第359話 失敗

 アタッカーはアルズライズ。オレはサポートで、明らかに掘られた形跡のある洞窟を進んだ。


「新たに二匹」


「了解」


 そろそろ手持ちのマガジンが切れるだろうと、ホームからマガジンを入れた作業鞄を取り寄せた。


「マガジンアウト。交代」


 アルズライズが脇に避けたら作業鞄を地面に放ち、タボール7を構えて前に出た。


 おそらくロースランが掘ったのだろうが、自分たちの体に合わせて掘ったようで、二匹並ぶ余裕はない。一匹で突っ込んでくるので倒れるまで撃ってやる。


 タボール7は7.62㎜弾の通常弾(一発百六十円)を使っているが、それでもロースランを完全に殺すのに五発はかかった。


 まったく、銃は金食い虫である。デザートイーグルの弾は一発二百五十円と、もう金を捨てているとしか言いようがない。5.56㎜弾の六十円が安く感じるよ。


 9㎜弾のように三十円とかなら気にせず使えるのに、百六十円を捨てているかと思うと、戦いに集中できない。


 あー。今の段階で二万円は確実に越えているのに、ロースランは次々と現れ、途中、子もいた。


 二十匹では収まらないだろうな~と思ってたが、三十匹でも収まらない勢いだよ……。


「マガジンアウト! 交代!」


 手持ちのマガジン三本が一分としないで尽きる。


 すぐにアルズライズと交代し、ホームからマガジンを取り寄せてポーチに収め、空になったマガジンをホームに返しに戻った。


 二秒もしないで外に出て、また新しい作業鞄を取り寄せた。


 しかし、どんだけいんだよ! 今、三十一匹になったぞ! ここは巣じゃなくてコロニーだったのか!?


「タカト! 洞窟を抜けるぞ!」


「危険と感じたら下がれ! いざとなればオレが出る!」


 チートタイムは一分五十七秒残っている。逃げる時間は充分作れる!


 アルズライズが手前で急停止。手持ちのスタングレネードを外し、ピンを口で抜いて放り投げた。


「催涙弾だ!」


 M32グレネードランチャーをすぐに取り寄せ、アルズライズが避けたので、洞窟の中から催涙弾を連続で撃った。


「バレット!」


 M32グレネードランチャーを捨ててバレットを取り寄せてアルズライズに渡した。


「マガジン!」


 バレットのマガジンを取り寄せる。


 一発千円の弾を次々と撃っていき、すぐに交換。また次々と撃っていった。


「タカト、ここはダメだ! 洞窟を塞げ!」


 アルズライズが下がり、チートタイムスタート。ウォータージェットで洞窟を崩して塞いだ。


「もっとだ! どんどん崩せ!」


 叫ばれるがままに洞窟を崩していき、たぶん、十メートルは崩したところでチートタイムを停止させた。


「なにがあった?」


「ロースランの特異体だと思う。巨人並みのロースランが二匹いた」


 はぁ? 十メートルのロースラン? それも二匹? なんの冗談だよ? オレはここにゴブリンを駆除しにきてんだぞ!


「バレットは効いたのか?」


「一匹は確実に倒したが、もう一匹には逃げられた」


 救いは対物ライフルなら倒せるってことだけか。いや、なんの救いでもねーよ! 十発撃って倒したともなれば山黒並みにしぶといってことだろうが! 


 しかも、その二匹だけとも限らないんだろう? 十メートル級が五匹もいたら即終了。コラウスに帰らせていただきます!


「──うおっ!」


 向こう側で特異体のロースランでも暴れているのか、何度も振動が伝わってくる。


「タカト。崩れる前に移動するぞ」


「わ、わかった」


 倒したロースランがもったいないが、命あっての物種。地底湖に向かって走り出した。あ、M32グレネードランチャーやマガジン等はしっかり回収しています。


 穴を抜け出したら残り十五秒を使って穴の奥から崩していった。


「アルズライズ。穴を固める。しばらくホームにいってくるから頼む」


「わかった。ロースランの血抜きをしている」


 ホームに入り、タブレットで二十五キロのセメントを四袋と舟、鍬、バケツ、スコップを買って外に出した。


「これで穴を塞ぐ」


 舟にセメントを入れ、地底湖の水を入れてかき混ぜ、崩れた岩の隙間にかけていった。


 なんとか終わった頃には汗だくで、筋肉が悲鳴を上げていた。


 このまま倒れて意識を手放したいが、まだセメントは乾いてない。乾くまで安心できないのだから回復薬中を一粒出して飲んだ。


「アルズライズも飲んでおけ」


 一応、アルズライズにも一粒渡してあるが、オレとは違い息を切らすていど。まったく羨ましい限りだよ。


 悲鳴を上げた筋肉も静まってくれ、力も戻ってきてくれた。


「アルズライズ。すまないが、アリサたちを呼んできてくれ。ロースランを解体する」


 ここのだけで十数匹いる。成体だし、肉も魔石も相当なものだ。損した分はしっかり回収しないとがんばった甲斐がないわ。


「わかった。なにかあればすぐに逃げろよ」


「言われなくても逃げるよ。今のオレは見習い冒険者より非力だからな」


 筋肉の悲鳴はなくなったが、疲労は完全に回復してくれてない。今はグロックを撃つのがやっとだろうよ。

 

 アルズライズがウルトラマリンで跨がり、発進したら栄養ドリンクを取り寄せていっき飲みした。


 フー。まったく、幸先ワリーぜ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る