第7話 Marry me(7)

老人はカッと目を見開き



「わ・・わしの名前は『ひがしぐも』ではないっ!!! 『しののめ』だっ!!!」



大きな声でそう言った。



「は・・??」



夏希はその迫力に後ずさりしてしまった。



「し・・しののめ???  だ、だって・・『ひがしくも』って・・書いてありましたよ・・」




「『ひがしくも』と書いて『しののめ』と読むんじゃ!!! そんなことも知らんのか!!!」




ものすごい剣幕だったが。



「え?? ど、どこからどこまでが『しの』で、どこが『のめ』なんですか!?」



夏希はまたヘンなところに食いついてしまった。



それがまた彼の琴線に触れてしまい、



「もういいっ! 具合が悪くなる! 帰れ!!」



思いっきり追い出されてしまった。






はああああ・・



すんごい失敗。



粗相のないようにってお義母さんに言われたのに。



また怒られる・・




さすがの夏希も大いに落ち込んだ。




寝ようとしたときに高宮が帰宅した。




「あ・・おかえりなさい、」



夏希の落ち込んだ声に



「お見舞い、どうだった? 大丈夫だった?」



高宮は嫌な予感がして聞いてみた。



「あんま。 だいじょぶじゃないかもしんない・・」



夏希はもう詳しく話す事さえ、嫌になり。



「は?」



「もう、寝る。 おやすみなさい・・」



あんこを抱き上げて寝室に引っ込んでしまった。






「どうしたの? 元気ない、」



翌日も落ち込む夏希に真緒が声をかけた。



「え。 ああ、いえ。」



慌ててファイルを整理し始めた。



そしてハッとして、



「あの。 これ・・なんて読むか知ってます?」



夏希はメモに『東雲』と書いて真緒に尋ねた。



「え? コレ?  ええっと・・確か・・『しののめ』じゃない?」



と普通に答えられ



「え! 読めますか?」



思わず聞いてしまった。



「こういう地名あるじゃない。 聞いたことある。」



サラリと言われた。



「そっかあ。 みんな知ってるんだあ・・。」


夏希はまた頭を抱えてしまった。


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