第4話 Marry me(4)

「え? なに?」



会社に戻って高宮のところに行くと、彼は会議の時間が迫っていて書類を揃えるのに必死のようだった。



「だから・・この大叔父って人は誰なの?」



夏希は義母からきたメールを見せた。



「ええっと・・その人は・・オフクロの方のじいさんの・・弟の・・娘のムコさんだったかなァ???」



高宮も手を動かしながら記憶を手繰り寄せる。




「え??? なに? もいっかい言って! メモするから!」



夏希の頭ではとうてい理解できなかった。





「とにかく、親戚だよ。 親戚。 大学教授だったんだけど・・ ごめん、ほんっと! 時間なくて。 悪い!」




高宮は夏希にすまなそうに言ってからバタバタと出て行こうとした。




「ちょっと! 隆ちゃん!!」



夏希は必死に彼を呼び止める。



すると高宮はくるっと向き直り



「あのさ。 会社で『隆ちゃん』は・・やめてくんない?」



と、いきなりのダメ出しをした。



「へ?」



意外なことを言われて目をぱちくりさせた。



「今までならともかく。 おれたち・・結婚したんだし。 他にエライ人たちもここはいっぱいいるんだからさ。」



高宮はあたりを見回してちょっと小声で言った。



「え? 結婚したらなんでダメなの??」



夏希の問いかけにも




「・・細々と説明してる時間はないんだよ。 じゃ、悪い!」



と、慌しく出て行ってしまった。



「え~~~! も~~!!」



夏希はもうどうしていいのかわらかなかった。




高宮と入籍してから、このような用事が増えた。



親戚の法事とか



なんかのパーティーとか。



高宮が一緒のこともあるが、多忙な彼の代わりにひとりで出向くこともあり



正直、どんな関係の人なのかもよくわかってなかったりもしていた。



それが『嫁』としての仕事なんだろうが



人よりも常識に欠ける夏希にとって



非常に戸惑うことでもあった。



なんか。



今までのが楽しかった・・



夏希は結婚して初めてそう思ってしまった。





「すみません。 ちょっと今日はこれでシツレイします、」



夏希は非常に忙しかったのだが、7時ごろ斯波にそう言って帰ろうとした。



「あ? どっか行くの?」



仕事がたまりにたまっていることがわかっていた斯波は怪訝な顔をした。



「なんか。 よくわかんない人のお見舞いです・・」



夏希はしょんぼりとしてすーっと幽霊のように出て行ってしまった。






何とか病院に着いて、義母に言われた病室を訪ねてゆく。



VIPが入るような馬鹿でかい病室だった。



1102号・・ここか。


えっと。


夏希は病室前にかけられた名札を確認した。

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