第342話 南洞窟

 香辛料から作ったカレー、マジうま。ナンもマジサイコー。


 語彙が貧弱で申し訳ないが、この美味さは笑顔にして表現させてくださいませ。


「しかし、エルフは窯作りが凄いな」


 ナンを焼く窯の他にピザ窯や焼き物の窯まで作っており、炭焼き窯まで造っている段階だ。


「そういうのはドワーフが得意ってイメージがあったんだがな」


 ドワーフはロズたちしかいないので、ドワーフがどんなものかよくわかってない。ただ、力が強く戦いに長けてるってだけはよくわかるがな。


 エルフ料理と言うか、カレー料理と言うか、たまに食うにはいいが、オレはジャパニーズカレーが好みかな? 三杯もお代わりして説得力がないけど!


 まあ、とにもかくにもエルフたちはカレー料理で先を見出だせたようで、アシッカの町に店を出すことも積極的になれたよ。


 次の日もカレーを出されてちょっと困ったが、鍋に移してもらってロンタリオさんたちに食べてもらおうっと。


「ロズ。お前たち、一旦コラウスに帰るか?」


 すっかりカインゼルさんに任せていたが、ロズ、ライゴ、マッシュには家族がいる。さすがに一月近く離すのは酷だろうよ。


「では、ライゴとマッシュを帰したいです」


「ん? ロズとガドーはいいのか?」


 別に全員で帰っても問題ないのに。


「おれらは旦那についていきます。ゴブリンがいつ出るかわからんので」


 まあ、稼ぎ時にいないってのも悔やまれるか。最近、大群を相手してばかり。穴蔵を探して回るよりいっきにきてくれたほうが楽だろうよ。


 帰るのはライゴ、マッシュ、そして、職員の何人か。一月後には戻ってくるそうだ。


「メビ。アリサ。いくぞ」


 食料の搬出も終わり、長老たちとの話し合いも終わったので、ロンタリオさんたちが探索している南洞窟にいってみる。


 補給でマイセンズの砦と東拠点の道は雪が解けてあり、踏み均されて歩きやすくなっているので難なく到着。東拠点がちょっとした村になっていた。え? どーゆーこと?


「ここを炭焼き村にしようと、経験のある者を移しました」


 あー。炭焼き窯を造っているって言ってたのはこのことだったんだ。カレーのことで聞き逃していたかな?


「しかし、ゴブリンが出てくる近くに村とか大丈夫か? また溢れてこないとも限らないのに」


「はい。それで町にある油圧ショベルをこちらに移してもらえませんでしょうか。小さいのでは時間がかかるので」


 あ、PC01(コマツのマイクロショベルね)、ここに置いたままだったよ。すっかり忘れてたわ。


「わかった。ミリエルに言っておくよ」


 まだカインゼルさんが買った油圧ショベルは活躍しているが、巨人もいるし、PC01と交換したら構わないだろうよ。


 ホームに入り、ミサロに伝言を頼んだ。


「アリサ。洞窟に入ってロンダリオさんたちを呼んできてくれるか? オレがミーティングしたいと伝えてくれ。オレはPC01を練習するからよ」


「はい。すぐに」


「メビは周辺の警戒を頼む。ゴブリンはいないが他の魔物が出てこないと限らないからな」


「了ー解。任せて!」


 PC01を操るエルフの男と交代してもらい、ロズとガトーも混ざってもらって空堀を堀った。


 久しぶりにやると上手く操れんな~。やはり日々やってないとダメか。


 感覚を思い出しながらPC01を操っていると、洞窟の中からロンダリオさんたちが出てきた。


「呼び出してすみませんでした」


 PC01を交換してもらい、汚れに汚れたロンダリオさんに労いの言葉をかけた。


「いや、構わないさ。さすがにそろそろ戻らないとなーと思ってたからな。ちょうどよかったよ」


「まあ、まずは汚れを落としてください。すぐに風呂を用意しますんで」


 マサキさんが伝えたのか、エルフは風呂文化だ。この村にも五右衛門風呂? な公衆浴場的なものがあった。


 ホームと連動の水筒で水を溜め、ヒートソードで瞬間沸騰──はやりすぎた。桶と盥を取り寄せて熱湯を取り分けて水を足してちょうどよくした。


 用意ができたら入ってもらい、湯上がりによく冷えたビールを出してあげた。


 残り湯で装備を洗い、干したらビニールシートを張っただけの作戦部に集まった。


「エルフ料理をもらったので温まったら食べてください」


 朝にもらった鍋をストーブにかけ、ナンを串に刺して温めた。


「さっそくですが、洞窟探索の進みはどうです?」


「入口から斜め下に二百メートルくらいのところに大空間があって、そこから底に伸びた穴が二十近くあった。半分を調べたが、ゴブリンが通れそうな穴はまだ発見できてないな」


「そうですか。ゴブリンは出てるので?」


 ちょくちょく報酬は入っているが、それが誰か、どこでかはわからない。まあ、わかるのも大変だけどな。


「忘れた頃に出てきてるな。これじゃ稼ぎにならんよ」


「でしたら一旦休息したらどうです? そろそろ動きそうな気がするんで」


 まさかこのまま終わるなんてことはない。必ず大きいことが起きる。そうなる前に休んでおくべきだろうよ。


「タカトがそう言うなら従っておくか。皆、いいか?」


「ああ、さすがに疲れたしな。三日くらいは休みたいよ」


「異議なし」


「しばらく太陽の下にいたいな」


「おれは酒が飲みたいよ」


 満場一致でロンダリオ隊は休息を取ることになった。


「アシッカに戻りますか?」


「いや、ここで休むよ。町に戻るより充実してるからな」


「じゃあ、ヒートソードを一本貸しておきますよ。風邪を引かないようにしてくださいね」


 洞窟内を写したデータをもらい、ホームに戻って中身をパソコンで写し出した。

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