第210話 山黒襲来
無駄な努力とばかりに害獣ネットが破られた。
「ゴルグ! やれ!」
なにをと言う暇はない。リンクスからVHS−2に持ち換え、ネットを破いたミスズに銃口を向けて引き金を引いた。
全弾撃ち尽くしたらマガジン交換。銃口をネットに向けてまた全弾を撃ち尽くした。
「金にならん戦いだ!」
だからと言って放り出すわけにもいかない。ミスズの被害が出たらコラウスが大打撃を受ける。そうなったらこちらの計画も大打撃を受けるのだ、気を引き締めてやれ、だ。
巨人たちも持っていた斧や棒でミスズを振るい払っている。これは下がらないとこっちの身も危ないな。
またリンクスに持ち換え、ここはゴルグたちに任せて一旦下がる。
「ライドさん!」
司令部にはライドさんと少年少女たち。あと、二十代くらいの男女がいた。身軽な格好をしているところを見ると伝令か?
「追い立て役には指示を出しました」
「ラダリオン、ホームで待機しててくれ!」
巨人のままでいるラダリオンをホームに戻した。
「ライドさん。追い立て役とともに移動してください。オレらはここに止まりますんで。あちこちの指揮をお願いします」
すべてが迎え役に逃げたわけじゃないだろうし、群れから外れたのがこちらにくるかもしれない。残る者は必要だろう。
「わかりました。あ、これを」
方位磁石をライドさんに渡した。地元民なら方角さえわかれば迷うこともないだろう。
「ありがとうございます。応援がくるでしょうが、それはタカトさんが指揮してください。ミルディを残していきますので」
身軽な格好をした女性がミルディのようだ。
「わかりました。気をつけて」
ライドさんたちが移動し、少年少女たちを残してまたゴルグたちのところへ向かった。
ミスズは移動したようで、巨人たちが息を切らしながら休んでいた。
「ゴルグ! 休んだらミスズを集めて運べ! 血が固まる前に解体してしまえ!」
解体などしたことないが、血抜きをすることは知っている。さっさと集めて村に運んだほうがいいはずだ、
「まったく、お前がきてから忙しくてしょうがないよ」
「でも、美味い酒が飲めるようになったろう? 迷惑だったか?」
巨人の酒の消費量は増えたはず。もう飲めなくなりましたって言ってたら暴れ出すのに百万円賭けるぜ。
「ハァー。迷惑じゃないよ。お前がきてくれたことには感謝しかないさ」
そう言ってもらえるとこちらも嬉しいよ。巨人には味方でいて欲しいからな。
「タカト! ミリエルから連絡! 山黒が出た!」
山黒? って前に聞いたな。なんだっけ?
「簡単に言えば熊のような魔物だ。大きいのとなればおれらくらいのものになる」
うん。それはもう怪獣じゃん。人がどうこうできるレベルを超えてるじゃん。ゲートを開けよ。自衛隊を召集しろよ。それか光の巨人を呼んでくれ!
「ラダリオン! ホームからショットガンと弾を持ってきてゴルグに渡せ! ゴルグはカインゼルさんたちの援護をしてくれ!」
「山黒は番で動く。ラダリオン、あっちは何匹現れたと言っていた?」
「二匹。大きいのと小さいの」
「子がいるなら確実に番だ! 親のどちらかがどこかにいるぞ!」
この流れからして近くにいるのは確実だろう。まあ、いないでくれたら最高なんだけどな!
「いくならラダリオンをいかせろ。オレらじゃ連携が取れん。下手したら踏み潰してしまうからな」
ラダリオンにはいて欲しいが、巨人は八人いる。ゴルグにショットガンを渡せば山黒くらい倒せるか。他も報酬として渡した斧やナイフなんかを持っている。これで倒せないようではラダリオンがいても同じだろう。
「よし。ラダリオンはカインゼルさんたちのところへ頼む!」
「無茶しないでね」
「巨人の足元で無茶のしようもないよ。離れたところから援護に徹するさ」
中に入って戦えとかなんの地獄だよ? やれと命令されても全力で拒否するわ。
「ゴルグ、タカトに無茶させないで」
「ああ、わかってる。タカトになにかあれば女たちになに言われるかわからんからな」
はぁ? なんで女たちに怒られるんだ?
「タカト、絶対無茶しないでね」
「わかってる。無茶はしないよ」
無茶はしないけど、無茶させられるのは不可抗力ってことでお願いします。
ホームからベネリM4と弾を詰めたダンプポーチを持ってきたらまったく信用されてない顔をしながら駆けていった。オレ、信用ゼ~ロ~。
「おい! 獣の臭いだ! 近づいてくるぞ!」
ラダリオンと同じく嗅覚に優れた巨人がいたようで、警戒の声を上げた。
「皆、広がれ! おれの前に立つんじゃないぞ!」
木工職人もゴブリン駆除を経て立派な請負員となっているようだ。
「タカトは下がれ! 流れ弾に当たるなよ!」
そこは気をつけて撃って欲しいんですけど。
まあ、ゴルグたちも山黒と戦うことで必死なんだろうから、こちらが気をつけるとしよう。
「無茶をしてでも生きて勝つんだからな! お前らになにかあればそれこそオレが嫁たちから怒られるんだからよ!」
「アハハ! お互い嫁が怖いとおちおち死んでられんな!」
「まったくだ!」
ガハハと笑う野郎ども。皆妻帯者かよ。
「爆発しろ、リア充ども!」
独身者のひがみを叫んでその場から逃げ出した。
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