第383話 資源回収
朝、装備の確認をしたらお宝探しに出発だ~!
なんて意気込んで出発したものの、ランダーズまでの道のりは遠かった。
どうもミリット様からもらった情報によれば、地下からじゃないとランダーズに入れないっぽい。かなり遠回りになり、相当歩く感じだ。
ゴブリンやバッフなどの敵はいないので、装備は軽くし、武器も腰回りだけ。アルズライズもバールとデザートイーグル、ビシャはいつものククリナイフにヒートソード。そして、ラットスタット。メビはEARだけ。
ちょっと頼りない装備だが、ホームに入れるオレがいて、アポートウォッチとアポートポーチがある。マルチシールドも両腕にしているので、罠が生きていたとしても対応はできるはずだ。
「まだ下りるの? 飽きたよ」
「もう一階だからがんばれ」
地下六階に搬送用の通路があり、ランダーズまで延びている。そこまでいけば多少なりとも楽になる。まあ、ランダーズに着いたらひたすら階段だろうけど。
「アルズライズ、そこの扉だ」
先頭のアルズライズに搬送用通路に続く扉を教えた。
「閉まっているぞ」
「ビシャ。ドアノブのところなヒートソードの先を当てて二千度にしろ」
魔力で強引に開けることも可能だが、そこまで頑丈な扉じゃない。二千度で熱せればロックの金具が柔らかくなる。ドアノブが真っ赤になれば蹴り飛ばせば簡単にオープンよ。
「ちょっと休憩してろ。ホームからパイオニアを出してくる」
そう言ってホームに入り、ホワイトボードに進行状況を描き、時刻を記入。問題なしの青丸を書いた。
「ミサロは外か」
まあ、ミサロも館のほうに食料を出したり巨人やドワーフの奥様との付き合いもある。いないこともあるので、パイオニアに乗り込んで外に出た。
皆を乗せて搬送用通路をランダーズに向けて走り出した。
灯りは消えているのでスピードは出せないが、通路は綺麗なもの。戦った形跡もなかった。
何事もなくランダーズの下辺りに到着。作業用エレベーターが何機かあるが、どれも扉は閉まっていた。
「ここからまた階段だ。覚悟しろよ」
まったく、動力が切れた都市ほど厄介なものはないぜ。
どれだけ発展しても非常階段はあるもの。そして、そこまで厳重ではない。いざってときの逃げ道なのにな。
ヒートソードで熱し、繰り上げて扉を開けた。
「先頭はアルズライズ。メビ、ビシャ、オレだ。メビは印をつけていけ。ビシャは扉の確認。開いたら教えてくれ」
そう指示を出して階段を昇り出した。
動体反応はなく、警告もない。十階ほど昇ると、ロックされてない扉があった。
「動体反応なし。罠らしきものもなし。少し調べる。ビシャ、ついてこい」
グロックを抜いて扉を潜った。
そこは通路であり、なにかの部屋に通じる扉はない。マップでは機械室的な感じだった。
調べる必要もないと判断し、扉を開けっ放しにして階段を昇った。
さらに二十階ほど昇ると、またロックされてない扉があった。かけ忘れか?
そこはホールみたいで、かなり広く、外の光が入っていた。
「風化はしてないな」
空気はあるが、壁や椅子は当時のまま。ただ、植木かな? 植物が植えてあった鉢が所々に配置してあった。
「昼も近いし、ここで休憩しよう。アルズライズとメビは警戒。ビシャは階段を見張りだ」
三人に任せてホームからミサロが作った昼食を運んでくる。あと、簡易トイレも。さすがに放置は悪いからな。
誰に? とかは聞きません。人としてのマナーだからです。
「タカト、あとどのくらいなの?」
成長期なのか誰よりも食べたメビが腹を擦りながら尋ねてきた。
「あと半分だな」
「まだ半分なの? 階段飽きた!」
オレもだよ。わかっていても嫌になるぜ。とは、ビシャとメビには言えない。大人としての立場があるからな。
「まあ、そう急ぐわけでもない。今日はこの階を探索するか。どうもここ、レクリエーションホールっぽい」
「レク? なにそれ?」
「まあ、気分転換に遊ぶ場所だよ。たぶん、ここで働いている者が利用してたんだろう。なにか発散しないと地下で暮らすのは大変だろうからな」
閉ざされた空間。消費社会とはならないはず。精神的、肉体的に満足するような循環した社会になっているはず。風化もしてないならなにか道具や衣服が残っているはず。宝探しの前に資源回収といきますか。
「アルズライズ。ここを頼む。ビシャとメビを連れて辺りを探ってくるよ」
二人のご機嫌取りにアルズライズをつきあわせられんからな。休んでいてもらうとしよう。
「ああ、がんばれ、おとうさん」
誰がおとうさんだ。オレはこんな大きな子供を持った覚えはないわ。
「ビシャ、メビ、いくぞ」
梅酒を取り寄せ、アルズライズに投げつけてやった。酔い潰れて二日酔いになりやがれ。
マップを開き、このフロアーだけを写し出し、ロッカールームらしきところへ向かった。
そこは二手にわかれており、壁には男の横顔と女の横顔が描かれていた。
女側に入るのは抵抗があるので男のほうに。ロッカーが並んでおり、奥にはシャワールーム。壁には扉が並んでいる。
鍵はかかっておらず、中はパックされた衣服とバスタオルが収まっており、この液体は代えのシャンプー類か。他はないな。
「よし。この透明のを回収するぞ」
「これがお宝なの?」
「ある意味、お宝だな。こういう生活物資は役に立つからな。持てるだけ持ってエルフたちに配るぞ」
二、三百人もの下着や衣服を用意するだけで数百万円はかかる。それが抑えられるのだからここにあるのは宝も同然。見過ごすなんてできないっしょ。
地下倉庫で見つけた空のコンテナボックスを取り寄せて衣服とバスタオルを詰め込み、ホームに運んだ。
「よし。次は隣だ。チャッチャとやるぞ」
ロッカールームはまだある。根こそぎいただきます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます