第14話 Marry me(14)

「また・・いる!」



斯波は苦々しい顔で夏希を見た。



「あ、おかえりなさーい!!」



まるでここの家の住人のように彼女に出迎えられ。



「今日は。 また例のおじいちゃんのお見舞いに行ってきてね。 その帰りなんです~。」



夏希はまた翔を抱っこしながら言った。



「それはいいけど。 ウチに来るのとどういう関係があるんだっつーの。」



「だって~。 もうかーくんに会いたくて会いたくて!」




夏希はもう翔に夢中だった。



おそらく週に一度は必ず来ている。



週に3回くらいのときもある。



「ほんっと。 かわいくなってきましたよね~。 どっちに似てるのかなあ。 最初は斯波さんかなって思ったんですけど。 やっぱり目とか鼻とかは栗栖さんかなあって。」



「おしめをそろそろとりかえなくちゃ、」



萌香がおしめを持ってくると、



「あ、あたしやります~。 そんなの。 栗栖さんは斯波さんのゴハンの仕度をしてあげてください。」



夏希は半ば無理やりおしめを取り上げて、翔をプレイマットの上に寝かせた。



「あ、オシッコいっぱいしてる~。 いっぱい飲んだんだね~。 気持ちよくしてあげるからね~~。」



夏希は嬉しそうにおしめを替えてやっていた。



萌香はそんな夏希の姿が微笑ましくて



「もう自分たちの赤ちゃんをつくったら?」



と言ってしまった。



「え、」



当たり前のことなのに夏希は意外そうに萌香を見た。




「だってもう結婚もしたんだし。 まあ、仕事のことはあるけどそんなのどうでもなるわよ。 仕事をしながら子供を育てるのは大変だけど、きっと高宮さんも協力してくれるだろうし、」



「・・こども、」



夏希はつぶやいた。



別にすぐに子供をつくるとか



そんな話を高宮としたこともなく。



別に今までどおり避妊はし続けているけど。




「子供が子供作ってどうすんだっつーの、」


斯波はボソっと言った。



「でも。 夫婦やし。 家族になったんやから、子供のことだって考えなくちゃ、」



「・・あんこだけで精一杯って感じなんですけども、」



夏希はおしめをとりかえた翔をまた抱っこして言った。



「あんこはあんこ。 ペットでしょ。 もちろんずうっと大事にしていくけど、子供は違うわよ。」



萌香はキッチンから笑顔でそう言った。




子供かあ・・。



確かにかーくんを見ていると、もう理屈ぬきにかわいくてかわいくてたまらないけど。




あたしと隆ちゃんの赤ちゃんかあ。




何だか急に真剣に考えてしまった。






「え、また栗栖さんちに行ったの?」


高宮は話を聞いて少し呆れつつ言った。



「うん。 かーくんに会いたくなっちゃって・・」


彼の上着を受け取ってハンガーにかけながら言った。


「あんまり行ったら迷惑だろ、」


「そうかなあ・・」



なんだか彼女が気もそぞろな気がして


また何か考えているんじゃないかと高宮は少し心配だった。


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