第190話 巨人の事情
外が凄い変わりようだった。
昨日は暗くてなんかあるな~って感じだったが、なかなか立派な木造の館が建てられ、巨人サイズの倉庫と館と同じサイズの建物が館の奥に建てられていた。なにあれ?
巨人がバラけて作業をしており、なんだか東武ワールドスクウェアを思い浮かべる光景であった。いや、いったことないけど。
「タカト、起きたか」
ぼんやり眺めてたらゴルグが現れた。
「ああ。ゴルグも手伝ってるのか?」
「嫁の親がきてなにもしないわけにはいかんだろう。世話になった人でもあるんだからな」
巨人もそう言う義父に気遣う的なものがあるんだ。結婚したことない者にはよくわからんけど。
「しかし、十日くらいでここまで造れるとか巨人の技術って凄いのな」
あの巨大な手で繊細な仕事をする。まあ、人間もドールハウスを作るんだから巨人にできないってことはないか。
「まあ、報酬が報酬だからな。他の職人も手伝わせてくれとやってきてるんだよ」
「大工道具って街にいけば売ってるものか?」
まだ買ってなかったよ。明日辺り買いにいかなくちゃならんな。
「それなら買っておいて、ラダリオンにデカくしてもらったよ。代金は布と交換してもらった」
「布なんかで足りるのか?」
明らかに釣り合わないよな?
「そこはロミーに任せてある。あとでミリエルにでも訊いてくれ」
まあ、ミリエルに任せたなら問題なかろう。そう言うのは女同士のほうが話が通じるだろうからな。
「ロミーの親父さんに会わせてくれ。頼んだ者として挨拶しておきたいからよ」
「終わってから紹介するよ。昔気質の人だから仕事中に声をかけると怒られるんでな」
ファンタジーな世界でもジェネレーションギャップってもんはあるんだな。不思議な気分だ。
「じゃあ、そうするよ。親父さんらはここに泊まってるのか?」
なにか巨大な布が張られており、簡易の釜戸ができていた。
「親父さんと数人の職人は寝泊まりして、何人かは通いだ。あちらでも作業してるからな」
「なんか随分と本格的だな。簡単に頼んでしまったのが申し訳ないよ」
「気にしなくていいさ。気前のいい報酬に食事と酒まで出してくれる依頼人なんてそういないからな。なにより好きに造っていいんだから張り切りもするさ」
そんなもんなのかね? 職人の気持ちはオレにはわからんよ。
「まあ、いいもの造ってくれるなら好きにしていいさ」
建築のことなんてさっぱりわからん。なら、専門家に任せるほうがいいだろう。報酬も腕輪の力を使えば大した出費ではない。あんな館、元の世界で建てたら軽く億はかかる。下手したらうん十億はかかるかもしれん。それが金貨一枚くらいの出費で建てられるんだから大儲けでしかないわ。
やがて仕事終了の時間になり、片付けを終えた親父さんたち職人がやってきた。
「どうも、タカトです。今回は仕事を受けてくださりありがとうございます」
「お前さんがタカトかい。こっちこそ割りのいい仕事をありがとな。特に女たちが喜んでるよ。布はなかなか手に入らんものだからな」
「それならまた仕事をお願いしますよ。森の奥に訓練用の広場を造ろうと考えてるので」
「急ぎか?」
「いえ、そう急ぎではないですよ。まだゴブリン請負員を勧誘してないので。まあ、来年くらいですかね」
こちらには領主代理が味方についている。こちらを利用するなら森の利用を許してもらっても罰は当たらないだろう。しかも、コラウスは巨人といい関係を築く政策(?)をしている。反対されるどころか容認してくれるはずだ。金はこちらが出すんだからな。
「そうか。そのときは呼んでくれ。ここ数年、仕事が減る一方なんでな」
巨人がいるならやれることはいっぱいあるだろうに、なに持て余してるんだ? あの領主代理なら巨人を蔑ろにしたりしないと思うんだがな?
「人が余ってるので?」
「そうだな。数年前から仕事が何日もないことはある。城壁補修の間隔も長くなってきたからな」
「もし、手が空いてる者がいたら五人ばかり貸してもらえませんか? 森の奥、二、三日くらい入ったところに簡易砦を築きたいんですよ。その間の食事はこちらで用意します。報酬は……なにがいいですかね?」
ゴブリンを集めるための簡易砦だから一月くらい拘束してしまうだろうし、それを布で払ったらとんでもない量になる。そんな量、処理し切れないだろうよ。
「一日銀貨一枚で雇ってくれるだけで充分さ」
「ちょっと疑問なんですが、巨人も人間の金を使うんですか? あの小さなものを?」
人間の手にたとえるならビーズ一粒くらいのサイズだ。使って使えないことはないだろうが、オレならなくす自信があるぞ。
「街の巨人には金を管理する人間を雇ってるんだよ。物を買うときはそいつに言って買ってもらったりするのさ」
とはゴルグ。巨人が街で暮らす知恵、ってヤツかな?
「今回は現物支給だから連れてはこなかったのさ」
「なるほど。じゃあ、その人に渡せばいいので?」
「そうだな。今度、連れてくる」
オレも資金管理してくれるヤツを雇ったほうがいいかもしれんな。ギルドマスターに相談するか。
なんてこと考えてたらそのギルドマスターやってきた。
「じゃあ、しっかり食べてまた明日お願いします」
そう告げてやってきたギルドマスターを迎えた。
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