第315話 対策
十五発撃ってRPG−7の練習を終わりにした。
約八十万円が消えてしまったが、この練習が将来のオレを救うためのもの。決して無駄ではないと信じよう……。
「帰るか」
「ああ」
オレもアルズライズも無駄口は叩かず、発射器をホームに戻したらマンドラゴラ村に帰った。
村に着く頃には辺りは暗くなっており、家々から灯りが漏れていた。
ガラスは生み出されてはいるが、こんなド田舎にあるわけもない。灯りが漏れていると言うことはそれだけ隙間があるってことだ。
それが貧乏からくるものか、はたまた空気が籠らないようにしているかはわからないが、ここでの暮らしが厳しいってのはよくわかった。
ただ、外敵がいなくなったからか、村を覆う空気は和らいでいた。
「タカトさん」
さて、どこにいけばいいんだ? と悩んでいたらミリエルとビシャが現れた。
「ご苦労さんな。怪我人の治療は終わったか?」
「はい。ただ、病気も治してくれと言われて困りました」
回復魔法を使えるミリエルだが、病気まで治せる効果はない。ただ、治癒力を高めることはできるので、栄養を摂らせて治癒力を高めてやれば軽い病気なら治せることもある、とオレは見ています。
「無理なときは無理と言っておけよ」
病気で可哀想とは思うが、オレらにできることは限られているし、救ってやる義務もない。まあ、金を出すと言うなら回復薬を譲ってやらないこともない。利がないなら線を引いて対応するべきだろう。
「はい。わかりました」
素直なときは素直なんだよな、ミリエルって。
「男爵様は?」
「村長宅で休んでいます。こちらに」
と、ミリエルに案内されて村長宅に。密集して建てられたところなので、村長宅らしさがなく、左右の家となんら変わらない。ただ、この村は上に向かっていて、三階建てが普通だった。
外から見たら鰻の寝床っぽいが、中は意外と広く、石で組んだ暖炉があったり、土間になってたりしてた。
「タカト殿。外はどうだった?」
村長一家と男爵、兵士と中は混雑している。ちょっと集まりすぎじゃね?
「ロースランや他の魔物の姿はありません。多少、ゴブリンの気配はありますが、放っておいても問題はないでしょう。ただ、春になれば増えるかもしれませんがね」
洞窟だけじゃなく手頃な木にもロケット弾を放った。魔物がいたとしても爆発で逃げ出したことだろうよ。
「オレらはこれで終了とさせてもらいます。これ以上はここの男爵様と相談して、冒険者なり雇ってもらってください」
「ああ。あとのことはこちらでやる。ロースラン退治、感謝する」
見た目は悪いけど、中身は話のわかる人だよ。見た目で損してるタイプだな。
「こちらこそいい稼ぎができました。ありがとうございます」
なんか礼を言うのも変だが、お互い気持ちよく終わらせるために感謝を述べておこう。
今日は早めに休ませてもらい、次の日は男爵と一緒にエビル男爵へ。夫人に約束したので館までいき、男爵を夫人に返した。
「ありがとうございました」
深々と頭を下げる男爵夫人。マサキさんが伝えたのか、実に様になったお辞儀であった。
「暖かくなればゴブリンは出てきます。ゴブリン駆除をするならそのときを狙ってください」
「ああ。助言、感謝する」
男爵一家に見送られ、オレらはエビル男爵領を発った。
「タカト、どうした?」
いきなり止まったオレに、アルズライズが前に出てデザートイーグルを構えた。
「あ、いや、あちらのほうにゴブリンの気配を感じてな」
距離は一キロくらいだろうか? 十匹くらいの気配があり、どうも移動している感じだ。
気温は三度。雪もかなり積もっているのに集団で移動してるとか異常だ。気配も怯えとか、空腹とかはない。まあ、警戒はしているがな。
「取り逃がしたゴブリンか?」
察知できただけで軽く二十匹はいた。バラバラになったヤツらが集まって移動してる、って感じかな?
「まあ、纏まっているならちょうどいい。きっちり駆除しておこう。いくぞ」
道から外れ、ゴブリンの気配を追うと、途中で気配が消えた。
距離にして三百メートル。気配を見失うも距離ではない。ってことは洞窟に入ったってことだろうよ。
見失った場所に到着。予想通り、洞窟があった。
「なんか脆そうな洞窟だな」
入口も隙間が三十センチしかなく、入るのは厳しい。ライトで照らすとかなり深い穴のようだ。
「……かなり奥にゴブリンの気配があるな……」
まっすぐではなく曲がりくねっているのか、距離がよくわからない。ただ、奥にいるってのはわかった。
「入るのは危険だな」
崩れやすい洞窟に入るとか死ににいくようなもの。入る気にはなれんよ。
「……そうだな。洞窟は崩れる恐れがあったな……」
いや、崩れることもあると考えてはいたが、それに対する策は全然考えてなかった。入る前に気がついてよかったぜ。
RPG−7を取り寄せ、アルズライズに渡す。
「催涙グレネードを洞窟に放つ。アルズライズは入口を塞いでくれ」
「了解した」
「ミリエルとビシャもだ」
三人が五十メートルくらい離れたら催涙グレネードを取り寄せ、ピンを抜いて洞窟に放り込んだ。
どれだけ奥に続いているかわからないので、念のために四つほど放り込んでおく。
アルズライズに手を振って合図を送ったらチートタイムスタート。遠回りで三人のところに向かった。
着いた頃にはロケット弾を撃っており、洞窟が爆発していた。
「うん。じゃあ、いくか」
穴は塞いだ。死ぬまで待ってもいられないので道に戻り、アシッカの町に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます