第387話 またなの

 マンダリンとアルセラを繋ぐブースターケーブル(正しくはファーブと言います)はすぐに見つけられた。


 魔力充填に用いられるもののようで、前の世界で言うところのUSBケーブルみたいなもの。ただ、アルセラに合うのはタイプが違うので、ロボット兵のメンテナンスルームにしかないのだ。


「少し休憩するか。ビシャ、メビ、トイレは大丈夫か?」


「大丈夫」


「あたしも」


 と言うのでホームからエクレアを大量に持ってきて、三人で平らげてしまった。オレ、食う隙ナッシング。まぁ、そんなに食欲ないからいいけどさぁ~。


「タカト。ここではそれだけか?」


「ああ。ここは仮設みたいなもので、重要なものはないからな」


 ロボット兵を固定させる金具や台があり、落ちている部品は壊れている。なんでここにメンテナンスルームを仮設したのかよくわからんよ。


 休憩が終わればマナックがある階に向かう。


「昇り降りばかりで飽きる。魔物はいないの?」


 フラグを立てるようなことを口にするメビ。まだ途中なんだから言わないの。


「まったく、あんたは飽きっぽいんだから。油断するんじゃないの」


「だって~昇り降りばかりなんだもん、つまんないよ」


「つまらないときこそ油断しちゃダメなんでしょうが」


 叱る姉。ぶーくれる妹。本人たちには悪いが、オレもアルズライズも微笑ましく思えて頬を緩ませてしまった。


 子供を持つってこんな気持ちになるのかね? まだ恋人もいないのに父性が目覚めそうだよ。


「話はそこまでだ。メビ、アルセラを復活させたらマンダリンの操縦法を教えるからもうちょっとがんばれ」


 メビに言いながらビシャの頭に手を置いた。姉妹は平等に扱わないと不和の元だからな。


「アルズライズとメビは警戒」


 マナックのある階に到着したら二人に警戒を任せ、オレはビシャを連れてマナックが保管されている倉庫に向かった。


 倉庫の扉は見るからに頑丈で、ヒートソードでもチートタイムでも破るのは不可能ってのがわかる。


 だが、裏技を使えばロックボルトを解除(破壊とも言う)できるのだ。


 ラットスタットを二本取り寄、扉を制御する盤に版に押しつける。


「ビシャ。離れていろ」


 下がらせたらチートタイムスタート。魔力をラットスタットに送った。


 バン! と視界が白くなり、制御盤が爆発。チートタイムじゃなかったら黒焦げである。


 制御盤が壊れると、各扉は手動操作できるようになるのだ。


 扉の横にあるハッチを開き、ハンドルで扉を開いた。ゼーゼー。ちょっと休憩させてください……。


「タカト、大丈夫?」


 返事ができないので頷いて答えた。


 水を取り寄せて喉を潤し、なんとか息を整えた。ふー。アナログな造りで助かるが、アナログすぎて酷い目にあったぜ。


 一旦装備を外し、腰回りだけにして保管庫に入った。


 ここもラック倉庫になっており、パレットに金属製のケースが積まれていた。


 試しにケースを一つ取り出し、金具を外して蓋を開いた。


「これがマナックか」


 形としては頭に入れられていたが、ケースの中のマナックは紙に包まれていた。魔力は紙に包むといいのか? そこら辺の情報も入れとけや、ダメ女神が!


「なんか某ゲームのクリスタルっぽいな」


 鉛筆くらいの太さで長さは三センチ。これ一つでルン五つ分になるみたいだ。


 アルセラには五個入れられ、それで四十時間は動かせるそうだ。まあ、戦闘ともなればもっと短くなるが、自分でも補給できるので、予備を持てば長いこと動ける。その辺を注意すれば止まることもないだろう。


「これだけあれば問題ないな」


 魔王と戦う人と会えればメンテナンスルームを拡張できて、マナックを作る部屋も創れる。オレが生きている間なら十二分に足りるだろうさ。


「ビシャ。二人を呼んできてくれ」


「了解」

 

 ビシャが二人を呼びにいっている間にフォークリフトを持ってきた。


「これをホームに運ぶ。キャンプ用品を持ってくるからアルズライズとメビは上にいって準備をしてくれ。ビシャは警戒を頼む。なにかあればアルズライズたちのところに走れ」


 そう指示を出し、ラックからマナックが積まれたパレットをフォークリフトでホームに運んだ。


「……またなの……」


 片付けしているミサロに飽きれられたが、マナックはマンダリンにも使う。運び込めるだけ運び込ませてくださいな。


「──タカトさん、なんですか、それ?」


 ちょうどよくミリエルが入ってきてくれた。


「ミリエル。こいつをパイオニアに積んで外に出してくれ。重要なものなんだ。館とギルドに運んでくれ」


 パレットを置いたらキャンプ用品だけ持って外に出てすぐ戻ってきた。


 ミリエルがパイオニア一号をパレットの横に持ってきてくれてたので、後部座席を倒してケースを積み込んだ。


「どうしたの?」


 パイオニアに運び終わり、ミリエルが外に出ると同時にラダリオンが入ってきた。


 かくかくしかじかと説明し、砦にも出してもらうことにした。


 次のパレットを運び入れ、リヤカーに積み込んだ。


 入れては出しての繰り返しで、なんとか保管庫のマナックをすべて運び入れることができた。


「……さすがに疲れたよ……」


 プランデットをかけて時計を見たら二十時前だった。そりゃ疲れもするわ。


「ご苦労様。続きは明日だ。今日はゆっくり休んでくれ。オレは外で休むよ」


 フォークリフトはガレージに移動させ、ふらふらになりながら外に出た。


 ────────────────


 リミット、出すの早すぎたかもしれない。でも、魔王軍と戦う某さんの時期を考えたら今のような気もする。いや、もっと早くてもよかったか? と言うか、流れが崩れてしまった。う~ん。どうしよう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る