第217話 提言
健康的な日々が続いている。
のはいいんだが、その分、蓄えは減っていっていく恐怖を感じています。オレはゴブリン駆除しないと生きられない体となってしまったようだ。
「マスター。山黒の探索、終了するとのことです」
館にある食堂で職員に銃の手入れを教えてたらシエイラがやってきた。
「随分長いことやってたな」
山黒を倒してから十四日。いくつもの冒険者チームが投入され、広範囲を探っていたっけ。
「山黒は災害指定の魔物ですからね。一匹現れただけで大騒ぎになります。以前、山黒の目撃情報がありミシニーたちを探索に出させましたから」
あーあれ、そう言う目的できてたんだ。山黒探しにきてゴブリンに食われるとか哀れだよ。
「じゃあ、冒険者ギルドとしてはいないと判断したわけだ」
「しばらくは警戒するよう徹底させるとは思いますが、これ以上、山黒に人を割くと冒険者も暮らしていけませんからね」
なんでも冬を越すために実力のある冒険者は雪の少ない領地に移動するとか。移動できない冒険者は町に移動して枯れ木を集めたりして生き抜くそうだ。
「冬は魔物は出ないのか?」
「魔物も冬を越すのは大変ですからね。暖かい地に移動します」
「そう考えるとゴブリンの生命力は異常だな。あの寒さを乗り越えられるんだから」
毛が生えているのは腰回りで、なにか羽織ることもなく、ガリガリに痩せ細っても生きているとか異常だろう。なんか秘密があるのか?
「冬もゴブリン駆除をするのですか?」
「あいつらは冬でも行動はするからな。それに、巣を探して爆発させれば苦もなく駆除できる。駆除員にしたら書き入れ時さ」
手榴弾一つで三から五匹は駆除できる。手間と言ったら移動するくらいだ。今回はアポートウォッチがあるからホームに取りに戻らなくてもいいんだから苦になるものか。今年はたくさん駆除してやるぜ。
「そのときはわたしも連れてってくださいね。必要なものを揃えるだけでほとんどの報酬金を使ってしまったので」
「マスター。我々もお願いします。シエイラばかりズルいです」
なんて他の職員からも突っ突かれてしまう始末。この世からゴブリンが駆除されるのは嬉しいが、苦労も増えていくとか堪らんわ……。
「我々もゴブリン大駆除作戦に参加できないんでしょうか?」
「あまり参加させると分け前が減るからな~」
仮にゴブリンが二千匹集められるとしても参加させる請負員で割れば一人二百匹くらい。三千五百円×二百で……七十万円か?
それはそれで大金ではあるが、元の世界の品を覚えてしまったらあっと言う間に消えてしまう金額だ。さらに職員を参加させたら五十万円もいかなくなるだろうよ。それじゃ簡易砦を築いて、弾薬、食料の出費を引いたら赤字になるわ。
「でしたら二ヶ所、いえ、三ヶ所でやるのはどうでしょうか?」
とは、職員の一人で、確か、ロットと言ったか? 二十半ばの男で、冒険者ギルドでは魔物の解体を主にやっていたそうだ。
「三ヶ所で?」
「はい。ゴブリン大駆除作戦にはサイルス様やミシニー様、アルズライズ様と言った実力者が三人も参加するんです。それを一つに投入するのはもったいないですよ」
動機理由はアレだが、確かにあの三人を一つに投入は贅沢の極まりか。つーか、あの三人ですべてを壊滅させそうだな。他の請負員が不満に思うぞ。
「とは言え、今さら増やす時間もないだろう」
館が完成したので巨人たちには簡易砦造りをお願いした。さらに二ヶ所も、は無理だろう。
「それなのですが、マルスの町からさらに西にいったところに昔に築かれた砦があるんです。何十年か前に廃棄にされましたが、魔物から身を守る場所。そう崩れてはいないはずです。そこに巨人を向かわせたら修繕も楽なのではないでしょうか?」
「その流れからしてもう一つ、砦があると?」
三ヶ所と言ったからには廃棄された砦がもう一つあるってことだ。
「はい。リハルの町から二日くらい歩いた場所にあり
ます。そこはカインゼル様が詳しいと思います。初めて赴任したところがそこなはずですから」
「……ロットは、随分と詳しいんだな」
「冒険者ギルドで働いていたらわかることばかりですよ」
そうなのか? と、シエイラを見た。
「まあ、知ってはいますが、提言できるのはロットだからでしょう。この男は情報通ですから」
「じゃあ、なんで解体やってた? 情報屋をやれよ」
「解体のほうが給金がいいし、余った肉は持ち帰れるので」
あ、うん、そうですか。まあ、人ぞれぞれの事情。オレがどうこう言っても仕方がないね。
「うーん。まずはその砦が使えるかどうかを調べる必要があるか」
いきなりいって使えませんでは困るからな。
「まずは会議だ。その砦の情報を可能な限り集めてくれ」
「わかりました。各冒険者ギルド支部から情報を集めます」
「マスター。パイオニア、使わせてください」
「おれも乗りたいです!」
「と言うか、職員用に買ってください!」
男の職員がおれもおれもとパイオニアに乗りたいと騒ぎ出す。
「パイオニアは高いんだぞ。そう簡単に買えんよ」
「なら、巨人の子供が使っていた乗り物を買ってください!」
自転車、ね。まあ、自転車ならそう高くはないか。練習用に二万円くらいのマウンテンバイク二台買って様子をみるか。
とりあえず、やる気のある職員に乗り方を教え、二時間くらい付き合っていたらカインゼルさんがウルヴァリンで帰ってきた。
「カインゼルさん。ゴブリン大駆除作戦のことで話があるんですが、今からいいですか?」
「ああ、構わんぞ」
ってことで食堂に移り、ロットが提言をカインゼルさんに語った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます