第204話 少年少女
館を調えることに励んでいると、懐かしい少年三人組と同年代の女の子が二人、やってきた。
「ミギスにラズルにボブス、だっけか?」
「はい。あのときはありがとうございました!」
おー。我ながらよく覚えていたもんだ。一泊二日の関係だったのにな。
「礼儀正しいな。さすがロンダリオさんについているだけはある」
ライダンドの三人組とは大違いだ。ロンダリオさんたちからよく教育されてるんだろうな。
「そんで、今日はどうした? なにかの依頼できたのか?」
「いえ、おれたちもゴブリン駆除の請負員にしてください」
ってなことを言うラズル。こいつがリーダー格か。
「もうマルスの町まで伝わってるのか。こちらは構わないが、ロンダリオさんたちはいいのか?」
専属、ってわけじゃなかったが、可愛がってもらってたのは確か。荷物運びとしてもついてたのに、離れたりしてもいいのか?
「ロンダリオさんたちからも請負員になれと勧められました。一緒に行動するならなっていたほうが得だと」
あーまあ、確かに予備としていればロンダリオさんたちも戦闘の幅が広がるか。それに、ゴブリンを駆除させて金を入れておけば食料を買わせることもできるしな。
「わかった。お前たちを請負員としよう。シエイラ、すまないがこいつらの名簿を作ってくれ。請負員としたら少しゴブリン駆除をしてくるよ」
「わかりました。できれば何匹か捕まえてきてください。わたしも請負員になっておきたいので」
あーそうだな。ギルドで働いている者が請負員になってないのも変だよな。やるやらないは別として全員を請負員にしておくか。
「じゃあ、ミリエルを連れていくか」
さすがにオレ一人じゃ一匹も捕まえられない。眠らせ担当を連れていくとしよう。
訓練していたミリエルに声をかけ、ゴブリン駆除の支度をする。
VHS−2装備にして館に戻ってくると、三人の名簿は完成しており、請負員カードを作って渡した。
「お前たち、二日くらい帰らなくても大丈夫か? 大丈夫なら泊まりでゴブリン駆除に出かけるが」
「大丈夫です! ロンダリオさんたち、依頼でライダンドにいきましたから」
へー。ロンダリオさんたちもライダンドにいったんだ。まあ、ゴブリン駆除ばかりしてられんか。銀印として通常依頼をこなさないといかん立場だしな。
「じゃあ、いくぞ。ミリエルのほうに──って、まだそっちの子らの名前、聞いてなかったな」
女の子が二人いたの忘れてたよ。
「リョウナです」
「ルカです」
弓矢を持った子がリョウナで、魔法使いっぽい格好をしたのがルカだ。
「リョウナはオレたちの幼馴染みでルカはゾラさんの娘です」
「ゾラさん、娘いたんだ!?」
年齢的にいたって不思議じゃない年齢だったが、まさか子供がいるとは夢にも思わなかった。冒険者しながら子育てしてたのか?
「父がお世話になりました。娘のルカです」
「いや、こちらこそ世話になったよ。ルカも魔法使いなのか?」
「はい。父について学んでいます」
へー。親子でありながら師弟でもあるのか。なんかドラマみたいなシチュエーションだな。
「どんな魔法が使えるんだ?」
「主に風の魔法を使いますが、魔物には火矢や魔矢を使うことが多いです」
そういや、ゾラさんも使ってたっけ。やはり後方支援は矢とかになるんだな。
いろいろ魔法のことを訊きたいが、館はまだ調っていない。少年少女たちの教育と請負員の初仕事をさせるとしよう。
一号のほうにトレーラーを取りつけ、少年たちを乗せて出発する。
「どこにいくんですか?」
「ラザニア村の奥だ」
最近知ったのだが、オレとラダリオンが会った廃村は、ラザニア村から通じており、その道があった。
まあ、何十年と人の往来がなくなったから道は荒れ放題で崩れているところもあるが、手の空いている巨人を雇って修繕してもらっているよ。
二日前くらいからだからそんなに進んではないと思ったら十キロは軽く進んでいた。まったく、巨人の仕事の早さ、尋常じゃないな。
「ラダリオン!」
修繕にはラダリオンとマルグについてもらい、護衛を兼ねてゴブリン駆除をやってもらってるのだ。
「どうしたの?」
森の中に入っていると思ったら大木を使って地固め(?)していた。
「こいつらを請負員にしたからゴブリン駆除の研修だ」
小さくなったラダリオンに説明する。
「マルグは?」
「さっき鹿がいたから狩りにいった」
六歳を一人でいかせて大丈夫かと思ったら、ちゃんと弓を使える大人が一人ついていったそうだ。
マルグの気配は強く感じる。ざっと二キロってところにいるな。まあ、巨人の足なら二キロなんて近場だろう。
パイオニアを開けた場所に停め、マルグがいるほうとは反対の山へ入ることにした。
まあ、入ると言ってもミリエルがいるので山一つ越えるくらいで、ゴブリンを引き寄せることにする。
少年少女たちに処理肉をばら蒔かせ、待つこと一時間。周囲からゴブリンが続々と集まってくるのを感じ取れた。
ミリエルを木に登らせ、周辺に処理肉をばら蒔く。
「ミリエル、頼むぞ」
「はい。お任せください」
オレらは一旦その場から離れる。
ミリエルの眠りの魔法は思った以上に強力で、本気を出すと見境がない。半径十五メートル内にいたら仲間ですら眠らせてしまうのだ。さらに魔石を使えば三十メートルまでいけるとか、実験に協力してくださった方々に最大の謝意を送ります。
安全を考えて五十メートル離れ、少年少女たちを散会させる。
ミリエルの周りにゴブリンが集まり出し、いい感じになったら合図の笛を吹いた。
ミリエルの眠りの魔法が放たれたのか、ゴブリンの気配が波紋を打つように小さくなっていった。
「眠らなかったゴブリンを速やかに狩れ! まだ眠りの魔法が発動してるから効果内には入るなよ!」
眠りの持続時間は五から六分。効果内に入ると眠ってしまうのだ。
オレも気をつけながら狂乱化しないようシュールストレミングを取り寄せて臭いを上書きした。
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