第266話 セフティープライムデー

 今日は一段と寒い朝だった。


 なのに、ゴブリンの気配は元気ハツラツ。オロ○ミンCでも飲んでいるのだろうか? オレにその元気をわけて欲しいよ。


 ぐつぐつ煮える鱈鍋(なんで? とか訊いてはならぬ。ミサロが決めたのだから)で朝飯を済ませ、オレはまたチートタイム検証のために皆と別行動をする。


 一メートルくらいの水球を十五個作り出し、扇状に配置。圧縮したのち一斉に撃ち出した。


 これだけやっても精神的負担も魔力が減った感じもしない。どこからか力が流れてくる感じもなかった。


 じゃあ、このチートはどこから出てきてるの? ダメ女神からか? まさか勇者から奪ってるのか? とんでもないエネルギーをリスクなしに使えているのか? 不安でしかないよ。


 とは言え、三分間でも非常識な力を使えることはありがたい。特にゴブリンが密集していたら、な。


 十五個の水球砲台から放たれた水のレーザーがゴブリンどもを撃ち抜き、二百万以上が加算された。エゲつな!


「勇者、どんだけだよ?」


 そして、そんな力がないと戦えない魔王軍はどんだけだよ? チートタイムを持っていても負ける未来しか見えねーよ。


 二分残して今日のチートタイムは終了。検証も大事だが、基礎を向上させることも大事。撃ち漏らしたゴブリンをMINIMIを抱えて走り回った。


 三度の箱マガジン交換とバレル交換をして、六百匹を駆除できた。


 ──ピローン!


 毎度毎度の電子音。ミュート機能がないのなら音を変えてくれ。


 ──一万七千匹突破だよ! 町を囲んでいるのは残り約三千四百匹。あと六日で一年になりまーす。ボーナスとして一日だけセフティープライムデーを行います。全商品七十パーセントオフ。欲しいものを買うチャンス! さあ、駆除員も請負員も稼いで稼いで稼ぎまくれー!


 どこのプライムデーをパクってきたんだよ! いや、七十パーセントオフはありがたいけどさ!


「ハァー。今の段階で報酬金は約八百万円か」


 それなら一千五百万円は稼いでおきたいたな。ホームも拡張しておきたいし、RPG−7も何丁(門? 基? ロケットランチャーはなんて数えるんだ?)買っておきたい。


 あと、発電機とコンプレッサーが欲しい。タイヤの空気入れやタイヤ交換、洗浄とか凄く楽になるんだよな。


「って、それはあとだ。プライムデーに備えて稼がないとな」


 MINIMIはホームに戻し、VHS−2に持ち換えて撃ち漏らしたゴブリンを片付けていった。


 昼になったので、一旦中止。カインゼルさんたちと合流した。


「ラダリオン! 処理肉をばら撒くぞ!」


 元に戻ったラダリオンに叫び、ゴブリンを逃がさないために処理肉をばら蒔いておく。アシッカの領民には申し訳ないが、逃さないためのエサになってもらいます。


 処理肉に釣られたら即撤退。スモークグレネードをいくつか放って森の中に逃げ込んだ。


 簡易砦まで移動し、今日の駆除は終了とする。


「タカト。先ほど女神様からの声が届いたが、セフティーなんとかとはなんだ?」


 駆除員請負員と言っていたからカインゼルさんたちにも届いているかと思ったが、プライムデーの説明はなかったのかよ。


「オレがこの世界にきて一年になるお祝いみたいなものですよ。その日だけ請負員カードで買えるものが七割引きになるんです」


「七割引きか。一日だけなのか?」


「みたいですね。なにか大きな買い物をするなら一度帰ったほうがいいですよ。シエイラも戻したいですし」


 シエイラも二百匹以上はゴブリンを駆除している。それに、そろそろ疲れが溜まっている。体を壊す前に帰したほうがいいだろう。


「そう、だな。わし専用の車が欲しいんでな。もう少し稼いだら戻るとしよう」


 ウルヴァリンはカインゼルさん専用みたいなものだが、自分だけのが欲しいようだ。つーか、すっかり車(UTV)に嵌まっちゃって。金持ちになったら車を何台も買っちゃうタイプだな。


「では、ミリエルたちがきたら交代、と言うことにしますか。戻るからシエイラを休ませてからにしたいですし」


 これからまた四、五日かけて戻らなくちゃならない。疲れが溜まった状態では途中で倒れ兼ねない。休ませてからにしよう。


「ああ。なら、午後からも駆除に出ていいか?」


「いいですが、明日は休息ですよ。働きずくめなんですから」


 オレも休みたい。まだまだ駆除は続くんだからな。


「旦那。おれらもカインゼルさんに付き合っていいですかい?」


「二人には残ってもらうんだから無理しなくてもいいんじゃないか?」


 冬の間、マイセンズに住み処を築いてもらわなくちゃならない。てか、まだマイセンスにもいってなかったな! クソ! なんの回り道してんだ、オレらは?


「おれらも稼いでおきたいので」


「まあ、疲れてないんなら好きにするといい。ミシニーはどうする?」


「わたしも戻るよ。そろそろ酒が切れてきたしな」


 アル中か! ったく。ほどほどにしろよな。肝硬変になってもしらんぞ。


「ラダリオンはどうする?」


「帰る。巨人に出す物減ってるだろうし」


 ってことで、帰るのはカインゼルさん、ラダリオン、シエイラ、そしてミシニーに決定。もう一稼ぎと午後の駆除に出た。

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