第376話 祝勝会

 まず、左手に持つEARを連射。痛みに呻くゴブリンどもを適当に撃ち殺し、百発くらい撃ったら右手に持つEARを連射した。


 反動はないに等しい。発射音はスプレーを吹きかけているかのような音がするくらい。実に体と耳にいい兵器である。


 左を撃ち尽くしたら放り投げ、アポートウォッチで新しいのを取り寄せ、また乱射していく。


 右も撃ち尽くしたので放り投げ、またアポートウォッチで取り寄せるが、左手のが尽きるのを待った。


 計六百発を撃ったところで停止。撃ち尽くしたEARは放り投げた。


 たくさんあると物を大事にしないって本当だな。まだ千丁近くあるので惜しくもないよ。


 と、建物の中から爆炎が吹き出した。


「お、やってるやってる」


 やっているのはもちろんミシニーだ。


 歩きながら爆炎を放っているのか、横に移動している。今は爆炎の魔女だな。


 アルズライズは……ゆっくり移動しているな。銃声もしないからラットスタットかバールで殴り殺しているんだろうよ。


 ピピッと動体センサーに反応。そちらの方向を見たら特異体が立ち上がろうとしていた。


「さすがに死ななかったか」


 とは言え、無傷とはいかないようで、薄緑の肌が所々黒く腫れていた。


 すぐに銃口を向けて撃った。


 さすがに魔力防御ができておらず、火傷を負った肌を抉られ、痛みに絶叫する特異体。こっちまで痛くなるぜ。


 撃っているお前が言うなって話だが、撃たなきゃ死ぬのはこちら。一切の情けはかけない。その命が尽きるまで油断はしませんぜ。


 すべてを撃ち尽くしても特異体に決定的なダメージは与えていない。その脂肪が魔力を弾いているのだろうか?


 EARを投げ捨て、タボール7を取り寄せ、連射にして転がり回る特異体に弾を撃ち込んでやった。


 すべて命中したのにそれでも死なないとか、特異体はどんだけしぶといんだよ? さすが12.7㎜弾を十発も撃ち込まないと死なないヤツだわ。


 マガジンを交換。また連射で撃ち込んでやった。


「それでも死なないか。ほんと、どうなってんだよ?」


 さすがに効いているとは思うんだが、特異体は立ち上がろうともがいている。憎しみで動いているとしたら死んでも死霊として蘇ってきそうだな……。


「タカト!」


「やっていいぞ」


 立ち上がるのを待ってやる必要はない。どうせ恨まれているのだからどこまでも非情に徹しろ、だ。


 建物の上からバレットを構えたアルズライズ。特異体の頭に徹甲弾を五発、撃ち込んでやった。


 さすがにこれで死んでなかったらこの世界を消去してくださいとダメ女神にお願いするところだ。人間で勝てるヤツいねーよ!


 とは言え、やるべきことをやらず、軽々しくダメ女神に頭なんか下げたりはしたくない。それは最後の最後だ。


 チートタイムスタートをして血を集め、百リットルは確実に抜いてやった。


 遠くへ投げ捨てたら五十メートルは離れて様子を見る。


 アルズライズはゴブリンに止めを刺しに戻ったようで、報酬がどんどんと入ってきていた。


「ミリエルたちのほうは上手く立て籠ったみたいだな」


 ダメ女神のアナウンスがないのでいくら駆除したかはわからないが、軽く六千匹は倒した感じだし、報酬も二千万円を越えている。


「とは言え、まだ一万匹はいるんだよな」


 なんだろう。この絶望なまでの数は? 一万匹ってなんだよ? 六千匹だって苦労してんだぞ! 半分にも届いてないとか心が挫けそうだわ!


「ハァー。オレより多く駆除したヤツらってバケモノなんだろうか? どうやったか教えて欲しいよ」


 まあ、別に最速を狙っているわけじゃない。ビリだって構わない。オレは着実に足場を固めて万全の体制でやっていく。質が伴わないなら数で乗り越えてやるさ。 


 三十分なにもないので特異体は死亡したと判断する。が、念には念をでマガジン一本分撃ち込んでおく。


「アルズライズ。ミシニー。一旦中止だ。こちらにきてくれ。魔石を回収するから」


 生き残ったゴブリンも遠くに逃げてしまった。まあ、隠れているのがそこかしこにいるが、探し出してってのも手間だ。魔石を回収してミリエルたちと合流しよう。 


「通常型は水蒸気で死んだか」


 マルチシールドを突出してやり死んでるかを確認していく。


「タカト。お疲れさん」


 さあ、これから魔石取り出しターイムとげんなりしてたらミシニーがやってきた。


「ミシニーもお疲れさん。まだ体力は残っているか?」


「残っているよ。まあ、掃除は性に合わんから精神的には疲れたがな」


「お前、部屋を汚くするタイプだろう?」


 日頃の言動を思い返せばそんな節がある。こいつ、絶対ズボラだ。


「ちゃんと金を払って掃除してもらってるよ」


 うん。こいつは部屋を持っちゃダメなタイプだ。


「魔石を回収したら場所を移す。いいワインを出すからがんばってくれ」


「いや、梅酒が飲みたい。巨人の奥方が飲んでいるのを見て飲んでみたかったんだよ。いいのを見繕ってくれ」


 ワイン狂のミシニーが梅酒とはね。いろんな酒を飲みたくなったか?


「わかった。いいのをいくつか出してやるよ」


「おれも飲みたい」


 と、音もなくアルズライズが出現。力強く主張してきた。


「ふっ。わかったよ。ミリエルたちには悪いが、オレらだけで祝勝会でもするか?」


 がんばったのだからそのくらい許されるだろうよ。


「いいな。やろう」


「おれも賛成だ」


 ってことで、さっさと魔石を回収して場所を移した。

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