第215話 シエイラ館長
夕方になってカインゼルさんたちが帰ってきた。
「今日はゆっくり休んで明日ミーティングしましょう」
四人とも疲れている感じなので、すべては明日と言うことにした。
館の風呂は完成したので女子組を風呂に入れ、カインゼルさんはサウナへ入った。
上がってきたら夕飯だ。館の食堂に集まった順に料理人夫婦が作ったミスズ料理をいただき始める。
館の食堂は二十人は入れる造りなので、少年少女たちや冒険者ギルドの職員にも使ってもらっている。
今はまだなあなあの関係でいいだろう。ゴブリン駆除ギルドは組織としてはまだ未熟であり、個人の域に入っている。資金はオレらが稼いだもので回している。それに、税金も優遇されている。細かいことはもっと大きくなってからで構わないさ。
夕飯が終われば館のことはシエイラに任せ、オレはホームに戻る。ミリエルにちゃんと休めと突っ突かれたからだ。
なにもそこまでとは思ったが、ジャパニーなウイスキーのヨイチさんをストレートで飲むのを許してもらってから眠りについた。
美味い酒を飲み、心配事もなく眠ったあとの気持ちいい起床なことよ。今度はヒビキさんを飲めるようがんばろうと思えるぜ。
「……七時か……」
九時前には横になったのに十時間も眠ってしまった。そりゃ、気持ちよく目覚めるわけだよ。
ラダリオンやミリエルはとっくに起きたのか、中央ルームにはおらず、テーブルには料理が並べてあった。
「なんか堕落しそうだな」
タブレットを扱えるようになったからか、食事の用意はミリエルがやっている。ここで甘えたらオレはダメな大人になる未来しかない。と言うか、ミリエルの尻に敷かれそうで怖い。
「両脚を失っても生き抜いてきたヤツは強いよな」
オレなら絶望してこの世から旅立ってるところだ。
用意してある料理を食べたら少し休み、玄関の状況を確認する。
P90の空マガジンやアサルトライフル系の空マガジンがコンテナボックスに入っており、山黒との戦いの激しさを物語っていた。
「リンクスのマガジン、回収しなかったな」
対物ライフルは弾だけじゃなくマガジンも高い。ほんと、損しかしない戦いだったよ。
G3のマガジンもコンテナボックスに入っており、バレットだけでは倒し切れなかったようだ。
「報酬金も残り四百三十万円か」
ライダンドから帰ってきてかなり稼いだと思ったが、やはり請負員の上前だけじゃ維持管理に使うだけで精一杯か……。
請負員がゴブリン百匹駆除しても入ってくるのは十五万円だけ。アサルトライフル一丁買えるかどうかだ。
オレら駆除員が稼がないと貯蓄もできない。ゴブリン大駆除作戦は数を絞る必要がありそうだな。
「MINIMIの弾も買っておかないとダメか」
溢れたときは二百発撃てるMINIMIは重宝する。てか、手入れする銃がいっぱいあるな。触ってないものもある。ミーティングが終わったら手入れを兼ねて触ってないものを触っておくか。
ミリエルが動けるようになったはいいが、やはりホームにいてくれる要員は必要だ。どこかに閉じ籠ってるの好きっヤツいないかね?
腰回りの装備をしたら五丁のMINIMIを手に取っていき、使わなそうな銃を適当に触ってから外に出た。
ホームに入ったのは館の一室。ホームから出したものを一時保管させておく倉庫だ。
「調味料も地味に消費されてんな」
人が多いから消費が激しいのはしょうがないが、辺境じゃ塩も高く、砂糖なんか百グラムくらいで銀貨一枚するらしい。コストを考えたらタブレットで買ったほうが安上がりだろう。
ギルドを立ち上げたのがよかったのか悪かったのか。減っていく金を見たらわからなくなってくるよ。
倉庫から出て、まずは一階の仕事場へ。
まあ、仕事場とは言ってもまだ形にもなってないから仕事らしい仕事はないが、それまでは職員が集まる場所をミーティング室とした。
「マスター。おはようございます」
ミーティング室にシエイラと職員がいて、ダインさんから買った羊皮紙になにか書いていた。
「ああ、おはよう。凄い数の羊皮紙だな」
「紙は高いですからね。羊皮紙や板を使うしかないんです」
一応、紙はあるんだ。そんな世界でよく組織を運営できるよな。パソコンで日報やメールをしていた現代人には想像もつかないよ。
「引退した冒険者を雇えるか? 領内のゴブリン情報を探ったり、領外の情報を仕入れたりしたいんだが?」
「さらに資金を必要としますが、大丈夫ですか?」
「そこはがんばって稼ぐよ」
もうそうとしか言いようがない。この商売、計画なんて立てようがないんだからよ。立てられるって言うなら当ギルドへお越しくださいませ。
「わかりました。何人か心当たりがありますので声をかけておきます」
「頼むよ。あ、捕まえたゴブリン、まずはシエイラが殺してくれ」
館長として必要なものを買い揃えたりすることもあるだろう。シエイラには一番金を持っていてもらうとしよう。
「わかりました。ただ、わたし、剣を持ったことがないので銃を使ってよろしいでしょうか?」
剣を持ったことないのに銃は飛躍しすぎじゃないか? いや、オレもいきなり銃を使った口だがよ。
「じゃあ、練習してからにしよう。扱いを間違えると危険だからな」
そういや、少年に貸したグロックを返してもらってなかったっけ。ついでだ。少年少女たちにも銃の練習をさせておこう。あの五人は見所がある。鍛えて立派なゴブリン請負員に育てるとしよう。
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