第386話 クエスト

 結果から言うと、それはロボットだった。


 いや、もっと正確に言うのなら、それはアンドロイドと呼ばれる人型ロボットだった。


「女性型アンドロイドとはね」


 誰の趣味なんだか。耳が長いのはセンサー? それともエルフを模倣しているのか?


 ピピッ。と、こいつの情報が表示された。


「ターダリン・ロアライグ・ソリュート。ルータ21−4 通称、アルセラ、か」


 ここに転がっている理由はわからないが、リミット様が言っていた一千万円分の情報はこれのことだったみたいだ。マンダリンはこいつを復活させるための一つ、ってことらしい。


 リミット様、どういうことですか? これがオレの力になるというのか? てか、壊れてますよ? これを修理しろと言うんですか?


 と、プランデットが勝手に動き出し、三次元マップが開いた。


 同じ階に一つ。すぐ下に一つ。さらに四階下に一つ。ここから四階上に一つの光点が輝いており、目指す順番なんだろうか? 1、2、3、4と書かれていた。


「なんのクエストだよ?」


 いきなりゲームみたいな状況にどう理解していいかわからなくなるな。


 とは言え、一千万円分の元を取らなければ骨折り損のくたびれ儲け。やらないわけにはいかない、か。ハァー。


「細かい外傷はあるが、欠損や破壊された様子はないな。アルズライズ、ちょっと買い物してくる。物がないところまで引きずっておいてくれ」


 重さは六十八キロ。アルズライズなら問題ないだろうよ。


「わかった」


 なにもないところでホームに入り、ストレッチャーを買おうとして止めた。高っ! 安いのでも八万円かよ。救急車とかに載せるようなストレッチャーは十八万円って高いよ! アサルトライフル一丁買えるよ!


「あ、そうだ。ウィルがあったっけ」


 まだミリエルに脚がなかったときに買った電動車椅子。四十二万円もしたから捨てられずにミサロの椅子になってたヤツを使うとしよう。


「ミサロ。ウィルを借りるな」


「ええ。誰か怪我したの?」


「いや、リミット様が教えてくれたのがアンドロイド──人型のゴーレムでな、壊れてて動かせないからウィルに乗せようと思ったのさ」


「人型のゴーレム?」


「詳しいことはあとで話すよ。これから動かせるよう部品探しさ」


 ウィルに乗り込んで外に。アルズライズと二人がかりでウィルに乗せた。


 こいつを動かすために必要な動力源たるマンダリンのところに運んだ。


「こいつ、動くのか?」


「ああ。今はエネルギー、バッテリーとガソリン切れている状態だな。あと、部品が壊れているから交換する必要がある」


「なるほど。機械人形と言うわけか」


 パイオニアやウルトラマリンに乗っているからか、オレの言ったたとえを理解してくれた。


「ガソリンとなるマナックはこの下だ。さらに四階下にマンダリンから電気を送るケーブルがある。部品はこの上だ。まずは部品から回収にいく」


 ビシャとメビを呼び、こいつの説明をする。理解はされなかったけど。


 一時間休んだら四階上に向かった。


 そこには非常階段からいけるようで、難なく到着。ただ、かなり頑丈にできているようで、ヒートソードでも開けられなかった。どんだけだよ。


「ちょっと下がっててくれ」


 アルズライズにタボール7を持っててもらい、三人を一つ下の踊り場にいってもらいマルチシールドを展開してもらった。


 チートタイムスタート。ふん! と軽く扉に蹴りを入れた。


「なかなか堅い」

 

 ヘコんだところにもう一撃。扉が吹き飛んでくれた。


 チートタイムを停止。三人を呼んで中に入った。


 情報では研究施設で、ここで初期のアンドロイドを造っていたようだ。


 アルセラは反乱したAIが造ったものだが、重要部はエルフが造ったもので、必要としているのは反乱防止用のチップだ。


 そのチップが重要であり、敢えて脆く造られているらしく、音声でも破壊できるようだ。


「バ○スかよ」


「タカト、どうした?」


「いや、なんでもない。目的のものはこの奥だ」


 タボール7を受け取り、奥へ進んだ。


 研究施設らしくいろんな部屋があり、いろんな機器が並んでいるが、動力が死んでいる状態ではなんの使い道もないガラクタ。残念と思いながらチップがある部屋に直行する。


 重要なチップなだけにまたもや頑丈な扉で守られている。今度は中に吹き飛ばないようロックされているところを何度も突いて破壊し、外側に押し倒した。あってよかったチートタイム、だな。


 中は貸金庫のようなロッカーみたいで、またチートタイムをスタートさせて扉を破壊した。


「これがチップか」


 ケースの中には十円玉くらいの透明なチップが一つだけ入っていた。


「そんなのが必要なの?」


「ああ。銃で言えば引き金だな。これを組み込まないと動かないよう造られているんだよ」


 メビの質問に、銃でたとえてやった。


 念のため、予備に五つほどチップを持っていくか。脆い造りだしな。激しい動きをして壊れるかもしれないし。


「よし。目的は果たした。さっきのところに戻るぞ」


「他はいいのか?」


「ああ。ここにはあいつが使えるものがないからな」


 専用の武器はあるが、EARのようなもの。製造工場にあるみたいだが、そこに取りにいく苦労を考えたらEARやアサルトライフルで充分だ。単体だけでも壁に穴を空けられるくらいの力と強度があるんだからな。


「いくぞ」


 次はブースターケーブルだ。

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