第22話 マグロマグロマグロ~
昼食が終わり、食休みしながらどんな駆除法をしたかを尋ねた。
「巣を見つけて剣で掘り出して何度も突き刺した」
刃渡り三十センチのマチェットも巨大化したらオレの身長くらいになる。あの怪力で穴を掘られたら逃げる術なし、だな。
「噛みつかれたりしないか?」
一応、腕には防刃アームカバーを。脚には脛当てをつけさせている。ゴブリンていどでは傷もつけられないだろうけどよ。
「ゴブリンに噛みつかれるほどマヌケじゃない」
巨人界ではゴブリンに噛まれるのはマヌケのようだ。
「穴を掘るならマチェットよりピッケルのほうがいいかもな」
鍬のようなピッケルが確かあったはず。あれなら穴を掘るのも刺すのもできるはずだ。
一万円くらいの頑丈そうなのを二本買った。この尖り具合ならグリズリーでも一殺だろうよ。
「ついでだからペットボトルホルダーも買っておくか」
これからどんどん暖かくなる。水分補給はしっかりしないとな。
「午後からも安全に頼むな」
「うん。夜も一杯食べれるくらい殺してくる」
殺る気満々のラダリオン。オレも目印をつけてゴブリン駆除をやらないとな。
五日かけて四キロ先まで目印をつけることができたが、出歩き隊とちょくちょく遭遇するようになった。
「さすがに殺気立ってるな」
ラダリオンは巣ばかりを潰しているせいか、オスのゴブリンの憎悪が凄まじいものだった。
まあ、こちらとしてはすぐわかるし、怒りに我を忘れたのが多いから警戒が散漫。五メートルまで近づいてもオレに気づくことはないくらいだ。
お陰で駆除数は右肩上がり。今日なんてまだ午前中なのに弾を補給しに戻らなくちゃならなくなったほどだ。
「百二十発を使い切るとか、どんだけいんだよ?」
いや、気配から数が多いのはわかっていたが、オレを見つけると我武者羅に襲ってくるのでゆっくり狙っている暇もない。連射で撃ち尽くすまでやらないと倒せないのだ。
「これならグロックでもいいのかもな」
食えるようになったからか、一発では死なないヤツも出てきたが、別に即死させる必要はない。出血多量で死ぬのを待てばいい。
それに、ラダリオンがいるからか、大きな魔物は現れない。警戒の笛をラダリオンに渡したが、これまで吹かれたことはない。ホローポイント弾なるものを使えばグロックでも充分なはずだ。
一旦、セフティーホームへと戻って装備を整えることにした。
プレートキャリアは止めてグロック19が入るショルダーホルスターを買い、ベルト周りはマガジンポーチを四つつけ、右につけていたマチェットは背中に背負い、ホルスターを持ってきた。
迷彩柄のジャケットを羽織り、ポケットにグロック17のマガジン二つ、ナイフやライトと言った細々としたものを収めた。
「てか、弾込めが一番時間がかかるな」
カシャカシャやってたらラダリオンが帰ってきた。もう昼かよ。
「お疲れさん。たくさん駆除したみたいだな」
この五日で三百匹は超えた。もしかしたら一年で三千匹も夢じゃないかもな。
……まあ、あのダメ女神からして三千匹駆除しても五年以上生きないと一億円相当なものはもらえないだろうけどな……。
「うん。だけど、巣が少なくなってきた。探すの大変になってきた」
「そうか。出歩き隊の中に小さいのがいたし、巣立ちしたのかもな」
子供が大きくなれば巣に籠ることもない。これからは寝るときくらいしか巣に帰らないかもな。
「食べられなくなる?」
悲しそうな顔をする。
「大丈夫。これまで駆除した数でしばらくは食っていけるさ。あとは地道に駆除していけば腹一杯食えるよ」
「本当?」
「ほんとほんと。オレはメンバーにウソはつかないし、仮にそうなったらちゃんとラダリオンに言うよ」
メンバーには誠意を持って。それに、ラダリオンが彷徨ってくれたら魔物も寄ってこない。そうすればオレはゴブリンに集中できるってものだ。
……てか、これで逃げないってことはエサが多い地なんだろうか……?
「ピッケルは止めて槍にするか。槍なら小さいゴブリンでも刺せるだろうしな」
弾込めを中断して、昼食を買うとする。
「そう言えば、ラダリオンは魚は食えるか?」
「うん。滅多に食べれないけど、好き」
これまでキノコ以外は躊躇ったことはない。寿司でもいけるはずだが、試しにコ○トコのファミリー盛り(わさび抜き)を買ってみた。
「これは寿司って言ってな、この醤油をちょっとつけて食うんだ。気に入らなければ別のを買うよ」
「いい匂い」
と言うと同時に寿司へと手を伸ばし、醤油をつけて口へと放り込んだ。
「──美味しい! これ美味しいよ!」
まるで飲み物かのように寿司が消えていき、あっと言う間に完食してしまった。
「お代わり!」
ってことで五つ買い、ちらし寿司と海苔巻きも二つずつ買った。
オレ用にわさび入りを一パック買い、二リットルのお茶とリンゴジュースを買った。
「あたし、これ好き!」
マグロの握りをつかんで突き出してきた。
「じゃあ、夜にはマグロ丼を買うか。いろんな部位が乗ったヤツは頬っぺたが落ちるんじゃないかってくらい美味いんだぞ」
青森の大間で食った三色マグロ丼、あれは美味かったっけな~。
「マグロ丼、食べたい!」
「じゃあ、午後もゴブリン駆除に励むとしようか」
「うん! いっぱい駆除する!」
食べることは生きること。美味いもののためにがんばるのもいいだろう。
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