第31話 冒険者?

「……焼き肉、美味しかった……」


 残敵掃討も終わり、約束していた高級焼き肉パーティーもたらふく食べた。


 その後一日休み、今日から気持ちを一新してゴブリン駆除を、と思ったのだが、ラダリオンはまだ高級な和牛肉の味に捕らわれているようだ。


「ほら、しっかりしろ」


 外に出てるので、巨人になっているラダリオンの足をガンガン蹴ってやる。こちらが痛くなるほど蹴らないとラダリオンに通じないのだ。ゴブリンに噛まれても大丈夫なブーツも履いてるし。


「あ、うん。わかった」


「穴埋め頼むな」


 ラダリオンが掘った穴には五百匹くらいのゴブリンが入っている。そのまま放置してまたあのバケモノを呼び寄せるのも嫌だ。なので、石灰を撒いてラダリオンに埋めてもらうのだ。


 周りに死んでるゴブリンは放置。集めるのも面倒だし、消火剤まみれだから腐敗しても食われたりしないだろうからな。


「わかった」


「じゃあ、オレは新たな拠点探しとゴブリン駆除をしてくるよ」


 当初通り、ゴブリンを駆除しながら拠点探しを開始した。


 廃村から半径一キロ内からゴブリンの気配はなし。察知からしてバラけてしまった感じだ。


 一塊になっている気配へと向かうと、三十匹くらいがなにかを必死になって貪っていた。なんだ?


 まあ、これはチャンスとベネリM4を構え、三十メートルまで近づいたら六発をぶち込んでやった。


 鳥撃ち用の弾は威力がないのがわかったので、今回から玉が大きく、火薬量が多い弾に換えた。


 ちょっと反動は強くなったが、ゴブリンにはちょうどいいようで、二十匹近くを行動不能にしてやった。


「ショットガンは五匹までの銃だな」


 いや、アサルトライフルや拳銃でも三十匹は無理か。やはり軽機関銃を一つ買っておくべきか? 


 三、四十万円するから手が出なかったが、今なら買えるし、新品のを買っておくか。


 重症のゴブリンどもに近づきながら弾を装填し、逃げようとするゴブリンから止めを刺していった。


「十九匹か。まずまずだな」


 弾は一発八十円、十二発使用。千円もかからず十九匹を倒せたんだからコスパはいいだろう。


「ん? え? ひ、人か!?」


 ほぼ食われていたが、残ったものから人型なのは間違いない。


 なんか込み上げるものを感じてすぐに目を逸らした。


 ……吐き気があるってことは人だ、これ……。


 ゴブリンどもの挽き肉を見てもなんとも思わなかったのに、これを見たら吐き気を催した。


「クソ。散々見たんだから慣れさせろよ」


 セフティーホームからスコップを持ってきて死体に土をかけてやった。一度、盛大にリバースしてな……。


「昼、食えなそうだ」


 口の中のすっぱさを拭うために激甘なコーヒーを飲んだ。


「しかし、なんで人間がいるんだ?」


 ラダリオンの話では周囲に人は住んでなく、巨人の足で五日くらい歩かないと町がないそうだ。


 ちなみにここは辺境の地で、あの廃村は町と町を繋ぐオアシスみたいな村だったそうだ。昔、ゴブリンが溢れて滅んだそうだ。


「とんでもない場所に放り出してくれたもんだぜ」


 もっとこう始まりの町的な場所に放り出して欲しかった。馬車を襲う盗賊とか……うん。見て見ぬ振りしてるな。オレにそんな蛮勇はありませんわ。


 辺りを探ると、剣や荷物が落ちており、ゴブリンがむしり取っただろう衣服から冒険者? っぽかった。


「いるとは言ってたが、こんなところになにしにきたんだ?」


 散らばったものを集めると、剣は二本。弓矢が一セット。斧が一本。背負うタイプのバッグが二つ。ボロボロな装備から大小様々な貨幣。ベルトの隠し縫い? から十円玉くらいの金貨が三枚出てきた。


「斥候かな?」


 よく見なかったが、遺体が二つか三つあった。


 こんな離れた場所に二、三人でくるとは思えないし、なにかを狩りにきた装備でもない。


「ゴブリンを探りにきた?」


 前もゴブリンが溢れたのだからその記憶は消えてないはず。なにか前兆をつかんで様子見に冒険者を出した、のかもしれんな。


 まあ、真実を確かめる術はないのだからゴブリン駆除を続けるか。


 遺体の装備はセフティーホームに運び込む。いつか人のいる場所にいくときの小道具に使わせていただこう。まさかこの格好で町に入ったら目をつけられるだろうからな。


 遺体に合掌してゴブリン駆除を再開させる。


 気配はあちらこちらから感じ、また一塊になっている気配があった。


 気配からして五百メートルは離れているだろうか? 一塊の感じからしてまた三十匹はいそうだ。


「また死体を貪ってんのか?」


 正直避けたいところだが、三十匹固まっているのは美味しい状況だ。欲で奮い立たせてそこへ向かった。


 気配は一向に散らばることはしない。それどころか辺りから集まってきてる。どう言うことだ?


「いや、さすがに五十匹はヤバいだろう」


 ショットガンで対処できる数じゃない。弾込めだって一発込めるのに二、三秒はかかってる。軽機関銃を買ってる暇もないしP90を使うか。


 さっと戻ってP90とマガジン一本を持ってきた。


「なかなか気配が散らばらないな? なんなんだ?」


 百メートルくらいからゆっくりと警戒しながら進むと、ゴブリンが見えてきた。


 なんか、ギーギーと木を囲んで騒いでいる。


 上になにかいるのかと視線を上げたら金髪エルフがいた。


 マジか!?

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