第98話 パイオニア
朝、ラダリオンに揺らされて目が覚めた。はふぇ?
「タカト、朝だよ」
時計を見たら八時を過ぎていた。あー寝坊しちゃったな……。
のっそっと起き上がり、大きく伸びをしたら全身が痛かった。でも、それほど酷くはない筋肉痛なので湿布を貼るだけにしておいた。
「ラダリオン、朝飯は?」
「昨日の残りを食べたけど、温かいものが食べたい。あと、フルーツサンドも」
フルーツサンド、冷たいじゃん。とか思いながらもタブレットをつかみ、あっさり醤油ラーメン炙りチャーシュー大盛りトッピングを三杯買ってやった。
オレは朝ラーな気分ではないのでクラムチャウダーとガーリックパン、あとはヨーグルトをいただいた。
食べたらフルーツサンドを各種買い、冷蔵庫の空き具合を見てシュークリームや瓶のプリン、ケーキなどを買い足していった。
「タカト。外のお菓子もなくなってきてた」
「奥様連中よくきてるが、仕事はないのか?」
前に畑仕事をしてるとか言ってた記憶があるが、オレがここに住み着いてから毎日きてないか?
「夏はあまり仕事がないって言ってた」
ふーん。そう言う時期があるんだ。こんな中世のような時代じゃ毎日仕事してるイメージでいたよ。
「じゃあ、夏は奥様たちの余暇って感じだな」
オレもたまにはゆっくりと余暇を過ごしたいぜ。
日持ちするお菓子を選んで、玄関に運び、出すのはラダリオンにお任せする。あ、そうそう。自転車も出してもらわないとな。
ちょっと外に出るようのベルトを装備してセフティーホームから出ると、やはりロミーたち奥様連中がきていた。
「おはようさん」
「タカト。早く出てきておくれよ。待ってたんだからね」
ん? どうしたい、そんなに慌てて?
「ゴブリンの片付けだよ! あんたらが大量に殺したから男衆は総出で駆り出されたんだよ」
あー……確かに片付けするなら巨人が呼ばれるわな。
「それは悪いことしたな。冷たいものでも差し入れしてやるか」
夏の差し入れと言ったらガ○ガ○君か? パ○コか? オレは小豆バー派だ。
「あ、カインゼルさんの家、ありがとうな。氷菓子を出しておくから食ってくれ」
セフティーホームに戻り、マ○タの充電保冷温庫と充電器、バッテリー×8を買い、アイスを入れてラダリオンに出してもらった。
オレはカインゼルさんのところに向かうと、なにやらマルグが棒を振り回していた。どした?
「あ、師匠、おはよー!」
「ああ、おはよう。疲れは取れたか? 無理するなよ」
六歳児に無茶させたオレのセリフではないが、無理しても強くはならないんだから休めるときに休めよ。
「うん! 大丈夫! もっと体力つけるようがんばる!」
六歳児なのに熱血だな。少年漫画なら主人公になってるよ。
「カインゼルさん、いますか?」
マルグにがんばれと声をかけてカインゼルさんの家に入るが、ベッドにはMINIMIが乗っているだけだった。
「じいちゃんなら木を伐りにいったよ。柵作るって」
マルグに尋ねたらそんな答えが返ってきた。昨日、あれだけ動いたのに元気な人だよ。
小屋に向かい、駐車する予定の場所からセフティーホームに戻った。
玄関に置いていたタブレットをつかみ、予てより選んでいた四輪バギー、ホンダのパイオニア1000−5を買った。
ATVともUTVとも呼ばれるオフロードを走る用に造られたもので、日本じゃ滅多に見れないが、アメリカとかでは軍とか農場、レジャーなんかに使われる乗り物だ。
パイオニアとは違う四輪バギーは二十歳くらいに海で乗らせてもらったことはあり、いつか1000CC級の四輪バギーを乗り回してみたかったのだ。
いろんな会社から出てるもので、有名なホンダ、ヤマハ、カワサキからも出てて、どれもカッコよかった。
そこからなんとかホンダを選んだが、パイオニアとタロンってのがあって、パイオニアは移動タイプでタロンは悪路特化タイプがあった。あ、オレの勝手な解釈ね。
オレとラダリオンだけならタロンの二人乗り用を選んだのだが、三人になると荷物のこともあるから四人乗りか五人乗りを選ばなくちゃならない。あれこれ悩んだ末にパイオニア1000−5(一応、五人乗り)を選択したのだ。もっと稼げたらタロンも買うけどな!
ただ、パイオニア1000−5。いろいろオプションをつけたら二百万円くらいになった。
高っ! とは思うが、元々二、三割りは安くなっており、我には七割り引シールがある。二百二十万円が六十万円くらいにまでになる。
それでも高いのは高いが、馬車での移動は手間だし、ケツを守るためなら必要な出費である。
こんなもの乗ってたら騒がれる未来しか見えないが、銃を使ってるのだから今さらだ。欲しいと言うヤツにはゴブリン千匹狩ってこいと言ってやるさ。
パイオニアに乗り込み、エンジンをかけてダストシュートまで移動させる。
「これはオレの装備。ゴブリン駆除に必要な道具だ」
そう自分に、と言うよりダメ女神に言い聞かせるように口にし、外へと出た。
「──よしよしっ! 成功だっ!」
小屋の駐車場所に現れ、思わずガッツポーズをとってしまった。これで広範囲に移動できるぜ!
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