第116話 それはモグタン!

 倒したマーヌは村の人たちに運んできてもらった。


「結構デカいですね」


 大型犬くらいかと思ったら二メートルくらいあり、爪と牙が完全に肉食獣だった。初めの頃にあってたら絶対に食われてたな。


「そうだな。この分だと二十年以上は生きてる感じだな」


「ゴブリンってそんなに生きるんですか? 精々、三年くらいかと思ってました」


 ダメ女神からの少ない情報では産まれて半年で成体になるとある。そんな生物が長生きするなんてあり得るのか?


「わしもそこまで詳しくはないが、人の腰くらいまで育つと十年。人の背くらいになると二十年と言われておる」


 だから二十年ってわけね。よく冒険者に狩られずに生き残ったもんだ。ゴブリン、マジ厄介。


「このデカさなら魔石もあるかもしれんな」


 と言うのでマチェットでかっ捌いてみたら、青い、大玉飴くらいの魔石が心臓の横辺りから出てきた。


「オーグは赤だったのにゴブリンは青なんだ」


 なんか意味があるのか?


「オーグを倒したことがあるのか?」


「ラザニア村にくる前に。まあ、倒したのはラダリオンですけどね」


 そう言えばオーグの魔石、どこにやったっけ? 使い道ないから適当に転がして、そのまま見なくなったわ。


「魔石、なんの役に立つんです?」


 なんか誰からか聞いたような気もしないではないが、興味もないから忘れたよ。


「魔法使いの魔力として使われるな。人の魔力はそう強くない。それを補うために魔石が用いられる。オーグの魔石なら一流の魔法使い二十人分に匹敵すると言われておるよ」


 それが多いのかどうなのかはわからないが、人間の魔力、そんなに強くないんだな。ゾラさんも魔石を使ってたのかな?


「赤い魔石は熱の属性で青い魔石は命の属性と言われとる。青の魔石ならミリエルに持たせるのもいいかもな」


 ふ~ん。回復魔法は命の属性なんだ。まあ、オレが使えるわけでもないんだし、ミリエルが使えるならミリエルに持たせておこう。


 血で汚れた青い魔石を拭き取り、リュックサックへと放り込んだ。


「村長さん。これで依頼完了でよろしいですか?」


 番を狩るのが今回の依頼。難癖つけられる内容ではないはずだ。


「え、ええ。完了です。まさかこうも簡単に終わらせるとは夢にも思いませんでしたよ」


「依頼の相性がよかった、ってだけですよ。オーグを倒せって依頼なら断ってますしね」


 まあ、ラダリオンが元のサイズに戻れば簡単だろうが、あんなもののために時間など使いたくない。弾の無駄だ。


 完了の木札を村長さんからもらった。これをギルド支部に出すと報酬がもらえるんだとさ。


「村長。もしよければ芋を売っていただけませんか? リハルの町で食べて虜になったんです。そちらの言い値で構いませんので」


 多少、ぼったくられても構わない。それだけの価値があるんだからな。


「時期ではないので去年のになりますが、それでもよいのなら……」


「それで構いません。譲ってください」


 地下の貯蔵庫に案内してもらい、銀貨一枚分を買わせてもらった。大体四十キロくらいかな? 随分と安いな。大丈夫か?


「収穫は秋ですか?」


「ええ。今年は雨が多いのであまりよくないかもしれませんが」


「手が空いてたら買いにきます。そのときまた売ってください」


「はい。買っていただけるのならいつでもどうぞ」


 お願いしますと言葉を交わし、芋をセフティーホーム運んで村をあとにした。


「二匹しか駆除できませんでしたが、いい買い物ができました」


 帰りもカインゼルさんに運転をお任せです。


「ふふ。ゴブリン駆除はついでだな」


「そんな日があってもいいでしょう。今日の夜は芋で酒盛りしませんか? 芋とビールはよく合いますよ」


 蒸かした芋に塩辛。そして、よく冷えたビール。ここは天国かと思うくらい美味さが脳天を貫くんだぜ。


「それは楽しみだ」


 塩辛の他にマヨネーズ、チーズ、ピザソース、あ、焼いたベーコンも美味いな。今から楽しみでヨダレが出るぜ。


 なんて考えてたらリハルの町に到着。まだ四時なので人の往来はそれなりにあるが、昼ほどの混雑はない。すんなりとギルド支部に到着できた。


 ギルド支部に入り、依頼係のカウンターに完了札を出した。


「ムバンド村からの依頼ですね。お疲れ様でした。報酬の銀貨三枚です。ご確認ください」


 カウンターに置かれた銀貨三枚を確認して受け取った。


「カインゼルさん。分け前です」


 銀貨一枚をカインゼルさんに渡した。


 今日働いたのカインゼルさんだけだが、すべてを渡したところで受け取らないだろう。そう言うところ律儀な人だからな。


「ああ。では帰──」


 カインゼルさんが言いかけたとき、ギルド支部に若い冒険者が駆け込んできた。


「──プランド村にモクダンが出た!」


 モクダン? 未来から起源を調べにピンクの獣でも出たか? 


「人型の猪だ。この辺では滅多に出ない魔物なんだがな。流れてきたか?」


 それってオークじゃん。この世界、いろいろと名称が間違ってね?


「危険な魔物なんですか?」


「一匹ならそう危険でもない。だが、モクダンは群れる魔物だ。そして、人間の女を苗床にして種を増やす。もし、百匹もいたら緊急召集がかかる事案だ」


 エロ豚かい。そこはセオリーなんだな。くっ殺が始まるのか?

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