第257話 ハーフエルフ

 夜中にミシニーと交代してホームに入った。


 ミリエルとラダリオンは眠っており、ミサロは起きていた。


「眠っていいんだぞ」


 玄関で料理本を読むミサロ。次はなにを極めんとするのやら。胃がもたれるのは止めてくれよ。


「充分眠ったわ。わたしは料理していただけだから」


「運動しに外に出てもいいんだからな」


「ええ。気晴らしに外に出てるわ。シエイラから怖い笑顔を向けられるけど」


 Sっ気なシエイラだが、いじめをする性格とは思えない。他種族に偏見でも持っているのか? いや、ミシニーやラダリオンには普通に接しているか。なんだ?


「タカトは気にしなくていいわ。こちらで解決するから」


「あ、ああ。拗れるようなら言えよ。オレが間に入るから」


 正直言えば土下座でご遠慮したいが、引き受けた責任がある。斬首台に立つ思いで間に入るよ。


「大丈夫よ。こちらのことはこちらで解決するから。タカトはゴブリン駆除に力を注いで」


 なんだろう。なにか悟った感がハンパないんだけど。お前、魔王軍の中でどんな風に生きてきたのよ?


「わ、わかった。だが、どうにもならなくなる前に言えよ。オレが優先するのはここにいるお前たちなんだから」


 ラダリオンたちは気にするなと言うが、引き入れた責任はなくなってない。守るべき優先順位はラダリオン、ミリエル、ミサロだ。


「ええ。でも、大丈夫。わたしたちは守られるだけのお荷物じゃないわ」


 なにかミサロたちの間でなにかあったのだろうか? ちょっと怖くて訊き出せないです……。


 なんとも言えないので、マットを持って外に出た。ホームでは気が休まらないので。


 外に出したパイオニアの横にマットを敷いて寝ることにした。


 すぐに眠りにつき、なにかうるさくなって目が覚めた。


 ……六時か。結構眠れたな……。


 見張りは兵士たちがやっていているので、パイオニアに積んであるカセットコンロを使ってコーヒーを淹れた。


「おはよう。よく眠れたか?」


 ミシニーがやってきて、淹れたばかりのコーヒーを奪って飲んでしまった。お前、ワイン以外飲めたんだな。なんかワインを飲んでいる記憶しかないよ。


「ああ。ちょっと気を抜かしすぎたよ」


 しょうがないのでまた淹れたらカインゼルさんやアルズライズがやってきたので人数分を淹れてやった。つーか、自分で淹れて飲めよ。インスタントコーヒーなんだからよ。


 やっと自分のを淹れて目覚めのコーヒーを飲んだ。


「ミシニーとビシャは朝飯を食ったらラザニア村に戻ってくれ。カインゼルさんはサイルスさんの支援をお願いします。あ、ラダリオンが言っていた代理の代理ってなんです?」


 食卓でしか饒舌にならないラダリオンだと説明されてもわからんのよね。


「ああ、それはミシャード様の副官がくると言うことだ」


 副官? 領主代理なら秘書とか書記官とかじゃないの?


「ミロルド・シャードマン。ミシャを幼少期から支えてくれてるハーフエルフの女だ」


 ハーフエルフ? ってことは、他種族間でも子供が成せるってことか。じゃあ、エルフも人間も同じ流れってことなのか?


「コルモアならではですか?」


「そうだな。騎士時代はいろいろあったようだ」


 差別的ないろいろか? そんなの聞いたら王都にいけなくなるじゃん。


 そのハーフエルフのことはサイルスさんに任せることにして、オレらは朝飯の準備を始め、ゆっくり食べたら周辺の探索に出かけることにした。


「おれもいく」


「あたしも」


 アルズライズとメビもついてきた。元気なヤツらだよ。


「別にゴブリンはいないぞ」


「構わない。護衛だと思え」


「ミシニーからもタカトから離れるなって言われてるから」


 オレが歩けばハプニングが起こるとでも思われてんだろうか? まあ、なにもないことのほうが少ないけど!


「……マーグか……」


 エサに困って出てきたのか、マーグの群れが現れましたー。クソが!


「タカト。バレットを貸してくれ」


「あいよ」


 バレットを取り寄せてアルズライズに渡した。


「タカトは支援を頼む。メビはタカトを守れ」


「任せて!」


 P90を構えたメビがオレの前に出た。


 マーグの数は六匹。金印でも無理じゃないか? って思いも杞憂で終わる。


 鬼に金棒とばかりにアルズライズにバレット。一発ずつマーグの頭にぶち込み、怯んだところにデザートイーグルを抜いて膝を狙った。


「マガジン!」


 取り寄せていたマガジンをアルズライズに放り投げる。


 前を向いているのに手だけを向けてキャッチ。交換してまた頭を狙っていく。


 まったく鮮やかなものである。これなら竜でも倒しそうである。


 三度のマガジン交換と手持ちの弾で六匹のマーグを倒してしまうアルズライズ。アホみたいな強さに驚くより呆れてしまった。ほんと、ダメ女神のパラメーター振りは本当にクソである。


「うん。やはりバレットはいい。早く欲しいものだ」


 五十パーセントオフシールを取り寄せ、一枚捲ってアルズライズに渡した。


「百万円以上貯まったのならこれを使え。半額になるから」


 請負員カードでも使えるかわからんが、ものは試しだ。やるだけやってみるといいさ。


「どう使うのだ?」


「欲しいバレットを出してそれに張ればいい」


「わかった」


 バレットを選びシールを張ると、黒いバレットが現れた。


「弾は魔石から引いておくよ」


 今回の大駆除作戦で百五十万円くらいは稼げた。バレットの弾くらい問題はない。


「ああ。マーグの魔石も渡しておく」


 マーグの魔石は一個金貨二、三枚だったはず。二枚だとしても六匹で十二枚か。ギルド運営費ばかり貯まっていくぜ……。


「了解。じゃあ、領主代理の副官がくる前に魔石を取り出してしまおう」


 チートタイムを使ってマーグを細切れに。って、マチェットが折れたよ。チート能力に耐えられる剣を用意しなくちゃならんな……。


 マチェットを投げ捨て、ナイフを使ってマーグの魔石を取り出した。

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