第40話 M79グレネードランチャー

 二日目もココラの勢いが衰えることはなかった。


「今日も元気だよ」


 ただ見ているだけでは時間がもったいないので、P90のマガジンに弾込めをした。


「──とは言え、さすがに飽きてきたな」


 もう五十本に弾込めを行った。これ以上はいつ弾込めしたかわからなくなるからこれで止めておこう。


 三日目になってもココラちゃんたちは元気である。外から見ているラダリオンも山が黒くなるくらいココラが群がっているそうだ。


 オーグも二十匹くらい集まってきて冷たい息を吐いて狩っているようだが、焼け石に水の状態らしい。


「それでゴニョが枯れない不思議。どんなファンタジー理論が働いているのやら」


 ベネリM4をつかみ、ネットの外に銃口を出して引き金を引いた。あ、ちなみに頭上にはビニールシートを被せました。カッパを一着ダメにしてな。


 鳥撃ち用の弾なので狙わなくとも数十匹が撃ち落とされたが、これと言って

変化はなし。また弾を込めて全弾撃ち尽くす。


 用意した百発の弾が三十分もしないでなくなってしまった。


「一発二十円だとしても損した感が否めないな」


 百発ていどじゃ練習になったかも怪しい。オレもKSGを買おうかな? でも、ガシャンガシャンって面倒臭いしな~。


 そもそもショットガンで多数を相手するのが間違ってる。やっぱり五匹以下の群れを相手する用だ。


 これはショットガンよりグロックを撃つ練習のほうがいいかも知れんな。


 グロックの弾は一発十二円。こっちのほうがよく使うんだから練習しておいて損はないだろう。


 四日目。撃っては弾を込め、込めては撃っての繰り返し。オレはいったいなんの修業をしてるんだろうな?


 いや、生き残るための修業をしてるんだから挫けるなと、自分を奮い立たせてグロックの練習を繰り返した。ラダリオンも逃げたゴブリンを追いかけ回しているんだから泣き言は言ってらんないな。


 十日目が過ぎた頃、なにかココラの数が減ってきたのがわかった。


「吸い尽くしたか?」


 十日も吸える蜜があったもんだと感心するが、これでいなくなってくれるのならなんでもいい。やっとゴブリン駆除ができると思ったのも束の間。死んだココラを狙ってか、ゴブリンの気配を四方から感じた。マジか!?


 ここでは不味いと判断し、リュックサックを背負って迎え撃てる場所へ移動する。


「まったく、すぐに集まる害獣だぜ!」


 見晴らしのいい岩場にきたらセフティーホームへ戻り、P90装備に着替えた。


「こんなことなら軽機関銃買っておくんだったよ」


 もうあんなことはないだろうと買わずにいたことが悔やまれる。この戦いが終わったら二丁買って練習してやるぜ!


 なんて死亡フラグなど立ててはみたが、死ぬ気などさらさらない。P90×3とマガジンは五十本もあり、ショットガンの弾も三百発買った。


 ラダリオン用にも三百発買ってあるので外から駆除してくれる。今回は王が立ったわけでもない。エサを求めてやってくるのだから統率はないはずだ。


 まあ、無秩序なのも困るが、勝てないと悟ったら逃げるだろうから大丈夫だろう。


 気配がどんどん集まってくる。


「ココラが去っていく」


 なんか最終回っぽいセリフを吐いてしまったが、まだ始まってもいない。ゴブリンの気配が分かれ、山のほうに向かっていた。


「オーグを避けたか?」


 気配はさらに分かれ、死んだココラに食いついたのか停止してしまった。


 ここから遠く、木々に隠れているのでゴブリンの姿は見えない。ただ、千匹以上は集まっている感じだな。


「ラダリオンがきたか」


 銃声が少しずつ近づいてきて、ゴブリンが十匹単位で駆除されていっている。


「三百発でも足りないか?」


 一度戻ってさらに二百発追加する。


「迷っていたグレネードランチャー、買うか?」


 前のときも悩んだが、榴弾一発三千円くらいだったから止めておいたのだ。


「P90じゃ届きそうにないし、練習だと思って買うとしよう」


 いずれ使うかもしれないなら今がチャンス。安全なところから急がないで撃てるんだからな。


 五万二千円のグレネードランチャー──M79を買い、榴弾が八発入った箱を四箱買った。


 操作は予習済みなのであとは実践だ。


 外に出てM79に装填。安全装置を解除。ゴブリンの気配に向けて引き金を引いた。


 ポシュンと軽い音とそれなりの反動がして木々の間に消えた。


 爆発はしたがなんかいまいち。遠いからかなのかなんなのかよくわからん。が、ゴブリンは二匹死んだのだから弾代は稼げたからよし、だ。


 山なりに撃つのは今のオレにはできないが、これだけの距離と高低差があるなら狙って撃っても問題はあるまい。これもやって覚えろだ。


 ラダリオンは山の裏に回ったようなので気にせず撃てる。

 

「しかし、これだけ撃ってるのにゴブリンは逃げんな」


 ゴブリンに取ってもココラは好物なのか? 死を忘れるほどに?


 まあ、最後の晩餐だ。しっかり味わってから死ぬがよい。


 残り十数発。さあ、もっと近づけ。もっと集まれ。死の宴へ。そして、たらふく食ったら汚く飛び散るがいい!


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る