第17話 Marry me(17)

「とりあえず。 かわんねーだろ。」



志藤は笑った。



「まあ、変わるとしたら。 『親になったとき』ちゃうのん???」



あまりに



その理屈がぴったりで



反論する言葉がなかった。







「おかえりなさーい・・」



その晩出迎えた夏希の顔を見て少々驚いた。



「どしたの、それ・・」



鼻と鼻の下にバンソウコウを貼っていた。



夏希はそこに手をやりながら、



「さっき・・オフロに火を点けようと思ってオフロ場に行ったら、炊飯器のスイッチ入れてない!って思い出して。慌てて180°回転して出て行こうとしたら・・ドア、閉めたの忘れてて。」



大きなため息をつく。



「・・え? ドアに激突しちゃったの??」



顔を覗き込んだ。



「・・ちょうど。 ここの突起のトコで・・」



バスルームのドアの内側にタオルなどを引っ掛けておくフックがつけられている。



「も~~~、ほんっと目から星が出た。 鼻血も出ちゃって、」



半泣きで言う彼女だったが。



その場面を想像してしまい、悪いと思いながらもぶっと吹き出してしまった。




「・・ちょっとお。 笑い事じゃないですよお、」


夏希はジロっと高宮を睨んだ。


「ごっ・・ごめっ。」



と、謝るが笑いが止まらない。




ほんとにもう



大人のやることかって。




高宮はおかしくておかしくてたまらなかった。





寝室に入ってきた高宮は自分のベッドではなく夏希のベッドに入っていった。



ここに暮らすようになり、その行動が一種の『合図』みたいなもので。



夏希は自然にベッドの端に少し移動した。



「ねえ、」



高宮は小さな声で言った。



「え?」


「・・子供。 つくろっか、」



ぽつりとそう言った。



「え、」



夏希は少しだけ驚いた。




昨日その話をしたときは、全く相手にされなかったのに。



「・・隆ちゃん、どーしたの?」



「うん。 やっぱりそれが自然なことかなって。 結婚したってことはお互い大人として責任を持って家族をつくっていくってことだし、」




高宮は天井を見上げながらつくづく言った。



「不安なこともあるけど。 でも・・そうだな。 おれたちの子供、やっぱり欲しいかなって。」



そして夏希を見てニッコリと笑った。


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