第358話 ロースラン殲滅戦
「顔色がよくなったな」
アルズライズに挨拶する前にそんなことを言われてしまった。
「オレ、そんなに悪かったのか?」
まったく不調とか感じなかったんだけど! それを感じないくらい悪かったのかのか? それ、確実にヤバいよね!
「ああ。だが、今はいい」
もしかして、ミサロはそれを心配して回復薬を飲ませたのか? だったら言ってくれたらいいのに。別に薬嫌いの子供じゃないんだからよ。
「そうか。心配かけたな。顔色だけじゃなく体調は万全だ。今日、ロースランをすべて倒すぞ!」
今ならチートタイムを使わなくてもロースランを殲滅させられそうな体調だ。
「お前らしくないな。いつもは慎重に、大言など吐かんのに」
……確かに。体調がよくてテンションが変なほうに弾けたか?
「そう、だな。オレらしくないな。少し落ち着くとしよう」
スケッチブックを広げ、アルズライズと情報を確かめ合い、再度、作戦を話し合った。
「おれはそれでいいと思う。どのみち乗り込まなくてはあの奥がどうなっているかわからないからな。本心を言えばRPGで吹き飛ばしてやりたいが」
オレもだよ。それが確実だからな。だが、ここは地下。地上から約二百メートルは下りている。そんなところでRPG−7を使うなど自殺行為。崩れたらと考えただけで洪水を起こしそうだわ。
「そのときがきたら思う存分使えばいいさ。無限RPG−7とか竜でも泣くぞ」
「フフ。無限RPG−7か。確かに竜でも泣きそうだ」
「そのときは竜泣かせのアルズライズって広めてやるよ」
「そこは竜殺しにしてくれ。竜泣かせはズッコケる」
へー。アルズライズも軽口を言えるんだ。オレとしてはそのくらいがいいと思うけどな。
「んじゃやるか。体調は?」
「問題ない」
よしと頷き合い、タイミングよく休憩に入っていたロンダリオさんやアリサに注意するよう伝えた。てか、ミリエルや護衛隊はどした?
「ミリエルたちなら街を見にいったよ」
と、ロンダリオさんが教えてくれた。そうか。軽くミーティングしたかったんだが、仕方がないな。別に死地にいくわけじゃないんだし。
装備の最終確認をしたらオレが運転、アルズライズが後ろに乗り、目標地点へ向けて発進させた。
メガネはオレがかけ、アルズライズが持つHスナイパーに暗視、赤外線スコープを取りつけた。メッチャ高かった!
ロースランのいる岸から約百メートル。ウルトラマリンのエンジン音に警戒しているのか、体格のよいロースランが骨のこん棒を持ってこちらへ威嚇していた。
「ロースランはオレらが見えているのか?」
「いや、おそらく音だ。あいつらは目はよくないが、耳はいいとされている。ウワサでは心音も聞こえるそうだ」
「だからこんな暗闇でも動けるのか」
心音が聞こえるなら百メートル離れていてもオレらの声が聞こえているかもな。まあ、泳いでこれないのなら耳がよいとか関係ないんだけど。
水魔法でウルトラマリンの船尾を岸に向けた。
ハンドルを握る両手と両足を踏ん張ってアルズライズに背中を貸した。
「ちょい左」
水魔法でウルトラマリンの船尾を左に少し向ける。
「もうちょい」
気持ち、左に向ける。
「よし。二発撃ったら二十センチくらい右に」
「了解。いつでもいいぞ」
タイミングはアルズライズに任せてオレはウルトラマリンを固定することに集中した。
Hスナイパーから徹甲弾が一発。続けて二発放たれ、船尾を二十センチくらいズラした。
一発、二発と放たれると、背中が軽くなった。
タボール7を握ったらチートタイムスタート。ウルトラマリンから飛び出して、湖面を走って岸に向かった。
使えるものは使って安全確実に倒す。
アルズライズが倒したのは四体。熱は奥にもあり、大きさから成体。数は十匹。子供はいない。穴の奥か?
チートタイムで思考も加速されていて、岸に上がったときには数と位置は把握できた。
スタングレネードでは破裂するまで四、五秒はかかるので、タボール7を単発に切り替えて頭に一発ずつ撃ち込んでいった。
至近距離からとは言え、さすが7.62㎜の徹甲弾。ロースランの頭を撃ち抜いているよ。
まあ、それで即死してないところが魔物の恐ろしいとこ。頭を撃ち抜かれても骨のこん棒を振り回しているよ。
しかし、オレの後ろにはアルズライズがいる。安定性の悪いウルトラマリンからの射撃とは言え、当てるだけなら問題はない。次々と止めを刺していった。
一分で岸にいるロースランは壊滅。チートタイムを停止させ、ヘッドライトとタボール7につけたライトを点灯させた。
他にロースランはいない。十数匹を倒したが、まだ子がいる。成体もいるはず。警戒しながらアルズライズがくるのを待った。
ウルトラマリンから降りたアルズライズを先頭に、奥に続く穴に入った。
ここにも骨に埋もれており、嫌な臭いに満ちている。
「ロースランだ!」
アルズライズはHスナイパーからデザートイーグルに持ち換えており、叫ぶなり全弾を撃ち尽くす勢いで突進していく。
撃ち尽くしたマガジンはダンプポーチに放り込み、新しいマガジンを入れてグングンと進んでいった。
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