第183話 クジと言うかガチャ
目覚めたら十二時を過ぎていた。
「……がっつり眠っちまったな……」
マットレスの上でぼんやりしてたら玄関からミリエルがやってきた。二足歩行で。
いや、四足歩行から二足歩行に進化したわけじゃなく、昨日まで脛までしかなかったのにだ。
「……ミリエル、どうしたんだ……?」
「マーヌの魔石を使って足を回復させました」
あーそういや二十匹のマーヌから魔石を取ったっけな。あれだけあれば足の一本や二本、回復できるか。いや、よく知らんけど。
「そうか。よかったな」
「はい。でも、まだ上手く歩けないんですけどね」
そうなんだ。魔法もそこまで優秀ではないんだな。
「練習していけば歩けるんなら無理することないさ。ミリエルはまだ若いんだからな」
十代で脚をなくす悲劇はあったものの、ミリエルの人生はこれから。取り返せる年齢だ。無理をする必要はないさ。
「ライダンドから帰ってきたらお祝いしようか。ビシャとも約束したしな」
また高級焼き肉店の肉と一流ホテルのケーキをたくさん用意してやろう。
「はい。楽しみです」
「でも、その前に腹を満たすとしよう。昨日からなにも食ってないから腹が減って仕方がないよ」
寝起きだってのに肉が無性に食いたくてしょうがない。昼はカツ丼大盛に豚汁にしよう。
タブレットでどこの店のカツ丼にしようかと悩んでいたらラダリオンがやってきた。
「おはよーさん。外はどうだ?」
「じいちゃんはサウナ。ビシャとメビはDVD観てる」
言葉が通じんのにDVD観て楽しめるのか? まあ、ラダリオンは猫とネズミのドタバタアニメやア○パ○マンは楽しく観てたけどさ。
「昼はカツ丼でいいか?」
「うん。二人は勝手に食べるって」
なら、三人分でいいな。とりあえず十杯買って、足りなければまた買えばいいな。
三人で昼飯を摂り、少し食休みしたらシャワーを浴びてビールを一缶飲むことを許したまえ。あーうめ~ん。
座椅子に座り、タブレットをつかんでクジを引くことにした。
タブレットのホーム画面(?)に『女神クジ』と書かれたアプリみたいなのが写っている。それをタップするとダメ女神のデフォな絵にガシャポンが写し出された。
「無駄に凝ってんな」
そこに力を使うならもっとこっちに還元しろや。
ガシャポンをタップすると、ダメ女神が踊り出し、無駄に五秒も見せられてからハンドルを回した。スキップはないのか? あ、あったよ。
「ヒートソードだよ!」
目の前の空間に宝箱が現れ、触れたら宝箱が輝いて鞘に収まったヒートソードとやらが現れた。
刃渡り六十センチくらいの両刃の剣で、刃先が最大二千度までなるそうだ。ただ、最大にすると十分しか稼働しないんだってさ。
「もうフォースなソードを寄越せよ」
二千度って言ってたってスパスパ斬れるわけじゃあるまいて。だったらスタンガンのほうが使い勝手がいいわ。
「しかし、なぜに乾電池仕様なんだろうな?」
単一電池三本で二千度まで出せる技術ってなんだよ? どこの科学文明だよ? 使い方よりそっちのほうが気になるわ!
いやまあ、ダメ女神の考えなどわかるわけもなし。そういうものだと流しておけだ。
二回目をタップ。そして、スキップスキップ。
「回復薬だよ!」
ダブりかい! ってか、ダブるのかい! クジじゃなくガチャに改名しろや! まったくよ!
「ま、まあ、回復薬ならいくらあっても構わないないか」
怪我だけじゃなく病気にも効く。それに、ラダリオンに飲ませたかったし、ちょうどいいや。
三回目をタップ。以下略。
「サーチアイだよ!」
ゴルフボールくらいの球体と携帯ゲーム機くらいの制御用端末、充電器が現れた。
「ドローンみたいなものか?」
これは当たりだな。充電に五時間。稼働は三十分だけど!
四回目をタップ。
「五十パーセントオフシールだよ!」
まだ七十パーセントオフシールも使い切ってないんだがな。てか、七割引きシールじゃなかったっけ。
「あ、部屋の増設にも使えるのかよ。そういうのは前のときに教えておけってんだ。損したわ」
ほんと、ダメ女神だな! 雑すぎんだよ!
最後をタップ。
「アポートウォッチだよ!」
アポートシリーズか? まあ、こちらはホームにあるものならなんでも呼び寄せることはできるみたいだが。
「まあ、まずまずのものが当たった感じだな」
マガジンを取り寄せることが多いんだから右手首のほうがいいのか? まあ、そこは要確認だな。
「ウォッチなだけに時刻表示もできるか。他にも機能があるじゃん」
それは後々だ。ヒートソードとサーチアイも帰ってから練習するとして、ダインさんに戻ってきたことを伝えにいくか。ミシェドさんがやる酒場にもいきたいしな。
「ミリエル。駆除員同士でタブレットが使えるようになったから、これからは必要なものが出てきたら好きに買っていいぞ」
ラダリオンはタブレットにまるで興味なしだったが、ミリエルは興味津々で、よくオレの隣でタブレットを覗き込んでいた。もう教える必要もなく使いこなせるはずだ。
「いいんですか?」
「ああ、構わないよ」
ラダリオンと違って年相応の羞恥心を持ってるし、しっかりもしている。無駄遣いはしないだろうさ。それに、下着とか日常品とか買ってやるのも恥ずかしい。ミリエルが買ってくれるなら精神的負担は減るってもんだ。
タブレットをミリエルに渡して外に出る準備を進めた。
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