?」
「まあ、練習用に使ったヤツならいっか。マナックも残っているしな。もう一台はイチゴが乗れ」
ブランデットにある情報をイチゴに送った。
「受信しました。自動学習開始──」
をしている間にキャンプ用品を纏め、ホームに片付けた。
昨日買ったハンドリフトでマンダリンを発着場まで運び、邪魔になる装備を外し、ハンドリフトと一緒にホームに運んだ。
「まずはオレとメビが先に出て万が一に備える。次にビシャ。アルズライズ。イチゴの順だ」
了解と頷いたらマンダリンに跨がり、オレのベルトとメビのベルトを紐で繋いだ。
「メビ。怖かったら目を閉じてろよ」
「大丈夫。高いとこ平気だし」
将来は女傑として名を残しそうだな。
「よし、いくぞ」
ブランデットと連動しているので静かに浮かび上がり、前に体重をかけてアクセルを回した。
十キロくらいで発着場から飛び出し、ランダーズから出た。
地上まで三百メートルだろうか? 上を見たら五十メートルくらいで天井だ。なかなかの空間であるが、百キロ以上で飛ぶと狭いかもしれないな。
ランダーズから五十メートルくらい離れたらホバリングしてヘッドライトで合図を送った。たまに信号灯はあるけどライトはついてないんですよ。
少し揺らしながらビシャが出てきて、すぐにアルズライズも出てきた。
まだホバリングする技術はないのでオレが先頭になって飛行練習をする。
時速は四十キロくらいだが、すぐに端まで到達し、右に旋回する。
ビシャとアルズライズをブランデットで確認すると、ちゃんと旋回してついてきている。イチゴは難なくついてきているよ。
地底湖方面に飛ぶと、洞窟から出た上に監視塔らしきものと発着場があった。
「あそこも航空警備部所属の建物か。あそこにもマンダリンがあるんだろうか?」
一応、確認しておくか。マナックがあれば儲けものだしな。
速度を殺し、アルズライズに近づく。
「あそこに入るぞ! 速度を緩めて高度に気をつけろよ! まずオレらが入る!」
「了解!」
「イチゴは最後だ! 万が一のときは二人を救え!」
「ラー」
と、ブランデットを通して返事をしてきた。
「メビ。紐を切れ。なにかいた場合、頼むぞ」
「任せて。タカトのグロック借りるね」
紐を切り、自分のグロックとオレのグロックを抜いて、いつでも飛び出せるよう座席の上に立った。
なにもいませんようにと願いながら発着場に入った。
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