第237話 千八百匹

 十五時三十分。KLSに跨がり出発する。


 日の入りまで二時間もないだろう。その二時間もない時間でミロンド砦に入らなくちゃならない。短期決戦だ。いや、決戦ではないけど。


 一応、KLSは二人乗りなので後ろにビシャを乗せ、砦近くまで走らせた。


「ビシャ! 一キロ先にゴブリンの群れ──いや、壁になっている! かなりの厚さだ」


「うん! ここまでゴブリンの臭いがするよ!」


 オレの嗅覚ではまったくわからんが、狂乱化したときのような気配は感じるよ。


「ビシャ、ブザーを撒け!」


 ゴブリンどもに襲撃を知らせるために防犯ブザーを大量にばら撒いてやる。


 これはこちらに集中させるもの。オレたちが囮となって他を動きやすくさせるのだ。


 ゴブリンの群れが音に気づいたようで、こちらに向かい始めた。


 KLSを道横に突っ込ませて、エンジンを切る。使い捨てにするにはもったいないのであとで回収します。


「ビシャ、道を切り開け!」


 今回は乱戦になるかもとVHS−2からP90装備に切り換え、二丁撃ちにした。


 マガジン交換は手間だけど、いっきに百発撃てるのは魅力だ。


 だったらMINIMIを使えと言われるかもしれないが、五丁のMINIMIは砦に回した。拠点防衛と援護射撃をしてもらうためにな。


 山の上にある砦へ二丁のP90を構え、百発の弾を吐き出した。


 撃ち切ったらビシャが走り出し、両手に持ったククリナイフを振るって無双開始。その間にマガジンを交換した。


 急いでもP90のマガジン交換には十五秒。二丁だから三十秒はかかってしまう。終わった頃にはゴブリンはすぐそこにいた。


 だが、砦からの射撃により、オレに襲いかかろうとしていたゴブリンが吹き飛ばされた。


 正面を見れば巨人に戻ったラダリオンがMINIMIをぶっ放していた。


 重機関銃の攻撃だな、これは!


「タカト!」


 おっと。茫然としている場合ではないな。続々と集まってくるゴブリンを薙ぎ払ってやる。


 ラダリオンの射撃から逃れたところに向けて弾を撃ち込み、砦のほうへ進んでいった。


 あっと言う間に腰につけたマガジンポーチは空になり、四百発の弾が消えてしまった。


 プレートキャリアの胸につけたホルスターからグロックを抜き、いく手を妨げるゴブリンを撃ちながら残り五十メートルを駆け抜けた。


 冒険者が避けていてくれたバリケードの隙間を通って砦に到着した。


「ビシャ、P90を使え!」


 スリングからP90を一丁外してビシャに渡し、弾入りのマガジンをありったけ取り寄せた。


 オレもすぐにマガジンを交換。押し寄せるゴブリンどもを薙ぎ払ってやった。


 狂乱化しているようで、周りが死のうが叫ぼうがゴブリンは止まらない。このままじゃジリ貧になるな。


「タカト! もうマガジンがなくなるよ!」


「あるだけ撃て!」


 さらに集まるゴブリンどもにビシャが不安の声を上げるが、オレの心に焦りはない。だってまだ最終兵器が投入されていない。


 ゴブリンどもがもう十メートルまで迫ってきたとき、横合いから炎が襲ってきた。


 まさに火炎放射。ゴブリンどもを薙ぎ払っていった。


 その間にMP9とスコーピオン、そのマガジンを取り寄せ、生きて焼かれるゴブリンどもを撃ち殺していった。


「タカト! メビとミシニーがくるよ!」


 撃ち方を止め、駆けてくる二人の援護をした。


「メビ、体力があるならカインゼルさんのほうにいってくれ! ミシニーはここを頼む」


「了解! 残りはわたしがもらうよ!」


 頼もしい酒好きエルフだよ。


「ビシャ。オレはホームにいってくる。他の援護を頼む」


「任せて。まだ稼ぎ足りないしね!」


 働き者な女子たちだよ。

 

 人の往来がないところを選んでホームに入った。


 昼間に弾薬を補給したのにMINIMIの箱マガジンはなくなり、P90は全滅。アサルトライフルのもパレットから消えていた。


「416Dもなくなっているな。ミリエルが出したのか?」


 ベネリも一丁を残して弾はすべてなくなっている。予備としているVHS−2Kは二丁残っているけど。


「ブルパップって使い難いか?」


 オレとしてはブルパップが使い易いんだがな。


 タブレットをつかみ、報酬金を見る。


「七百万円を超えたか」


 あれだけがんばっても四百万円プラスか。まあ、今から銃や弾薬を買ってマイナスになるんだけどな。ハァー。


「毎度のことながらなんのためにやっているのかわからなくなるぜ」


 稼いでは失う報酬金。あぁ、無情也~。


 箱マガジンとアサルトライフルの弾入りマガジンを五十パーセントオフシールを使ってパレット買い。P90の弾は箱で買い、作業鞄に詰め込んだ。


「やはりホームで作業してくれるヤツを捜さないとダメだな」


 さらに責任を背負うのは嫌だが、ホームに誰かいてくれないと大軍を相手にするときに補給が追いつかない。この戦いが終わったら真剣に考えよう。


 空になっているリヤカーに弾薬を積み込んで外に出た。


 三十分くらいホームにいたのに銃声やゴブリンの数が大して減っていない。


 ──ピローン!


 また電子音が頭の中に鳴り響いた。


 ──一万二千匹突破だよ!  ちなみに砦を囲んでいるゴブリンは約千八百匹。ファイトだぜ!


「…………」


 もう一度ホームに戻った。


 前から買おうと思っていたリボルバーのグレネードランチャーを購入するために……。

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