第370話 EAR

 清々しく目覚めた。


 なんだろう? まるで生まれ変わったかのように体が軽く、気分がすっきりしている。異世界転移から異世界転生になっちゃった?


「おはよう。顔色はよさそうね」


 ミサロの声がして振り向いたら、顔が迫ってきてオデコとオデコがごっつんこ。気合い注入ですか?


「うん。熱は下がったみたいね」


 ミサロの顔が離れ、にっこり笑った。


「あ、ああ。心配かけたな。オレ、何日眠っていた?」


「二日よ」


 二日!? オレ、そんなに眠り込んでいたのかよ?! クソが!


「……思い出した。ダメ女神に無理矢理情報を入れられて死にそうになったんだった……」


 そうだよ。ライフルやサイクロプスサングラスの知識だけだと思ったらエルフの言語や都市の内部情報、機器の扱い、乗り物の操縦、などなど語り尽くせないほどの情報をぶち込んでくれやがった。


「ほぼ大半が無駄情報じゃねーか」


 この都市の動力炉が完全に止まっており、復活するにしても一人じゃ千年かかっても無理だ。精々、残っているマナ・セーラ(エンジンね)を使って生き残っているものを動かすくらいだわ。


「ハァー。まあ、一段階アップと一千万円はありがたいけどよ」


 今の残高一千六百万円。かなり余裕が出た。五百万円使って部屋を増設しても余裕のよっちゃんだ。


 タブレットを取ってもらい、五百万円使って二十畳ほどの部屋を増設した。


 金で増設するのと魔石で拡張するの、なにが違うんだ? てか、同じ世界の人が魔王退治とかどう言うことだ? 北の方向を極めた拳を使っちゃう人なのか? それとも古武術の達人たる祖父から教えを受けた普通の高校生か? 会えるのは嬉しいが、メッチャ怖いんだけど! 万が一のときチートタイムで対抗できるかな?


「寝室をそっちにするか。これで中央ルームが広くなる」


 さすがに四人で寝ると狭くて仕方がないし、女の子にプライベートがないのも困るだろう。そっちを女子部屋としよう。三等分できるよいカーテンもつけるか。


 なんだかんだとホームは居心地がいい。外で寝ると言いながらついホームで寝ちゃうんだよな。


「7.62㎜弾も買っておかないとな」


 ビゼル・ルータ5──あ、ライフルの名前ね。ルータはジェネーションみたいなもので、第五世代のライフルみたいな感じ? かな。でも長いからEAR──エルフ・アサルト・ライフルにします。


 EARは魔力の弾を放つを銃で、魔力抵抗値の高い相手には不向きだ。ロースランにはバトルライフルが適当だ。


 一発二百円の7.62㎜弾を千発とマガジンを三十本買った。あ、対物ライフルの弾も買わなくちゃいけなかったっけ。百発でいっか。


「ついでだ、ガチャもやっておくか」


 もう焦っても仕方がない。ミシニーもアルズライズも待つことに慣れている。きっと酒でも飲みながら待っててくれてるはずだ。


 んじゃ、イラつく場面はスキップスキップ。


 一回目は七十パーセントオフシール三十枚。クソ! ガチャやってから部屋を増設するんだった! 五百万円損したじゃねーか!


 二回目は回復薬小。まあ、切れてたからいっか。


 三回目はアポートウォッチ。これは当たりだ。ミリエルに持たせよう。


 四回目はヒートソード。これで五本目とかハズレアイテムなんだろうか?


 五回目は……ヒートアックス? なんかヒートが流行った時代でもあるのか? ヒートですぎだよ!


「重っ!」


 試しにヒートアックスを持ってみたらバレット並みの重さだった。こんなのアルズライズくらいしか振り回せないだろう! てか、なにを相手にしようと思って造られたんだ? 木を切るだけならヒートはいらんやろう?


「まっ、バーベル代わりにはなるか」


 十キロくらいなら練習に振り回すにはちょうどいいだろう。


 体も目覚めたのでシャワーを浴び、ミサロが作ってくれた肉じゃがと焼きサンマ、なめこの味噌汁と雑穀米をいただいた。どこの定食屋だろう?


「ミサロ! 弾の補給をお願い!」


 コーヒーを飲みながら食休みしていると、玄関からミリエルが声が。どうした?


「タカトさん、よかった。回復したんですね」


 玄関に向かったらミリエルが駆け寄ってきてた。


「心配かけたな。それで、なにかあったのか?」 


「タカトさんたちが倒したロースランにゴブリンが群がって大変なことになっています。先ほど三万匹突破したと女神様からアナウンスされました」


 つかんでいたタブレットを見たら一千四百万円になっていた。いや、一時間前は一千万円ちょっとだったよ! 一時間で二千匹とかあり得んやろ!? てか、こっちにアナウンスなかったんですけど! まさか、前に言ったこと根に持ってる?!


「わかった。なんの弾が足りてない?」


「ミニミとスコーピオンの弾です」


「わかった。急いで買う」


 七十パーセントオフシールを使い、MINIMIのマガジンボックスをパレット買いし、スコーピオンはないんかい! マガジンと弾が別でしか売ってねー!


「マガジンを持ってこい。オレらで入れるから。ミサロ、館のヤツにも手伝わせろ」


「わかったわ」


「ミリエル。予備のレミントンを持っていけ。護衛隊なら使えるから」


 念のためにと思って、時間のあるときに教えててよかったよ。


「わかりました!」


 ミシニーとアルズライズにも手伝ってもらうか。今は一人でも多く欲しいからな。


 新たに買ったマガジンと9㎜弾を作業鞄に詰め込んで外に出た。

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