第299話 ケミカルライト
朝になり、さっそく南の洞窟に出発する。
「ゴブリンが出てきてるな」
一メートル以上雪が積もっているというのに、エサを探しに出るとかゴブリンも大変である。まあ、まったく同情はしないけど。
「おれがやる」
「出ているのは約百匹。処理肉をばら撒けばすぐに集まるはずだ」
やる気全開のアルズライズが進軍から外れ、オレらはそのまま南の洞窟に突き進んだ。
なんとか洞窟の前に到着。ゴブリンの出入りが激しいようで、洞窟前は雪が溶けており山肌に空いた穴が見えている。人一人通れるかどうかくらいだ。
「タカト、ゴブリンいるの?」
「約三十メートル奥に一塊になっているな。まずは周辺の雪を溶かすぞ。アリサたちは周辺の警戒。ビシャは穴を見張っていろ」
そう指示を出してヒートソードで雪を溶かしにかかった。
しばらくしてアルズライズがやってきた。返り血を浴びて。銃じゃなくて金テコバールを使ったんだ。
「何匹か逃した」
「あっちの方角、約一キロくらいかな? そこに三十匹くらい塊っている気配がある。他のもそこに向かっているっぽいな」
そこになにがあるかわからないが、避難できる場所っぽいな。
「ここに戻ってくるか?」
「うーん。おそらくだが、一時的避難場所だと思うから寒さに堪えられないときは戻ってくるんじゃないか?」
そこに住めるならとっくに察知している。察知できてないのだから一時的に避難できる場所とみていいだろう。
「なら、ここで待とう」
労力に見合わないと判断したようで、適当なところに穴を掘り、薪を買って火をつけて暖を取り始めた。
「アリサ。土魔法を使える者は?」
「二人います」
「では、この辺を平らにしてくれ。オレは南拠点の荷物を片付けてくる。洞窟の強度がどれだけかわからないから入るなよ。ビシャ、手伝ってくれ」
戻りはヒートソードを使って雪を溶かしていく。
時計型ストーブを灰を捨ててからホームに戻し、余った薪はシートを被せておく。ここは南洞窟拠点を捨てたときの避難場所としよう。
「食料は残しておくな。ゴブリンの住み処にされたら困るからな」
「了解」
そう道具は出してないので二十分もしないで片付け終了。南洞窟前拠点に戻った。
ホームに戻したものを出し、また拠点作り。ワンタッチ拠点とか売ってねーかな~。
「この洞窟の入口、もうちょっと広げて崩れないようにできませんかね? 二人並んで入れるくらいにしたいんですよ」
土魔法を使ったエルフに尋ねる。
「はい。可能ですが、塞いだほうがいいのでは?」
「そうしたいんですが、中が繋がっていたら一つ塞いでも仕方がありません。なら、こちらの出入口として使います」
なにもないところなら察知できるが、土の中だと数十メートル先までしかわからない。どうやらこの察知能力、障害物があるとダメなようだ。
「では、さっそくお願いします。見張り、二人くらい立たせてください。出てきたら撃って構わないので」
攻撃魔法が不得意な者にスコーピオンを持たせてある。まあ、サイトやライトもつけてないノーマル状態だけどな。
「アルズライズ。入るには時間がかかるから東洞窟拠点にいって様子を見てきてくれるか? 入れるなら入っても構わないぞ」
あちらにはロンダリオさんチームがいる。前に地下墓地に入ったとか言ってたし、洞窟に入っても上手く立ち回れるだろうよ。
「いや、様子を見たらすぐ戻ってくる。ゴブリンと遭遇する率はタカトのほうが高いからな」
嫌な見立てだが、違うと言えないのが悲しいところだ。
「まあ、アルズライズの判断に任せるよ」
オレは万全の用意をしてから洞窟に入る。マルダ洞窟の二の舞はしないのだ。
アルズライズが出発したらオレらはまず食事の用意。今日は豚汁だ。まあ、材料を準備してくれたのはミサロで、オレは鍋にぶち込むだけ。煮だったら完成です。
匂いに釣られて出てくるかな? と思ったが、ここのゴブリンは警戒が強いようで出てくることはなかった。
「ドライアイス戦法で根絶やしにしてやりたいな」
洞窟がどこまで広がり、東の洞窟と繋がっているかもしれない。これから潜るかもしれないってのに環境を悪くしたら本末転倒だわ。
「送風機、買ってたほうがいいかな?」
あ、酸素濃度計も必要か。それと、折ると光る棒、なんて言ったっけ? それも一応買っておくか。
なんてことを考えながら入口を広げ、強化作業を見守っていると、洞窟の奥でゴブリンの気配が集まってきた。
警戒心がいくら強くても飢餓には勝てないようで、流し込んでやった豚汁の匂いに自我崩壊が起きているようだ。
「狂乱化が始まるぞ! 迎え撃つ準備をしろ」
アルズライズには申し訳ないが、先に始めさせてもらいましょう。
洞窟の奥から狂乱化したときの臭いが流れてくる。こりゃ、相当な数が出てきそうだ。
「無理に倒す必要はない。逃げたらゆっくり駆除していけばいいんだからな」
外に出てくれたほうがやりやすいし、洞窟の中にも入りやすい。どんどん出てこいやー! だ。
片付けている暇はないのでマルチシールドを最大に展開して地面に置き、オレは正面。左に四人。右に二人を配置した。
「ビシャは左に。回り込ませるな。ゴブリンは左に流すぞ」
MINIMIを二丁取り寄せ、弾を装填。マルチシールドに乗せて構えた。
「くるぞ!」
狂乱化したゴブリンが溢れ出た。
「撃って撃って撃ちまくれ!」
久しぶりの稼ぎ時。オレの糧になれ!
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