第216話 レミントンM870

 十時くらいに皆を集めてミーティングを行った。


 職員も集めて山黒との戦いの状況を語り、ホワイトボードを使って説明する。


 これは情報の共有であり、少年少女たちの教育でもある。状況把握能力の向上、全体を考えられる思考など身につけさせておきたい。使い捨ては一番の愚行。長く使ってこそオレのためになるのだ。


 ミーティングが終われば昼飯となり、なんかデカいパンが運ばれてきた。


「窯、できたんだ」


「はい。巨人の奥さん方が作ってくれてます」


 あぁ、巨人用の窯だから一メートルサイズのパンになるのか。つーか、一メートルサイズのパンとか何人前だ? 食い切れんのか?


 なんて心配は無用で、一メートルサイズのパンが二個、消費されました。


「小麦粉の量もハンパなさそうだな」


 小麦粉はオレたちが供給して、腕輪の力で大きくしている。三十キロ袋が百五十キロくらいになるからとんでもない量だ。十袋も買ったら……どうなるんだ? 凄いことになるってのは想像つくけど。


「巨人たちは喜んでますね。パンを毎日食べられることはなかったですから」


「毎日食ってたらコラウスは食料不足に陥ってるな」


 コラウスに何人の巨人がいるかわからんが、小麦粉の量もハンパないことになるだろうし、窯で焼くのも大変だ。薪の消費もエゲつないことになるだろうよ。


「だからマスターになにかあれば自分らの生活に関わってくる。巨人たちがマスターを大事にする理由です」


 これは打算ではない。オレと巨人たちとの共存。持ちつ持たれつだ。


 昼飯が終わったらシエイラと少年少女たちに銃の訓練をさせる。


 館はまだ建設中で、巨人の職人や人間の職人も出入りしている。安全を考えて森の奥へ入った。


「お前たち。ちょっとここら辺を刈り取れ」


 ちょうどいい傾斜があったのでここを射撃訓練場所とした。


 五千円くらいのマチェットを買わせ、周辺を生い茂る雑草や枝葉を刈り取った。


「まあ、こんなもんでいいだろう」


 ホームから折り畳みテーブルとグロックの弾を持ってきた。


「これはグロック17。拳銃だ。弾は十七発。一発装填すれば十八発になるが、安全を考えて十七発にしておく」


 簡単な説明をして、マガジンを抜かせて弾をすべて抜き、弾の入れ方を教える。


 シエイラにもオレのを渡してやらせ、少女たちにもやらせた。


 あるていど慣れてきたらシエイラに一発だけマガジンに入れさせ、銃に挿入。スライドさせて弾を装填。構えを教えて撃たせた。


 これを二十回繰り返したら五発に増やし、十回繰り返させた。


「……気持ちいいですね……」


 快感とばかりに色っぽく頬を染めるシエイラ。Sっ気に刺さったか?


「まあ、一発三十円だから毎回はさせてやれんけどな」


 なにかシエイラにやらせたら破産するくらい撃ちそうだ。


「よし。次は手入れだ」


 マガジンを抜き、弾が入ってないことを確認させたら分解させてグロックを掃除させた。


 少年たちに貸したグロックは回収し、折り畳みテーブルと一緒にホームへ片付けた。


「じゃあ、次はゴブリンを殺すか」


 ゴブリンを閉じ込めている檻に向かうと、なんかゴブリンが増えていた。あれ? 捕らえたの十二匹じゃなかったっけ? 二十匹くらいに増えてんだけど。


「わたしが捕まえてきたんだよ」


 と、ミシニーが現れた。君はもっと音を立てて近づいてきてくれよ。


「いつの間に?」


「街から帰るついでに捕まえたのさ。わたしもセフティーブレットの一員だからな」


 なにか一員を強調するミシニーさん。別に捕まえなくともギルドの一員だろうに。


「あ、ああ。ありがとな。助かるよ」


 どんな心情かは知らんが、捕まえてきてくれたことには感謝しかない。ゴブリンを運ぶの大変だからな。


「シエイラ。あとでミシニーに捕獲の報酬を払っておいてくれ。えーと、八匹分な。捕らえた場所と数を記録を残しておいてくれ」


 捕獲報酬は一匹銅貨五枚と決めました。


「はい、わかりました」


 記録はちゃんと残して今後のために活かしていこう。


 音を立てることを周囲の者に伝え、檻に近づかないようにしてからシエイラにゴブリンを撃たせた。


「ふふっ。いいですね」


 変な快楽を目覚めさせて夜な夜な出歩かないでくれよ。ギルドから快楽殺人者が出たら困るからさ。


「請負員カードを確かめてみろ」


 入ってることはわかるが、ちゃんと自分の目で確かめるほうが実感が持てるだろうよ。


「入ってます。えーと、いくらになるんですか?」


 元冒険者ギルドの才女でも地球の数字はまだ覚えられないか。


「二十匹だから七万円だ。試しになにか買ってみるか。ミシニー。下着の買方を教えてやってくれ」


 女ならまずは下着から買っていくほうが七万円の価値がわかっていくだろう。適当な考えだけど。


「タカトの好みを教えておくのか?」


「オレはお前に下着の好みなんて言ってないだろうが! 自分の好みのを買え!」


 幼気な少年少女がいるんだから卑猥なこと言うな。教育上、悪いだろうが。

 

「お前たち。ゴブリンを片付けるの手伝ってくれ」


 まったく、捕まえるのも片付けるのも一苦労だよ。片付ける者も雇ったほうがいいかもしれんな。


 片付けが終わり、館の前の庭で一休みすることにする。


「タカトさん。おれらの報酬でグロックって買えますか?」


「まあ、買えるとは思うが、なにも銃を持たなくてもいいだろう。弓を覚えたほうが安上がりだぞ」


 ましてや駆け出しに銃は出費がデカすぎるぞ。


「おれたちそんなに弓の腕はありませんし、逃げるゴブリンには銃がいいと思うんです」


 考えなしに、ってわけじゃなさそうだな。


「ちょっと請負員カードを見せろ」


 ミギスから請負員カードを受け取り、金額を見る。八万と五百円か。あのとき結構駆除してたんだな。もう記憶にも残ってないわ。


「ゴブリン駆除をするならショットガンを買っておけ。そうだな。二人がショットガンを買って、残りはグロックを買うようにしろ。五人で動くならな」


 個人で動くならショットガンとグロックを装備したほうがいいが、チームで動くなら前衛と後衛にわけて動いたほうがいいだろう。リョウナとルカは元々後衛なんだから弾の節約もできるはずだ。


 五人にはなんのショットガンがいいかわからないだろうからオレが選んでやった。


 レミントンM870。最初、安さに怖じ気づいていたが、雑誌に安く丈夫と書いてあった。これなら長いこと使えるだろう。弾も一発三十円と安いしな。


 ラズルとボブスに四万五千円のを買わせ、残り三人にはグロック17を。弾は今後の期待を込めて二百発ずつくれてやった。


「練習してこい! 明日を担う少年少女たちよ!」


 扱い方を教えたらそう激を飛ばしてやった。

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