第9章

第382話 練度

 仮拠点が大体調ったら、まずはカインゼルさんとサイルスさんを連れてEARとプランデットの扱い方を教える。


 カインゼルさんは銃を使っているからすぐに慣れたが、初めてのサイルスさんは戸惑っていた。


 まあ、サイルスさんは魔法剣士。慣れなくとも構わないのだが、皆が使う武器の性能を理解してもらうために学んでもらっているのだ。サイルスさんには第一隊としてエルフたちを率いてもらい、下層部にいるゴブリンを駆除してもらいたいからな。


 下層部にはゴブリンが密集している場所が三ヶ所あり、動体反応からメスや子がいるっぽいのだ。稼ぐならそちらだ。


 カインゼルさんは第二隊としてロズたちを率いてもらい、地上部(と言っていいのかわからんけど)にいるゴブリンを駆除してもらおうと思っている。


 ロンガルを食っているだけに体格はよく、動きも速い。ゴブリン駆除に慣れ、銃を使えるカインゼルさんたちが適任だろうよ。


「カインゼルさんはいいみたいですね」


「ちょっと軽いが、まあ、ゴブリン相手にはこれで充分じゃな」


 G3に慣れた人からしたらEARは羽根のように軽いだろうさ。マガジンも持たなくていいんだからな。


「おれはどうも性に合わんな。凄い武器なのはわかるんだが」


「まあ、どんなものかわかればいいですよ。サイルスさんにはヒートソードを渡しますんで」


 銃には興味を示さないが、ヒートソードはメッチャ興味を持っている。時間があるときは愛用の剣とヒートソードで二刀流を練習してたよ。


「マイズたちはEARは慣れたか?」


 エルフたちの隊長で、アリサによればかなりの実力者(肉体派)とのこと。魔法も優秀みたいだが、銃を気に入った変わり者でもある。


「はい。慣れました。ですが、おれはアサルトライフルのほうが好みですな。あの反動がシビれます」


 なんか危ない発言だが、魔力抵抗値の高い魔物はいる。一人くらいアサルトライフルを持たせるのもいいかもな。


 ってことで、左利きのマイズには左撃ちにしたVHS−2全部乗せのを渡した。あと、お下がりのチェストリグも。


「ありがとうございます! 大事にします!」


「いや、使えなくなったら交換していいよ。銃は使い捨て。自分を守るものなんだから」


 一生ものじゃないんだから具合が悪くなったら別のを渡すよ。


「カインゼルさん。ロズたちにはラットスタットを持たせ、ガドーは新しいショットガンを持たせますね」


 ドワーフは身体的に銃より剣や斧のほうが合っていて、接近戦を得意とする。その中でショットガンを使うガドーが特質なんだよな。まぁ、持たせたのオレだけど。


「わかった。さっそく連携を試してみる」


 やはり長として率いているのが輝いているよな。


「プランデットで位置はわかるとは言え、万が一のときのために印をつけながら駆除をしてくださいね」


 まだエルフの文字に慣れてないし、動体反応センサーとマップ、時計だけしか教えてない。カインゼルさんはともかくドワーフたちは文字をしらない。時計の読み方を教えるのも苦労した。


 下手にあれもこれもと教えるより、大切なものだけに絞ったほうが教えるほうも教わるほうも楽と言うものだ。


「わかっとるよ」


 カインゼルさんとはそこで別れ、サイルスさんとエルフたちとゴブリン駆除を続け、プランデットとEARの練度を上げ。そして、マイセンズの土地勘をつけさせた。


 二日ほど続けたら仮拠点に戻った。


「タカト、お帰り!」


「お帰り!」


 仮拠点に戻るなりメビとビシャが突進してきた。


 三段階アップしたはずなのに二人の突進に吹き飛ばされるオレ。左右から突進されてたら絶対中身が口から出ていると思うな……。


「まったく、お前らはいつになったら自分の力を理解をするんだ? 手加減を覚えんとタカトが死ぬぞ」


 い、今まさに死にそうですよ……。


「タカト、ごめんね……」


「ごめんなさい……」


 サイルスさんに力を込めてもらい、なんとか立ち上がられ。水を飲んで復活を遂げた。ふー。


「まったく。もう年頃になるんだから大人しくしろ」


 見た目は十五歳と十三歳なのに、中身は八歳と六歳みたいなんだから困るよ。


「んで、メビはEARは慣れたか?」


「うん。バッチリだよ! これ、軽くて好き!」


 体格的にはメビにEARは合っている。昔のエルフは小さかったのか、百七十三センチのオレでもちょっと小さいな、ってくらいなのだ。


「ビシャはどうだ?」


「うん、これ楽しいよ!」


 接近戦が得意なビシャにラットスタットを持たせた。


 獣人は魔力が薄くてリミッター解除しても丸焦げにはできないが、魔力が充填されているので、コードを書き換えて威力を高めてやった。


 三回くらいしか放てなくなったが、ロースランのような魔力抵抗値が高かったり、防御力の高い相手用のもの。ショルダーホルスタータイプに二本差せば充分だろうさ。


「二人が慣れたら明日にでも宝探しに出るぞ。今日は早目に寝ろよ」


 リミット様が示した場所にいくのはオレ、アルズライズ、ビシャ、メビでくことにしたのだ。建物内なら臭くないはずだからな。


「うん、わかった!」


「わくわくして眠れないかも!」


 ほんと、中身は子供なんだから。


「アルズライズも今日は酒はダメだぞ。早く寝るんだぞ」


「わかっている。女房みたいなこと言うな」


 誰が女房だ。リーダーとして言ってんだよ!


 とにかく、明日の朝、八時出発に決め、ミーティングをするためにホームに入った。

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