第385話 マンダリン
シャッターはそれほど頑丈ではなく厚みもない。ガレージのシャッターくらいのペラペラしたものだった。
ロックはされているようで、開けることはできない。なら、ヒートソードで焼き切るとしよう。
「ビシャ。頼む」
「了解」
ヒートソードを二千度にしてシャッターに突き刺すと、あっさりと突き抜けた。弱っ!
「ただの仕切りか?」
あっさり焼き切り、中に入ると、整備場的な感じだった。
「かなり広いな。飛行艇のか?」
ただ、飛行艇は一機もない。いや、奥のラックになんか入ってんな? なんだ?
近くまでいってみると、ウルトラマリンみたいなものが八台、ラックに収まっていた。
「なんだ?」
ピピッと音がしたと思ったらプランデットに情報が表示された。
「マンダリン? 空飛ぶバイクか?」
二人乗り用の空を飛ぶバイクで、主に警備に使われるもので、暴動鎮圧用の催涙弾や閃光弾、EARが二丁搭載できるようだ。
「これがリミット様が言っていたものか」
確かに一千万円に匹敵はするな。いや、価値を考えたら一千万円以上だ。数少ないマナ・セーラが搭載され、マナックと言う液体魔力を入れれば動く。航続距離は約三百キロ。時速は二百キロ以上出るみたいだ。
「昔のエルフは凄いものを造ったもんだ」
まあ、生き物を改造したりロボットを造ったりするんだからこのくらいは簡単なことか。警備兵が使うパトロール用だしな。
「タカト。これなのか?」
「ああ。そうみたいだ。これならコルモアにも一時間くらいで帰れるぞ」
二百キロ以上で飛ぶ勇気があるなら、だけど。
「ビシャ、メビ、外を探索してくれ。但し、爆発物があるかもしれないから下手に触るなよ」
「わかった」
「了解」
「アルズライズ。オレたちは中を調べるぞ」
すぐにでもマンダリンを触りたいが、まずは変なものがないかの確認だ。不発弾とかあったら嫌だからな。
「オレが調べる。アルズライズは警戒を頼む」
ここでも小さな戦闘があったようで、床が削られてたり壁に弾痕みたいなのがあった。
ただ、その元凶らしきものや殺されたような跡はない。あそこの扉を破壊して、あちらの扉から出ていった、って感じか?
プランデットのマップでは入ってきたほうに指令室や居住区があるっぽいな。で、出ていったほうは倉庫や武器庫か。
とりあえず、倉庫と武器庫を確認しておくか。マンダリンに積める弾やマナックがあるっぽいしな。
「アルズライズ。あちらから攻める」
こちらで追う者と追われる者が争ったようで、床がヘコんでいたり穴が開いてたりした。なにがどう戦えばこうなるんだ? やはりロボット兵か?
オレのプランデットはAI的な反乱が起こる前のもので、ダメ女神からの情報もエルフとAI的な戦争が始まってしばらくの情報で、当時はタイヤがついたタイプのものでしかない。こんな被害を出すものじゃないのだ。
扉は完全崩壊。激しくぶつかったようで扉が遠くまで吹き飛んでいた。
「ここでも激しくやり合ったみたいだな」
四段のラックが倒れていたり崩されていたりして、コンテナボックスがメチャクチャであった。
まあ、マナックが保管されている倉庫はこの下で、かなり厳重で堅牢な倉庫に収まっているみたいだ。もし、破壊されていたらマナ暴走でこの一帯はなくなっていることだろうよ。
「アルズライズ。潰れてないコンテナボックスを集めてくれ。オレはこの下の倉庫にいってくる。崩れて下敷きになったりするなよ」
「そんなヘマはしない。タカトこそ扉に挟まったりするなよ」
「言ってろ」
フンと鼻を鳴らし、下に続く階段を下りた。
十メートルほど下りると、倉庫がズラリと並んでおり、フォークリフトが何台か放置されていた。
「エルフがフォークリフトを運転してたとか、なんか笑っちゃうな」
まあ、ここのエルフはファンタジーなエルフとは違う。元の世界の人間と変わらず働いていたんだろうよ。
「動くかな?」
魔力は電気のように放電みたいなことはおきない。溜まっていれば動くはずだ。
ロードン処理と言うメッキが施されているので、フォークリフトは当時のまま。脆くなってもいなかった。
「切れているか」
起動したまま放置したのか、スタータースイッチを押しても動かなかった。
一つ一つ確かめていったら幸運にも起動するフォークリフトがあり、フル充填されたものだった。
フォークリフト──マラーダのことを考えると、その情報が出てきた。
「約十二時間か。結構動くな」
元の世界の一般的なフォークリフトは連続稼働で約五時間。軽く倍は動くんだから優秀だぜ。
操作は元の世界と変わらない。メーカーによって配置が違うってくらいの差だ。これがあれでそれがこれ。工場作業員ナメんなよ。こっちはフォークリフト運転技能講習修了証持ちだぜ!
「おー! なんだこれ!? スゲースムーズ!」
それにプランデットと連動できるじゃん。うわっ! 全方位どころか頭上から見た映像もある。よくこんだけの情報を処理できんな? 過剰だよ! 人の感覚ナメんな!
一通りやると勘が戻ってきた。一度体に染み込んだ技術は忘れないものだぜ。
んじゃ、マナックをいただきますかと思ったとき、アルズライズから通信が入った。どした?
「タカト。ちょっときてくれ。おれでは判断つかんものがあった」
なにか戸惑っている口調に、眉をしかめた。
「わかった。すぐいく」
フォークリフトを止め、アルズライズのところに向かった。
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