第35話 ミーティング
夕方になってミシニーが起きた。
冒険者は自由に睡眠をコントロールできるのだろうか? 夜眠るのが当たり前の者には特殊能力としか思えないな。
「ん~~~うん! よく寝た!」
四時間くらいでよく寝れたんだ。若さ故の回復力か?
「それはよかった。食料は置いておくから食べてくれ。明日またくるよ」
「わたしの位置はわかるのか?」
「カードを持っていればな。そっちからもオレの位置はわかるはずだ」
なんでそんな機能を搭載したかわからんが、カードの位置がわかるようになっているのだ。
「あ、確かにわかる、感じがするな。どうなってるんだ?」
「オレにもわからん。あと、あまり遠くにいかれるとオレの足では追いかけることはできんので、そちらからきてくれると助かる」
山を歩くのも慣れてきたが、それは文字通り歩くことに慣れただけ。二キロも離れたらオレは向かうのを止めさせてもらうからな。
「わかった。こちらからいくよ。魔力も回復したし、明日までにたくさん狩ってやるさ」
「夜だとゴブリンは寝てるんじゃないのか? それに暗いし」
「なに、問題ない。あいつらの魔力は独特だし、夜目はいいほうだからな」
エルフ、高性能!
「そうか。まあ、無理しないていどにな」
「ああ。わかっているさ」
じゃあ、また明日と言って野営地から去り、少し離れた場所でセフティーホームへ帰った。
ラダリオンはまだ帰ってないので先に風呂に入り、上がったらまずビールを一杯。かぁー! 美味い! もう一杯!
少し休んでから脱いだ服や装備の手入れをし、弾を補充する。あ、リュックサック買っておくか。オレも野営やサバイバルできるようにしておかないといざってとき困るからな。
キャンプすらしたことがないのでなにを用意したらいいかわからんが、キャンプ雑誌買って考えるとしよう。
「帰った」
と、ラダリオンが帰ってきた。
「お帰り。風呂に入りな。アイス用意しておくから」
「うん。わかった」
装備を外してユニットバスへ向かった。
用意は一旦中止してアイスと食事の用意をすることにした。
冷凍庫からレディーなボーデンのイチゴ味を出しておき、今日は特上うな重を十人前とちらし寿司を買った。
風呂から上がってきたラダリオンがまずアイスに手を伸ばし、初めて見るうな重に腹の虫を豪快に鳴らしていた。
ラダリオンは一つ一つ完食しないと次に進めないと言う性格のようで、うな重を眺めながらアイスを食べている。器用なのか不器用なのかわからんヤツだ。
「ほら、立って見てないで座って食べろ。行儀悪いぞ」
最近、父親みたいになってるが、共同生活する以上、礼儀や行儀は身につけて欲しい。お互いのプライベートを守るためにもな。
アイスを完食し、温かい紅茶を飲んでからうな重を食い始めた。これで腹を壊さないんだから巨人の胃は丈夫である。
夕食が終わり、食休みしながらミーティングを行う。
ラダリオンは言葉少なく細かいことまでは話さないが、それでも構わない。現状を共有でき、コミュニケーションにもなるんだからな。
「エルフ?」
ミシニーのことを話すと、ラダリオンが首を傾げた。
「ラダリオンはエルフのこと知ってるのか?」
「たまに会う。大人たちはいろいろ話してるけど、なにを話しているかは知らない」
「どんな種族かは知ってるか?」
「魔法が得意でお酒好き。マーダ族が作るお酒をたくさん買っていく」
あれは種族的なことだったんだ。酒好きと言ったらドワーフってイメージなんだがな。
請負員制度のことも話し、明日顔合わせすることにした。一応、ラダリオンも雇い側だからな。
話が終われば二人で明日の用意をする。
「ショットガンの扱い、慣れてきたみたいだな」
「うん。でも、弾を入れるのが面倒」
確かにそうバンバン撃たないだろうと四発しか入らないものにしたが、結構撃ってる音がした。
……ゴブリンがちょこまか動いてるのか駆除している数は少ないけどな……。
「なら、別のにするか」
KSGと言う弾が入るチューブが二つあり、片方七発入って計十四発撃てる。ただ、ラダリオンの体型を考えたら五発ずつ入る短いのがいいだろう。
ショットガンとしては九万円と高価だが、それ以上の働きをしているのだから渋る理由はない。すぐに買ってラダリオンに扱いを教えた。オレも学びながらな。
「初めてのものだから最初は二発ずつ入れて慣れていけな」
オレは安全第一。効率より的確を求めるタイプである。
「念のため、グロックも装備しておくか」
巨人すら勝てない存在がいて、ラダリオンはまだ子供だ。殺すためではなく逃げる隙を作るために拳銃を持っておくほうがいいだろう。
ついでに装備を一新。ショットガンの弾用のタクティカルベスト(ハイドレーション入るタイプ)にして腰のベルトはグロック、マガジンポーチ二つ、お菓子入れと化したダンプポーチをつけた。
一度装備させて動き難くないかを確かめ、苦しいところを微調整する。
「マチェットは止めて折り畳みのナイフにしておくか」
そう使うものでないし、ラダリオンの力ならヘシ折ったほうが早い。別に解体とかもしないしな。
準備が終わればオレはサンドバッグ打ちを始める。
「あたしもやる」
と、オレの予備のグローブをつけるラダリオン。どうした? いつもならケーキタイムなのに。
「強くなりたいからやる」
どんな風の吹きまわしかは知らないが、強くなるのに異論はない。オレが死んだら一人で生きていくしかないんだからな。
新しくラダリオン用のサンドバッグを買い、二人で打ち方を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます