第15話 Marry me(15)

先にベッドに入って本を読んでいた高宮の傍らに腰掛けて



「ねえねえ、」



夏希は風呂上りで頭を拭きながら話かけた。



「ん?」



「隆ちゃんはさあ。 赤ちゃん、欲しいって思う?」



ストレートな質問に



「は??」



思わず本から彼女に目を移した。



「あたしたち。 もう夫婦だし~。 やっぱり自然に子供ができるのを待つのが普通なのかなって。」



やっぱり!



高宮はそんな気持ちでいっぱいだった。



萌香に子供が生まれてからというもの、頻繁に赤ん坊に会いに彼らの家を訪れる夏希がいつかそう言い出すのではないか、と思っていた。



「あたしは親になる自信とかはあんまないんだけど。 でも、やっぱり子供は欲しいかな~~って。」



あんまないなら取りあえず言うなっつーの。



そう思ったが



「夏希はまだまだ結婚生活にも慣れてないし。 仕事も大変なんだから。 もう少し先でもいいんじゃないの?」



高宮はゆっくりと起き上がり彼女を諭すように言った。



「え、そうかなあ。 でも、若いうちに産んでおけば頑張れるし。」



「子供はかわいいだけじゃないんだよ? 夏希にはまだ無理じゃないかなあ・・」



「それはわかってるけど。 隆ちゃんは子供、欲しくないの?」



「いつかはできればなって思うけど。 まあ・・ヨソのガキはあんまかわいいとか思ったことないけど・・」



「え、そうなの!? あたしはヨソの子でもかわいいよ!」



「まあ、自分の子供はまた違うんだろうけど。 とにかく理想と現実は違うよ、」



「じゃあいつになったら子供つくるの?」



まるで小学生のように質問をぶつけてくる夏希に



「いつって・・」



特にそこまで考えていないので答えられない。



夏希は高宮の肩に手をやって



「ねー! やっぱり赤ちゃん欲しいよ~~。 つくろ、」



ぶんぶんと彼を揺すった。




ぜったいに思いつきで言ってるし!




高宮はまるであんこを飼う時と同じようなトーンでそういう夏希についイラっとした。




「隆ちゃんもあたしたちの子供は『高宮』の子供になっちゃうって心配してるの?」



「は?」



思いもしなかった言葉を言われた。




「あたしたちの子供が生まれたら。 あたしたちの意思とは関係なく高宮の跡取りになっちゃうんだって、この前斯波さんに言われたから・・」


夏希は心配そうに言った。


高宮の跡取り・・



正直


そんなことも考えてもいなかった。



「まあ、確かにそうなのかもなんだけど。 でも・・そんなことは子供が大きくなったら考えればいいことだし。 大事なのは今じゃない?」



大真面目に言う彼女の顔をジーっと見ていると



何だかすっごくおかしくなってきて、ぶっと吹き出してしまった。



「え? なに笑ってんの?」


「なんっかもう・・エラそーに、」



高宮は手で顔を覆って笑ってしまった。




「偉そうって!」



夏希は憤慨した。



大事なのは今じゃない?



って。



夏希が言うか。



高宮はまた笑ってしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る