第255話 オレの幸運値
「シエイラ。あとを頼む」
「はい。お気をつけて」
朝、第三陣たるオレらは館の前に集まり、シエイラや職員たちに見送られて出発した。
パイオニア一号はなにかあったときのために館の前に残し、ウルヴァリンとKLX230でマルスの町に向かうことにした。
運転できる者が増えると三台だけでは足りなくなってきているな~。これは四台目を買わないと不平不満が出てくるかもしれんな……。
稼いでは消え、消えては稼ぎの繰り返し。ほんと、オレはなんて地獄に落とされたんだろうな?
昨日もウルヴァリンの練習をしてたので、メビの運転は安定してきている。この子はもしかするとオールマイティーなのかもしれんな。まったく、天才ばかりのチームを凡人が指揮するとか泣けてくるぜ……。
三十分くらいでマルス町に到着。ウルヴァリンとKLXをホームに仕舞った。
ミロイド砦までは半日なので荷物は軽くし、ベネリM4装備でいくことにした。
「ん? ゴブリンの群れが近くにいるな?」
三十匹ていどの群れが町のすぐ近くにいた。なんだ、いったい?
「どこだ?」
「この方向、百歩もないくらいのところに固まっている。眠っているのか?」
気配が小さくなっている。これは気配を殺しているってよりは眠っているって感じだ。
「おれがいく──」
あの巨体で音も立てずに木々の間に消え、しばらくして銃声が轟いた。いや、デザートイーグルでゴブリンはオーバキルだろう。弾だって安くないんだからさ……。
「すべて倒した。他にいるか?」
「あ、ああ。あちらの方角、二百歩くらいに七匹いるな。オレたちはミロイド砦に向かうから気配を辿ってきてくれ」
「わかった──」
本当に音を立てんな。なにか魔法を使っているのか?
「アルズライズはなにを焦っているんだ?」
なにかそんな感じがする。
「バレットが欲しいみたいだよ」
「バレット? って、対物ライフルのバレットか?」
「うん。自分のが欲しいって言ってたよ。バレットで竜を倒すんだってさ」
き、金印ってヤツはなんとも恐ろしいことを考える生き物だな! 竜ってあれだろう? 一目見て大洪水を起こさせる存在だぞ? 対物ライフルごときでどうこうできんだろう! 対戦車ロケットでも怪しいところだぞ。
「……怖いもの知らずな男だよ……」
まあ、竜を倒すのが夢と言うなら否定する気はない。オレに関係ないことだからな。自由に挑め、だ。
「まあ、アルズライズは好きにさせてオレたちはいくぞ」
「了ー解」
ミロイド砦へ続く道に入って進んだ。
アズルライズのやる気が衰えることはなく、十時までに百匹近いゴブリンを駆除してしまった。
小川の近くで休憩をする。
「今のうちに弾を入れておくといい。砦で処理肉をばら蒔いているようだ。ゴブリンが集まり出している」
砦まではあと十数キロ。まだラダリオンたちの気配はうっすらとしか感じないが、ゴブリンの気配が集まっていることはわかった。かなりの数がいるぞ。
デザートイーグルの弾を取り寄せ、メビに見張ってもらってマガジンに弾を入れた。
「ゴブリン相手なら普通に剣で倒したほうがいいんじゃないか?」
アルズライズなら拳でも殺せんだろう。オレなら一発でミンチになるぞ。
「デザートイーグルでの戦い方を模索している。ゴブリンは訓練にちょうどいい」
アルズライズにしたらゴブリンはいい標的ってことか。
「これで軽く掃除しておけ」
二本で百円のブラシとウエスをアルズライズに渡した。
三十分くらい休んだら出発。ゴブリンの気配がどんどん濃密になってきて、狂乱化の臭いがしてきた。
「止まれ。砦にかなりの数が集まり出している。これは、砦に着く頃には狂乱化になってそうだ」
計画ではオレが到着してから狂乱化させる予定だったが、思いの外集まり出したみたいだな。まったく、予定どおりに動いてくれない害獣だよ。
「ちょっとホームにいってくる。ここで待機しててくれ」
そう言ってホームに入った。
「ミサロ。ミロイド砦から報告はきてるか?」
玄関でパイナップルを切っていたミサロ。今日はフルーツカットを極めているそうです。
……ラダリオンの暴食が治ったと思ったらミサロが料理狂になるとはな。まったく、泣けてくるよ……。
「十時の報告にきたときゴブリンが集まってきてると言ってたわ。また十一時に入ってくるそうよ」
あと三十分か。待ってはいられないな。
「かなりのゴブリンが集まってきてて狂乱化が始まっている。着く頃には入れないだろうからオレらは外周から削っていく。指揮はサイルスさんにお願いしてくれ」
元々サイルスさんが指揮することになっていたが、オレがゴブリンの動きを教えながらの指揮だった。だが、今の状況ではすべてをサイルスさんに任せるしかないな。
「わかった。そう伝えるわ」
やはりホームに一人いてくれると動きやすいな。
「狂乱化が始まればホームに戻るのは難しくなる。お互いの気配を確認しながら動いてくれ。あと、弾の減り、気をつけててくれな」
「わかったわ。気をつけてね」
「ああ。安全第一、命大事にやるさ」
なのに、不測の事態に陥るオレの不運さよ。あのダメ女神、わざとオレの幸運値を下げてないか?
ベネリM4からP90装備に着替えてから外に出た。
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