第254話 命の粗製乱造
なんとかラザニア村に帰ってこれた。
「ハァー。酒飲んで爆睡してー」
なにこの疲れ? ゴブリン駆除より疲れたんだけど? 大したことしてないのによ……。
小屋にパイオニアを入れ、離れへ向かった。
「あ、タカトさん。お帰りなさい」
離れには少年少女たちがいて、銃の掃除をしていた。
ロンダリオさんたちがコラウスに戻ってくるのは春なので、それならここに住んでオレの手伝いをさせているのだ。
「ただいま。ミサロ、まだ唐揚げを作っているのか」
大皿に盛られた唐揚げの山。少年少女たちもギブアップしたようだ。これなら徴税人にくれてやればよかったな。あ、でも、油っこくて腹を壊すかな?
「はい。もう胃がもたれてしょうがないです」
若いとは言え、唐揚げをそう食えるわけでもない。一キロ食えたら立派なもんだろうよ。
「巨人の奥様連中がきたら出してやれ」
布を仕入れられたから下着作りや服作りで忙しく、いつもなら午前中にきてたが、今は午後の遅くにきているそうだ。それまで唐揚げが冷えてしまうが、巨人なら大した量ではない。問題なく食べてくれるだろうよ。
「終わったのは持っていくな」
立てかけられた416D三丁を持ってホームに入った。
玄関にはミサロがいて、マガジンに弾を入れていた。こいつ、なに気に仕事が早いよな。
「ご苦労様。休み休みやれよ」
「大丈夫よ。わたし、一人でコツコツやる仕事好きだから」
見た目はイケイケギャルなのに、性格は三つ編みな委員長っぽいよな。いや、イメージだけどさ。
VHS−2Dと2K、グレネードランチャーつきのを抱え、外に出る。
「これは表面だけ掃除しててくれ」
自分の使う銃は自分で手入れするが、簡単な掃除はしてもらいます。
その間にオレはP90のマガジンに弾入れだ。なに気にP90の弾入れって手間がかかるのだ。五十発入れるのはちょっとした苦行である。
じゃあ、それを少年少女にやらせろよって話だが、こいつらには銃の仕組みを覚えてもらいたいのだ。また大軍が襲ってきたときに戦力となってもらいたいんでな。
黙々と弾を入れていると、アルズライズがやってきた。
あ、そう言えば、ラザニア村に帰ってきてから見てなかったな。完全に存在を忘れてたわ。
「汚れた」
と、デザートイーグルを腰のホルスターから抜いてみせた。あ、使い方は教えたが、手入れの仕方は教えてなかったっけ。
デザートイーグルを受け取り、分解してみる。
「結構撃ったな」
煤だらけじゃん。二、三百発は撃った感じだな。練習してたのか?
「モディーグを狩っていた」
モディーグ? また魔物か? ほんと、あのダメ女神は命を粗製乱造しやがって。命をなんだと思ってんだよ、クソが!
「銃は消耗品だ。千発撃ったら新しいのを買ったほうがいいぞ」
デザートイーグルがどれくらい撃てるか知らんが、この世界にガンスミスはいないし、オレは素人。壊れる前に新しいのを買えとしか言えんよ。
「ほれ。時間ができたら掃除の仕方を教えるよ。それまでは表面や穴を拭けばいいから」
「わかった。これで弾を売ってくれ」
と、小袋を差し出し、受け取って中を見たらビー玉くらいの赤い魔石がたくさん入っていた。モディーグってヤツの魔石か?
「売ったらいくらくらいになるんだ?」
「安く叩かれても金貨三枚くらいにはなるはずだ」
「凄い大金じゃないか。普通に売ったほうがいいんじゃないのか?」
ちゃんとしたところで売ればそれ以上になるってことだろう? 金貨三枚でなにを買えるかは知らんけど。
「このくらいすぐに稼げる。だが、ゴブリンはなかなか狩れない。弾を買う金がない」
まあ、弾より菓子を買うことを優先しているんだろう。この男ならな。
「わかった。さすがに金貨三枚分の弾となると大量になるから、こちらで管理しておく。必要な分だけ渡すよ」
今はミサロがいる。弾の種類が一つ増えても問題はあるまい。
ホームに入り、デザートイーグルの弾を二百発買う。いきなり金貨三枚分(三十万円)を買っても仕方がないしな。少しずつ買えばいいだろう。
外に出て弾(箱入り)をアズルライズに渡した。
「ミロイド砦でまたゴブリンを狩るのか?」
「ああ。今回は捕獲が主だな。サイルスさんが兵士を連れてきて運ぶそうだ」
何匹運ぶかまではわからないが、兵士を動員できるなら二百匹くらいは運ぶんじゃないか? 城にそれだけ入るのかは謎だけど。
「おれもいっていいか?」
「別に構わないが、ミロンド砦のようにはならないぞ。ゴブリンも二、三百匹かもしれないしな」
「構わない。一人で探すよりお前の側にいたほうがたくさんゴブリンを狩れるからな」
オレはゴブリンホイホイか。まあ、間違ってはいないけど!
「じゃあ、好きにしな。出発は明日の朝だ。今日は館に泊まるといいい」
まだ部屋は余っているはず。なければ離れでもいいだろう。オレの部屋は使ってないしな。
「それは助かる。ところで、それはなんだ?」
唐揚げの山を指差した。
「鶏肉を油で揚げたものだよ。気になるなら食っていいぞ。酒が飲みたいなら適当に飲んでくれて構わないぞ」
食事は館で摂るようにしたが、作業場として使っているので、酒と食料は常備させているのだ。館までいくの面倒なときのためにな。
「これはいいな。いくらでもいける」
「唐揚げはハイボールがよく合うぞ。氷は自分で買ってくれな」
アルズライズの美味そうな食いっぷりに、オレもハイボールが飲みたくなってしまい、一杯だけ作って飲んでしまった。
あー、意志薄弱でごめんなさい。
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