第33話 ピローン! 再び
背後のゴブリンを全弾放って蹴散らし、追い払ったら八匹の群れへ向かった。
ベネリM4に弾を込め──られない。弾切れだ。
「オールラウンドで使える銃が欲しいよ」
そんなものはないとわかっていても欲しくなるのがゴブリン駆除である。
セフティーホームに戻ってP90の装備にチェンジした。
三分ほどかかってしまったが、ミシニーが相手しているゴブリンの気配は二つまで減っていた。どうやらまだ戦っているようだ。
「まあ、疲労しているようだし、無理ないか」
いつから木の上にいたか知らないが、結構長いこといた感じっぽい。衰弱してたら六匹を相手にするのも大変だろうよ。
「まったく、理不尽だよな。百匹でも二百匹でもゴブリンを殺せるヤツがゴブリン駆除しなくて、銃を使わないと駆除できないオレがやらされてんだからよ」
なんかこう、ゴブリン駆除の請負とかできて、三割オレがいただき七割支払い。その報酬で元の世界の物を売るとかな。十五日縛りをつけたら横流しもできないだろう。
「ふふ。駆除請負制度とかな」
そうだよ。冒険者制度があるならゴブリン駆除請負制度があったっていいじゃないか。ダメ女神としたらゴブリン駆除できたらいんだからよ。
──ピローン!
一ノ瀬孝人さんの案が採用されました。孝人さんに請負員カード発行能力が追加されました。どんどん請負員を募ってね~。
また女神の声と請負制度のことが頭に入ってきた。マ、マジかよ……。
しばらく動けないでいたが、間近にゴブリンの気配を感じて我を取り戻した。
「クソ! 今はゴブリン駆除が先だ!」
弾を装填してP90を構え、三メートルまで近寄られたゴブリンに弾をぶち込んでやる。
連射でゴブリンを一匹一匹撃ち殺していき、二匹を逃してしまった。
「もっと標的を定めるの速くしないとな」
気配はわかるが体がそうなかなか応えてくれない。ハァー。三十歳って歳を痛感させられるぜ……。
「せめて戦闘力30くらいの体にして欲しかった」
たぶん、今のオレは戦闘力10くらいだろう。雑魚にもほどがあるぜ。
「お、終わったか」
笛を鳴らし、こちらへきてもらう。ゴブリンが死んだ今、ミシニーを探る方法はないのだからな。
何回か笛を鳴らしたらミシニーがやってきた。
「ご苦労さん。もうゴブリンはいなくなったから一休みしよう」
「ああ、助かる。もう三日も食べてないから限界だよ」
そう言うとへたれ込んでしまった。
三日も食べないでゴブリンを六匹相手できるとか、ミシニーの戦闘力53くらいはありそうだな。
「少し待ってろ。食料調達してくる」
先ほどセフティーホームに戻ったときに補充した水とナイフを渡した。
「って、なにか食えないものはあるか? 禁忌にしてるものとか」
エルフなら肉は食わないとかな。
「いや、特にない。よほどのものじゃない限りなんでも食うよ」
この世界のエルフは雑食のようだ。それでいてこれだけの美貌を持っているんだからファンタジーだぜ。
少し離れてからセフティーホームに入り、二リットルのペットボトルとリンゴ、バナナ、コス○コのパン、ソーセージを作業鞄に入れて持って戻った。
「待たせたな。まずはこれで腹を満たしてくれ」
「……どこからこんなに……?」
「疑問はあとにして食べな。ゆっくりだぞ。三日も食べてないと胃も弱まってるだろうからな」
「あ、ああ。そうだな。感謝する」
なに気に礼儀正しいよな、ミシニーって。いいところの出なのかな?
バナナとソーセージは剥いてやり、周囲の警戒をすると言って離れた。
その間にミシニーの仲間たちの荷物を持ってくる。拾ったものとは言え、仲間のものなら返すのが筋ってもんだろうからな。
「こんな美味いものをありがとな」
「気にしなくていいさ。ほら。これ、仲間のだろう。すべては回収できなかったが、返しておくよ」
もちろん、金もな。普通に生きてきた者としてはネコババはできんからな。
「いいのか?」
「オレは冒険者でもないし、必要もないからな」
町への潜入はそのときに考えたらいいさ。
「助かる。町へ帰るには心もとなかったからな」
「ここからその町は遠いのかい? オレは他から流れてきたからよくわからんのだ」
「そうみたいだな。コレールの町までは二日くらいだな」
二日? ラダリオンの話では四日くらいだったはずでは?
「意外と近いんだな」
「いや、かなり遠いよ。夜も寝ずに歩いた場合だからな」
一日四十キロとしても八十キロか。確かに歩けと言われたらノーサンキューと言える距離ではあるな。
「腹が落ち着いたら野営できる場所を探すとしよう。動けるかい?」
「腹が膨れて眠くなったが、大丈夫だ」
と言うことで山を下り、野営ができそうな場所を見つけ、枯れ葉や枯れ木を探して焚き火を起こした。
「遠くにゴブリンの気配はあるが、他の魔物がいる感じはしない。オレが見張っておくから眠るといい。まあ、ゴブリンがきたらうるさくすると思うがな」
「助かる」
「気にしなくていい。ミシニーにはここら辺のことを聞きたいからな、その代金だと思えばいいさ」
地元民の情報は価値がある。このくらい手間にもならんよ。
「わかった。少し眠らせてもらうよ」
そう言うと落ちるように眠ってしまった。よほど疲れていたんだろうな。見も知らないオレを信じるくらいに。
今のうちにラダリオンの食事と野営用の準備を済ませるとしよう。
その場でセフティーホームへと戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます