第41話 ワンマンアーミー
さらに追加して榴弾の雨を降らしてやった。
それでもゴブリンが逃げることはなく、徐々にではあるが山を登ってきていた。
「ココラ、なんかヤバイものでも含まれてんのか?」
もう百匹は駆除しているのに、まったく退く気配はまるでない。なにか、興奮した気配を纏っているのだ。
まあ、ここまで登ってくるまで時間はかかるからさらに榴弾を降らしてやれるから都合はいいんだが、バーサーカーモードのままこられるとちと困る。
「しかし、榴弾もそこまで大量に駆除できんし」
映画だとドカンドカンと人がふっ飛んでいたのに、そこまでの成果がパッとしない。まあ、儲けにはなってるからそこまで悲観するものではないが、思う以上に出費がかさんでる気がする。
榴弾が尽きてしまったが、もう追加する気にはなれない。これなら山を登ってきたところを迎え撃つほうが稼げるぜ。
P90のマガジンはたくさんあるんだし、所々にマガジンを置いて下がりながら迎え撃つとしよう。
見晴らし台から下がり、登りやすいところに予備のP90とマガジンを置き、数メートル毎に配置して山を下りていく。
プレートキャリアには前三本、背中に横入れ二本、左腰に二本、計七本を所持するが、山を囲うように登ってくる気配から五十本では不安になってくるな。
「ったく。ワンマンアーミーとか映画の中だけにして欲しいよ」
気配がわかり、素手の害獣だからやってはいられるが、数の暴力はいかんともしがたい。隙間なく登ってきやがるぜ。
少し手前で止まり、ハイドレーションで水を飲んで落ち着く。大丈夫。オレはやれる。いざとなったらセフティーホームに逃げたらいいんだ。そう何度も自分に言い聞かせる。
「よし! 死にさらせ!」
背にしていた木から出て、気配の濃い場所に向けて連射で弾丸をバラ撒いてやる。
あっと言う間に五十発がなくなり、作業鞄から新たなマガジンを取り出して交換。空マガジンはもったいないが捨てることにした。
マガジン四本撃ち尽くしたら後退。二十メートル登ったらまた撃ち方開始。ほとんどが木々で阻害されるがそれなりに当たってはいる。
一本撃ち尽くしたら後退。また撃つを繰り返してマガジンを置いたルートを辿って登っていった。
熱を帯びてきたので二丁目のP90に交換。一丁目はあとで回収できるようゴブリンに踏まれない位置の枝にかけておく。十二万円もしたものをそう簡単には捨てられません。
マガジン四十本を使い果たして三丁目のところに到着。思いの外消費が早いな。
「二千発とか個人で撃つ量じゃないだろう!」
いや、前回も同じくらい撃ったけどね!
「やっぱ、軽機関銃は必要だな」
二丁とは言わず四丁は買うべきだな。
「まったく、稼いでは消えて稼いでは消えるゴブリン駆除だぜ」
わかることと納得できることとはイコールじゃない。すべてを受け入れるなんてできないものなんだよ!
「クソ! クソ! クソ!」
ほんと、この世界にきてから何千回クソと叫んだことやら。口が悪くなるばかりだぜ。
もっとも、社会復帰できるわけでもない。人間関係が損なわれないていどには問題なかろうよ。
頂上に到着する頃にはマガジンは手持ちだけになってしまい、それも五分と持たない。グロックを抜いて全弾撃ち尽くしたらセフティーホームへ飛び込んだ。
ゼーゼーと呼吸するだけで肺が痛い。あんなに走り込んだのにこれとか、なんか情けなくなる。三十歳の体はこんなにも成長しないものなのか? クソ……。
なんて落ち込んでいる場合ではない。まだ外にはゴブリンがいて、ラダリオンががんばっているのだ、泣き言ならあとで言え、だ。
水を飲んでHK416の装備に着替えた。
終われば十二個入りの手榴弾を八箱買い、416の弾入りのマガジンを作業鞄に詰め込んだ。
窓から外を見ると、撃ち落としたココラを一心不乱に食っていた。
「鉛玉入りがそんなに美味いかね?」
これは確実にココラに危ない成分が含まれているな。
「だが、チャンスだ」
八箱──は無理なので、三箱を抱えて外に出た。
ゴブリンはオレが出たことに気がついてない。すぐに手榴弾を取って食事中のゴブリンどもに投げ放ってやった。オレからの奢りだ、遠慮なく食いやがれ!
次々と投げ、次々と爆発していき、次々とゴブリンが死んでいった。
三十六個の手榴弾があっと言う間になくなり、次は416を構えて食事にありつけなかったゴブリンどもに鉛玉を食わせてやった。
しかし、連射にするとすぐ三十発がなくなる。てか、アサルトライフルって何発撃てるもんなんだ? M4カービンは百五十発撃つと熱くなって煙が出てたけどよ。
「クソ! 詰まってきた!」
ちゃんと掃除して万能潤滑油556を噴きかけていたのに!
何度も詰まった弾を出しながら撃つが、一向によくならない。もうダメなのか? 二十万円もしたんだぞ!
「クソ! 邪魔クセー!」
416を捨ててグロックに交換。これまたあっと言う間に三本のマガジンが空に──。
「──タカト!」
セフティーホームに逃げ込もうとしたとき、ラダリオンの声がして頭上に影が。ドシーン! と目の前にラダリオンが。スライディングしながらゴブリンを吹き飛ばした。
「あたしに任せて!」
その言葉に慌ててセフティーホームへと飛び込んだ。KSGをこちらに構えるのが見えたから。
クソ! ラダリオン、カッコよすぎ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます