第30話 残敵掃討
目が覚めたらマットレスの上にいた。
あれ? いつの間に移動した? 夢遊病か?
「あ、いや、ラダリオンが運んでくれたのか」
頭が覚醒してきて、至極もっともなことに思い至った。ラダリオン、いい子。
何時だ? って、わからんか。この世界は地球時間じゃない。一日の長さもおそらく違うだろう。
「あ、そう言う時計を追加すればいいのか」
この世界に合わせた時計! と思いながら壁にデジタル時計を追加。正しいかはわからんが、表示は4月27日(金曜日)11:02だった。
「……ま、まあ、いいさ……」
あまり深く考えても仕方がない。おおよその時間がわかればいいんだからな。
ユニットバスに向かい、ベタついた体をさっぱりさせた。
完全に意識も目覚め、昨日飲めなかったビールをいっき飲み。クー! 美味い!
意識は目覚めたが、ちょっと筋肉痛になっている。ただ、銃を撃ってただけなのにな。
二本目は……止めておこう。外ではラダリオンがゴブリンを駆除している。これからオレも残敵掃討しなくちゃならないんだからよ。
「次々と殺しているところをみると、結構な数が残っているようだ」
金は三百八十万円くらいになっている。この金からして七百匹は倒した計算か。
「儲けとしては二百万円くらいだな」
ハァー。二百万円を貯めるのにどれだけ大変かは理解できるが、あれだけのことをやって二百万円くらいってのは納得できないものがある。これなら地道に駆除したほうが稼げるってものだわ。
「ラダリオン、ショットガンの扱い方が慣れてきてんな」
数分毎に五千円が入ってくる。
「あの巨大化したショットガンから撃ち出される弾とか、ゴブリンにはオーバーキルだな」
まあ、一発三十円。惜しくはないのだからどんどん撃ち殺せ、だ。
「オレもショットガン使ってみるか」
416やP90を手入れしないとならないし、代わりのを買おうとは思っていた。もう大軍で襲ってこないだろうからショットガンでもいいかもな。
ラダリオンにはMOSSBERGってショットガンを渡した。オレはベネリM4ってのを使うとするか。セミオートでいちいちガシャポンガシャポンしなくていいみたいだし。
五万円くらいだからグロックを買うくらい。惜しくはないさ。
新たにベルトとダンプポーチを買い、そこに三十発くらい詰め込んだ。
「じゃらじゃらするが、そう問題あるまい」
グロック17も相当使ったし、グロック19のショルダーホルスターを装備するか。
マチェットや細かいものを装備して玄関に向かい、窓から外を見る。
ラダリオンはまだきてないか。んじゃちょっと待つか。
「結構吹き飛んだな」
ガスタンク六本だからそこまで大爆発しないと思ったが、なかなかどうして酷いことになっている。場所を選ぶ戦法だな。
「ちゃんと消火してくれたか」
辺りが真っ白だ。こりゃ、場所移動したほうがいいかもな。
十五日後には消えてくれるとは言え、十五日も消火剤まみれでいるのも体に悪そうだ。体に入ったものは十五日縛りがないみたいだからな。
グルリと辺りを見回していたらラダリオンがやってきた。相変わらずラダリオンの腹時計は正確だよ。
朝昼晩と決まった時間に腹の虫が鳴るようで、オレより規則正しい生活を送っているよ。
櫓があった場所まできたらペットボトルを外に捨てて合図。手のひらを差し出してくれたところで外に出た。
ちょっと高さが違ってヒヤッとしたが、ちゃんとラダリオンの手のひらに着地できた。
「ご苦労さん。生き残りが結構いるみたいだな」
「うん。火傷したのが結構いた」
降ろしてもらって気配を探ると、まだ近いところに結構いた。
「まさに満身創痍だな」
気配からしてまだ百匹以上いる。これこそボーナスステージだぜ。
「腹減っただろう。なにが食いたい?」
「焼き肉やるの?」
「それは夜だな。まだ生き残りがたくさんいる。今のうち駆除しておこう」
ただ撃ち殺すだけの簡単なお仕事。回復して逃げられる前に殺しておきましょう、だ。
セフティーホームに戻り、ラダリオンの昼食を用意してやる。オレはまだ寝起きだから食いたくはないんだよ。
……ビールをいっき飲みしていてなんだがよ……。
「ラダリオンが食い終わったらオレも食うから」
そう言ってまた外に出る。
「オレがいくまで死ぬなよ」
そのまま放っておいて死んでもオレが駆除したと認定してくれるかわからない。自然死とか認識されたら嫌なので、弱っている気配から撃ち殺していくことにした。
「ん? こいつ王か?」
通常のゴブリンより二倍デカいゴブリン──いや、挽き肉が飛び散っていた。
「二メートルにもなるんだな」
二メートルになるゴブリンがいることは知識として頭の中に入っている。が、それが王だからかまではわからない。二メートルもあるゴブリンとか、五千円では割りに合わないだろう。
だからと言ってサイズで決められるのも嫌だ。巣に籠る妊婦駆除は美味しいからな。
死んだゴブリンには興味なしと、くたばり損ないのゴブリンの気配を探り、ショットガンで止めを刺していった。
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