第67話 ロスキート
「じゃあ、マルスの町にいくか」
「うん」
セフティーホームから出て、昨日と同じくラダリオンに伐り拓いてもらいながら山を下った。
「タカト、駆除する?」
「届く範囲のだけにしよう。十時くらいまでにはマルスの町に着きたいしな」
そう遠くはなかったが、ほぼ頂上近くにいた。下りるだけでも一時間。それから歩いて一時間。なにもなければ十時くらいにつけて、一休みしてから冒険者ギルドの支部にいけばそう忙しくない時間になっているはずだ。
「わかった」
臭いの元にAPC−9を構えて引き金を引いた。
9㎜弾もラダリオンサイズになると対物ライフルにも勝り、サプレッサーをしていても音が凄い。てか、方向を考えないと排出された空薬莢に殺されるな。もう少し離れようっと。
五十メートルくらい離れ、ラダリオンが撃つときは木の陰に隠れることにした。
「これが後ろ弾ってヤツかね?」
味方の空薬莢に怯えながらなんとか無事に山を下りられた。
ふぅ~。四十分くらいだったのに午前中分動いたくらい疲れたぜ。
ラダリオンに小さくなってもらい、ちょっと早めの休憩をすることにした。
「APC−9はどうだ? 使いやすいか?」
「ちょっと物足りない。えるのほうがいいかも」
えるとはSCAR−Lのことね。
「大きくて扱い難くないか?」
ちゃんと食べられるようになって成長してドワーフ体型から卒業した。セフティーホーム内での身長だと百五十センチになった。だがそれでもSCAR−Lは大きいと思うのだが……。
「威力があるから好き」
ラダリオンが好きなら構わないか。ただ、町中ならサブマシンガンのほうがいいだろうからこのままでいくけどな。
ちなみにオレはP90装備。9㎜弾のサブマシンガンは他にも買ったんだけど、弾込めが間に合わなかったのでAPC−9はラダリオンに渡してオレは慣れ親しんだP90装備にしたのです。
「これも大分使ったし、新しく新調するか」
P90は三丁あり、ローテーションで使っているが、今日装備しているのは軽く二千発は撃っているものだ。不調になる前に新しくしておくべきだろうよ。
なんだかんだと慣れ親しんだのはP90だ。これからも三丁ローテーションでやっていこう。
さて、そろそろいこうかとしたとき、ラダリオンが立ち上がり、APC−9の銃口を空に向けた。な、なに!?
数秒遅れてオレもP90の銃口を空に向けて絶句した。
……カ、カマキリ、だと……?
いや、カマキリと称していいサイズではないが、七割はカマキリの姿をしている。なので、あれはカマキリと呼称します。
空を飛んでいく茶色いカマキリはオレらには目もくれず、マルスの町のほうへと飛んでいってしまった。
「ラダリオン! 装備を変更するぞ!」
そう言ってセフティーホームへ戻った。
正確なサイズはわからないが、P90やAPC9でなんとかできるとは思えない。SCAR−Hとかのバトルライフルじゃないと無理だろうよ。
「ラダリオンはMINIMIを持て。少し離れて援護を頼む。いざとなったら元に戻れ」
オレはSCAR−Hスナイパーを持って外に出た。
「戦うの?」
「戦わない方向でいくが、たぶん、この流れは戦うことになると思う。ラダリオンはあのカマキリの臭いはわかるんだな?」
「たぶんあれ、ロスキートだと思う」
「ロスキート?」
モスキートは蚊だっけ?
「肉食の虫。暑くなるとよくあれに切られる」
もうモスキートに改名しろよ。夏の虫!
「群れで行動する虫か?」
「ううん。単独でいる」
それは朗報。群れる虫なら回れ右して逃げてるところだ。
「警戒して進むぞ」
Hスナイパーを構え、先頭はオレが。五十メートルくらい離れてついてきてもらった。
ロスキートが飛んでいったほうに向かって一キロほど進むと、牛サイズの羊がモザイク処理が必要なことになっていた。
肉食は肉食でも食い方と狩り方の荒い肉食虫だな。もしかして特定の部位を食う感じか?
周囲を探ると、二百メートルくらい先にいた。新たな羊を襲っていた。
Hスナイパーの脚を立てて地べたに置き、寝そべってスコープのピントを合わせる。
知識が丸でないので映画とかの見様見真似だが、相手はデカく運よく背中を向けている。別にヘッドショットとか狙ってないのだ、体の中心点を狙えば大抵は当たるだろうよ。
弾を装填し、体の中心点を狙って引き金を引いた。
「よし! 当たった!」
少し右上に当たったが、7.62㎜弾はちゃんとロスキートに苦しみを与えていた。
さらに引き金を引き、よろけたところに当たった。
「まだ動くか」
まあ、ゴブリンだって即死するほうが少ない。あれだけのサイズなら生命力も凄まじいだろうよ。
羽を広げて逃げようとするところにさらに一発。羽根の根元に当たり、またよろけた。
マガジンの弾をすべて撃ち尽くすが、ロスキートはまだ暴れている。どんだけ生命力に溢れてんだよ。
アポートポーチから新たなマガジンを取り寄せて交換。後方にいるラダリオンにいくぞと合図してロスキートのところへと向かった。
五十メートルまで近づき、そこからP90に換えて全弾放ってやっと死んでくれた。
「まったく、しぶといヤツだぜ」
7.62mmを二十発に5.7㎜を五十発を使ってやっと倒せるとか、こんなのを駆除しろと連れてこられていたら一日として生きられなかっただろうな。
P90のマガジンを交換し、構えながら十メートルまで近づく。
「ラダリオン。油断するなよ。死んだふりしてるかもしれないからな」
「わかった」
銃口をロスキートに向けたまま頭のほうに回ったら、子供らしき人間が倒れていた。
……もしかして、羊飼いか?
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