第23話 1000匹突破

 気温はすっかり春のものだった。


「さすがに昼は暑くなるな」


 朝晩はまだ寒いが、太陽が出た昼は汗をかくくらいになる。水分補給が欠かせないぜ。


 今日何度目かの水分補給を行い、セフティーホームに戻り、玄関に予め置いていた新しいペットボトルをつかんで外に出た。


 ラダリオンをメンバーに加えてから一日三十匹以上を駆除できており、この世界に放り込まれときから数えたら余裕で千匹は超えた。


「ざっと計算しても二ヶ月で五百万円を稼いだわけか」


 稼いだと喜ぶべきかゴブリンの多さに嘆くべきか、難しいところである。


「てか、日に日にゴブリンが増えてないか?」


 オレは拠点とした廃村から半径三キロ内のゴブリンを駆除しているのだが、一向に減る感じはしない。今日は午後三時の時点で三十匹を超えた。出歩き隊も増えており、平均して八匹くらいになっている。多いときは十五匹もいたっけ。


 ……もちろん、奇襲して五、六匹殺したら逃げたけどな……。


「また出歩き隊が入ってきたな」


 察知範囲内に新たな出歩き隊がいくつか入ってきた。この地はエサが豊富なのか?


 確かにプラムみたいな果物があちらこちらに生えており、舞茸みたいなキノコをよく見る。これまでの数からして他にもいろいろとエサになるものが多いんだろうよ。


 遠くまでいかなくていいのは助かるが、弾の消費が激しくて弾込めに一時間くらいかかってしまう。


 マガジンローダーなる器具があったので前よりは楽になったが、一日百発以上撃っている。毎日それだけ撃ってるといつか壊れるんじゃないかと新たにグロック17Gen5を二丁、新品で買っちゃったよ。


 前からGenってなんだと思ったらジェネレーション、世代って意味だったんだな。銃に刻まれてる文字って意味があったんだ。まあ、だからと言って他の文字も調べる気にはなれんけど。オレ、ガンマニアでもないし。


 でも、FN−P90はちょっと撃ってみたい。あの独特な形はちょっとロマンを感じるんすよね。それに、七千二百円と値段は嵩むが、弾が入ったマガジンが売っていた。手間と群れの数を考えたら惜しくはないさ。


 ってことで、八匹の群れを駆除したら今日は終了し、サプレッサーとドットサイトがついたP90を二丁、そして、弾入りマガジンを十本買った。


「金があるとは頼もしいことだ」


 プレートキャリアとP90用マガジンポーチを六つも買い、せっせと取りつけた。


「タカト、お腹空いたよ」


 おっと。いつの間にかラダリオンが帰ってきていて腹の虫を鳴らしていた。


「悪い悪い。今日はなにが食べたい?」


「ラーメン大盛り全増し! 味玉十個追加で!」


「昼も食っただろう」


 とあるラーメン屋が気に入ったラダリオン。昼も同じのを三杯も食ったのだ。


「美味しいからいいの! あ、ライスと餃子も食べたい!」


 はいはい。なんでもどうぞ。


 注文の品を買ってやり、オレはあっさり中華にして、ライスと餃子をつけた。


 夕食が終わり、少し休んでから洗濯を始める。


 なんと、セフティーホームに洗濯室を増設したのです。


 最新のドラム式洗濯機が今日の汚れを落としてくれ、乾燥までしてくれる優れもの。お前と出会えたことに感謝です。


「タカト。新しい下着を買って。キツくなった」


「そう言えばお前、なんか大きくなったな」


 出会った頃は百四十センチくらいだったのに、百五十センチくらいに成長している感じだ。ぺったんこだった胸も少し膨らんでいるよ。


 ……ただ、まだ羞恥心は育ってないようで、下着姿で過ごしているけどな……。


「うん。いっぱい食べられるから大きくなった!」


 育ったことが嬉しいようで、にこやかな顔をしていた。


「ラダリオンも女の子だし、自分で選んでみるか?」


「面倒だからタカトが選んで。あと、ケーキ食べたい」


 色気より食い気ですか。まあ、ユニ○ロから適当に選んでラダリオン用のタンスに入れておこう。


 洗濯が終わるまでタブレットでお買い物。あ、この際だから冷蔵庫を買っておくか。その都度買うのも面倒だしな。


 大容量の冷蔵庫を買い、近くにコンセントを増設した。


「タカト、その箱なーに?」


「冷蔵庫って言うものだ。一番下は冷凍庫でアイスを入れておくからオヤツに食えな。上にはジュースやプリンとか入れておくから。酒と間違えるなよ」


「わかった! コ○トコのティラミスも入れておいて」


「はいはい。ちゃんと歯を磨くんだぞ」


 なんだか父親になった気分だな。


 ほとんどラダリオン専用の冷蔵庫になったが、オレはビールやレモンサワーが入っているなら不満はない。明日に残るような飲み方はできないから十缶くらいしか入れないしな。


「明日のことを考えないで飲める日がくるといいな」


 そんな日を夢見て明日も生き抜けるようサンドバッグ打ちを開始する。


 三十分休むことなく打ち込むと、全身から汗が吹き出してくる。さっき飲んだビールが抜けてしまったな。


 スポーツ飲料を飲んで水分補給。十分休んだらもう三十分がんばった。


「ラダリオン。そろそろ風呂に入って寝ろよ」


 もう九時は過ぎてる。子供は寝る時間だ。


「わかった」


 シャワー派なラダリオンが上がってくるまでにグロックのマガジンに弾込めをする。入れらるときに入れておかないといざってとき困るからな。


 六本に入れ終わる頃にラダリオンがユニットバスから出てきた。


 最初の頃はカラスの行水だったが、今ではドライヤーで髪を乾かすくらいまで進化した。まあ、相変わらず下着姿のままだけどな……。


「おやすみ」


「ああ、おやすみ」


 オレはゆっくり風呂に入り、ビールを一缶飲んで眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る