第13話 Marry me(13)
「え~、あのおじいちゃんのところも行ったの?」
高宮よりも夏希のほうが帰るのが遅かった。
「うん。 とりあえず行っておかなくちゃって思って。 そしたら偶然にオフクロも来てて。」
キッチンで夏希に作っておいたクリームシチューを温めた。
「お義母さんも?? え、あたしのことめっちゃ怒ってたでしょ?」
夏希は心配になって高宮のシャツの袖口をぎゅっと掴みながら言った。
「・・別に。 怒ってなかったよ。 若い子をもらったりするからって・・ いつもみたく、」
と、笑った。
「・・ほんと。 しょうがない嫁だよね、」
ちょっと落ち込んだ。
「大事にならなかったんだし。 もう気にすることないよ。」
高宮は優しく夏希の頭を撫でた。
「でも。 おじいちゃんね。 あのわらび餅おいしかったって言ってくれて!」
彼女の顔がぱあっと明るくなった。
「うん。 おれにも言ってた。 あの人、すごく甘党なんだって前に聞いたことある。 すごくすごく食べたかったんだと思うよ。」
シチューを皿によそった。
「よかったあって。 あたしもあそこのわらび餅大好きだから。」
夏希はその皿を受け取った。
「おいしー。 隆ちゃん、あたしより料理が上手になったよね。 すごーい。」
夏希は本当に嬉しそうにシチューを頬張った。
料理なんかほとんどしなかったけど
彼女と一緒にいるようになり
不思議な料理を作ってしまう彼女に任せるのが不安で
自分で料理をするようになった。
それがけっこうハマってしまって
確かに夏希が作るより美味いって自信もついた。
でも。
何だかそれが嬉しいんだ。
すごくすごく彼女が愛しく思えて
まだ食事中なのに彼女の肩に手を回して頬にキスをした。
「隆ちゃん・・?」
少し驚いて夏希は彼に向いた。
「なんでも・・一生懸命な夏希が・・好きだ。」
スプーンを持ったままの彼女を抱きしめた。
そして
唇を重ねた。
「・・いまのままの。 このままの夏希がいい。 しっかりしてくれなくても、漢字が読めなくても。 このままの夏希が好きだから。」
ぎゅっと
彼女の心まで抱きしめるように。
「・・隆ちゃん、」
夏希もすごくすごく幸せで
ふっと微笑んだ。
そのとき
ぐうううううううう
お約束のように夏希のおなかが鳴ってしまった。
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