第308話 退治終了
洞窟のところまでくると、爆煙は収まっており、なにか肉の焼けた臭いがした。
「いるかな?」
てか、十八匹が入る洞窟となると、中はかなり広いんじゃなかろうか?
サーチアイで調べたいところだが、あれにライトや赤外線感知とか言った機能はなし。中が暗いと映像は真っ暗となる。ったく、もっと性能のいいのを寄越せってんだ。
まあ、洞窟の入口──と言うか、横に走った割れ目? 裂け目? は大きく、横四メートル、縦二メートル。M32グレネードランチャーを取り寄せ、催涙弾三発を洞窟内に撃ち込んでやった。
催涙の煙が外に流れてきたのでちょっと後退。M32グレネードランチャーを構えたまま様子を見ていると、二メートルくらいのロースランがわらわらと出てきた。
「力士みたいな体格なのに機敏だな」
いや、催涙にやられて火事場のなんとやらか? 涙や鼻水を流し、悶え苦しみながら機敏に暴れているよ。見たままを言ってるのに意味不明だな。
「タカト!」
暴れるロースランを遠くから眺めていたらメビとアリサがやってきた。
「ご苦労さん。逃げたロースランはいたか?」
「うん。二匹倒した。髭のおじちゃんたちもロースラン一匹と戦ってた」
髭のおじちゃんとは男爵のことね。顔下半分黒髭を生やしています。
「まあ、男爵たちなら問題あるまい。メビ。あいつらを始末してくれ。食べるから肉があるところは狙うなよ」
「じゃあ、頭を狙うね」
スナイパー仕様にした416Dを構え、のたうち回るロースランの頭を撃ち抜いていった。
「なんか頭も脆いな」
なんでこんな弱い魔物に冒険者が殺されてんだ? メッチャ弱いじゃん。
「ロースランは通常、魔力の鎧を纏っていますので剣も矢も通せません」
と、アリサが教えてくれた。
「剣や矢は通さないのに弾は通すんだ。どんな理屈だ?」
まあ、通じるならどんな理屈でも構わんか。別に解明したいわけでもないしな。
「メビ。アリサ。防毒マスクをしろ」
催涙は結構残留する。一度、どんなものか試したが、二度としないと誓ったよ。ちなみに回復薬で治りました。
「メビとアリサは洞窟内を調べてくれ。慎重にな」
またスライムのような謎の存在がいるとは思わないが、生きている者がいるかもしれない。前もレアっぽいのがいたしな。
「殺していいんでしょう?」
「ああ。殺して構わない」
まったく、オレも堕ちたものだ。簡単に殺せと言えるんだからな。
まあ、だからと言って懺悔はしない。これをやらせているのはダメ女神。即ち神が許したもう殺害である。文句はダメ女神に言ってくれ、だ。
外に出たロースランから血を吸い取る。
あまり吸いすぎると干からびて肉が乾燥肉になってしまう。ほどよく血抜きをしたら何度かマチェットを振り下ろして首を叩き斬った。あーしんど。
軽くなっただろうロースランを担──げなかった。重いわ!
二段階アップしたから大人一人担げるようになり、血と首を取ったが、それでもロースランは重かった。担げねーとホームに運べねーよ!
パイオニアとかは運転席に座れば荷物と判定してくれるが、荷物とかは担いだり持ったりしないとホームに入ってくれない。引きずったままではダメなのだ。
あ、いや、リヤカーを引いたままなら入れたな。まったく設定が適当なんだからよ!
担ぐのを止め、ホームからリヤカーを引っ張ってきた。
フンヌー! とリヤカーに引きずり上げる。これだけで汗だくだよ!
「チートタイム使うか?」
残り十五秒ある。外に出た四匹なら五秒でリヤカーに載せられるだろうよ。
いや、なにかあるかわからないのだから使うことはできないか。安易に楽なほうに逃げるな、オレ!
リヤカーに積んだロースランをホームに運んだ。
「ご苦労様。大きなロースランね」
「まだ大きいのがいたが、さすがに一人で運び切れない。腕と脚、切り落としていいか?」
「血抜きをしてくれたらこちらでやるわ。でも、小さいのはそのままでお願い。館の分はロットにやらせるから」
ロット? あーロットは冒険者ギルドで解体を担当してたんだっけな。
「了解。あと三匹運んだら今日は終了にするよ。残りは明日やるから」
「そうね。わたしも一匹捌くのがやっとだしね、外に出しておくほうがいいわわね。ただ、凍らせないでね。解凍させるの面倒だから」
「なかなか難しい注文だが、やってみるよ」
そう言って外に出ると、メビとアリサが洞窟から出ていた。
「タカト、中のロースランは四匹いたよ。四匹とも子供で頭を撃って殺しておいた」
「ご苦労様。洞窟の中はどうだった?」
「結構広かったよ。あと、エサなのか、鹿の死体が積まれてた」
まあ、冬眠しているわけじゃなかったからエサを貯め込むのは当然か。
「アリサ。ロースランの手足を斬り落としてここに集めてくれ。メビは避難小屋までの道を作ってくれ。避難小屋と洞窟に分かれて野営する」
避難小屋は男爵に任せてオレらは洞窟で野営しよう。
「ゴブリンが動いた様子は?」
「ないよ。本当にゴブリンっているの?」
「この周辺に軽く三百匹はいるな。気配から目覚めてはいる感じだ」
共生関係ではあるが、利害関係はそこまで深くはないようだ。
「オレは男爵のところにいってくる。暗くなったら終了だ。無理せずここに集合だ」
そう指示を出し、新しいマチェットを取り寄せて男爵のところに向かった。
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