第389話 イチゴ

「ターダリン・ロアライグ・ソリュート=ルータ21-4。ゴブリン駆除及び危険生物の排除、駆除員の支援を命ずる。作戦中はお前をイチゴと呼称する」


 一号ではなんだからイチゴと呼ぶことにした。


「ラー」


 了解って意味ね。


「そして、権力者01イチノセ・タカトのことはイチノセと呼ぶこと」


「ラー」


「よし。シーラサイラーを開始。マナックを補給しろ」


 キャリブレーションみたいなものだな。魔力が切れてた時間が長いからズレみたいなものが起きているかもしれないからさ。


「マナック補給。シーラサイラー開始──」


 ピーシャーってなんの音だよ!? って突っ込みたい音が漏れてくんな!


「終了しました。身体に異常ありません」


「よし。少し待機だ」


 AI的なものがついているから自己判断で動くことも可能だが、まだ自分で判断できる情報を得てない。ちょっとずつ学ばせる必要がある。が、どうするかまでは教えてくれてないんだよな……。


「アルズライズ。マンダリンの扱い方を教える。やるか?」


「やる。空を飛ぶものなんだろう? おもしろそうだ」


 ウルトラマリンで乗り物好きが目覚めたのか、積極的に扱いを覚えているよ。


「プランデットと同調すると扱いやすくなるんだが、アルズライズは体で覚えるタイプだしな、乗って覚えろ。ただ、飛ぶのはこの中で我慢しろよ。さすがにいきなり空を飛ばすのは危険だからな」


 右のアクセルで上昇。右足のペダルで前進。左のレバーで逆噴射。体重移動で旋回。基本操作はそのくらいだ。


 大丈夫か? と思わなくないが、ウルトラマリンだって似たようなもの。体と直感で動いているアルズライズならそれで充分だろうさ。


 車だって慣れていればいろいろ搭載されているほうがムズい。ABSとか逆にいらないよ。あ、オレの勝手な解釈ですからね。


 しばらく見ていたが、やはり体で覚えるタイプはあれこれ説明するより動かして覚えるほうが早いよ。


「オレはイチゴをホームに連れていく。しばらく練習してろな」


 集中しているようで返事はないが、聞こえているだろうからイチゴを腕をつかみ、持ち物としてホームに運び込んだ。


「やはり物扱いか」


 まぁ、人扱いになっても困るけどな。


「反応消失。位置見失いました」


「ここは駆除員だけが入れる別の空間だ。そう判断しろ」


 理解しろ、は無理だろうからそういうものだと受け入れろ、だ。


「ラー」


 素直でよろしい。


「タカト、なにそれ?」


 ガレージで片付けをしていたミサロがイチゴに目を丸くしていた。


「ゴーレムの一種だ。イチゴ。権利者04ミサロだ。登録しろ」


「権利者04ミサロ。登録しました」


「タカト。それが女神の言っていたものなの?」


「ああ、そうだ。金印級の戦闘力は持っているみたいだ」


 リミット様はそう言ってた。それが本当なら一千万円の価値はあるだろうよ。二十四時間稼働できて食費もかからない。見張りをしてもらえるだけでも価値はあるさ。


「イチゴ。お前に武器を与える」


 昔のエルフに合わせたのか、イチゴの身長は百六十センチくらいしかない。小柄と言ってもいいので416Dを持たせるとしよう。


 ミリエルのプレートキャリアを着させ、腰回りはグロック19にマガジン二つ。ナイフを装備させた。


 EARでもいいんだが、あれは静かすぎて緊張感に欠けるんだよな。サプレッサーをして撃つくらいがちょうどいいんだよ。


 それに、ゴブリンを殺しても報酬にならない。あくまでもイチゴは物扱い。正面切って戦わせるときはゴブリン以外の魔物だ。なら、アサルトライフルで充分だろうよ。


 まあ、本当はプレートキャリアを装備させたらカッコイイんじゃね? って理由が大きいんだけど!


「イチゴ。動きに問題はあるか?」


「問題ありません。誤差ていどです」


 構えの手本を見せて動きをトレースしてもらった。


「よし。外で撃ってみるか。ミサロ。二十時くらいに入ってくる。ラダリオンとミリエルにもその時間にいるよう伝えてくれ」


「わかった。伝えておくわ」


 うんと頷き、イチゴの腕をつかんで外に出た。


 アルズライズはまだマンダリンを操縦しており、ビシャとメビが見回りから戻ってきてその様子を眺めていた。


「ビシャ、メビ」


 呼ぶとすぐに振り返ってこちらにやってきた。


「動けるようになったんだ」


「ああ。イチゴと名づけた。イチゴ。二人を請負員として登録。保護対象として記録しろ」


「ラー。登録完了。保護対象と記録しました」


「メビ。ちょっと手伝ってくれ。イチゴに416Dの扱い方を覚えさせる。ビシャはアルズライズを見ててくれ。集中しすぎて回りに目がいってないみたいだからさ」


「タカト、あれ、あたしも乗ってみたい」


 乗り物にまったく興味を見せなかったビシャがマンダリンに興味に目を輝かせていた。


「じゃあ、後ろに乗せてもらって感覚を覚えろ」


 ビシャも感覚派。習うより慣れろを地でいくタイプだ。


「わかった!」


 そう言うとアルズライズのところに走っていってひょいとマンダリンに飛び乗った。運動神経の塊みたいなやっちゃ。


「メビ。416Dだ」


 取り寄せてメビに渡し、EARを受け取った。


「ここじゃ危ないから外にいくとするか」


 アルズライズたちに当たることはないだろうが念のためと、飛行艇の発着場に向かった。

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