第2話 Marry me(2)

高宮と入籍を済ませて、いちおう戸籍上は



『高宮夏希』となり



立派な高宮家の嫁なのだが



夏希には全く自覚がなく。


こんな席ではいつも義母に怒られていた。





「ほんと。 あたしってばダメだなあ・・」



落ち込んだ夏希は帰りに斯波と萌香の家に寄った。



「まあ・・ゲームで夜更かしはダメだったかもね、」



萌香はキッチンで洗い物をしながら、笑った。



「いっつも隆ちゃんのお母さんに怒られっぱなしだし。 最近はようやく斯波さんに怒られなくなったってゆーのに。も~、かーくん! 助けて!」



夏希は生まれて2ヶ月になろうとしている翔(かける)をそっと抱きしめた。



「ほんと。 怒られキャラって感じね、」



萌香はそんな夏希に吹き出してしまった。




「もうそろそろ帰れば? おまえももう独身じゃねーんだからさ。」



帰ってきた斯波はゴハンを食べながら言った。



「今日、隆ちゃん遅くなるってゆーから。 あ~、なんかずうっと抱っこしてたい~、」



夏希はもう翔がかわいくて、かわいくて来てからずうっと抱っこしっぱなしだった。



「あんこが待ってるんじゃないの?」



「最近、あんこも反抗期で。 あたしの言うこと聞いてくんないんですよお・・・。」



「犬にも反抗期があんのかよ、」



斯波は思わず笑ってしまった。



「わざといたずらしたりして。 この前もあたしのマンガをビリビリにしちゃうし! ダメって怒るとね、噛み付いてきたりするんですよお?」



「犬も子供と同じよ。 かまってほしいんじゃない?」



「あたしちゃんと朝晩2回も散歩行ってるんですよ? 隆ちゃんはもう全然忙しくて面倒見れないから。 は~~~、ほんとやっぱり生まれたてがかわいいですよ、」


夏希は翔にほお擦りをした。



「子供だって。 いつまでも寝てばかりじゃないわよ。 大きくなれば言う事もきかなくなるだろうし。」



萌香は手を拭きながらそう言った。



「そーかなあ。 あたしはもし自分の子供ができたらね、男の子でも女の子でもぜえったいに野球やらせて~~! お休みのときはね、一緒にキャッチボールとかして! あんこのお散歩しながらランニングしたりとか!」



夏希は目を輝かせた。



斯波は彼女の言うことに苦笑いをして



「ほんと。 まだまだ夢みたいな感じだなあ。 現実はもっと厳しいって。」



と言ってやった。



「え~。 でも! 毎日楽しく暮らせたらいいじゃないですかあ。」



夏希は口を尖らせた。



「おまえらの子供は。 高宮家のあととりだろ? おまえがしたいように育てることなんかできねえかもしんないし。」



いきなり現実をつきつけた斯波に



「ちょっとそれは・・言いすぎよ、」



萌香はたしなめた。



「あととり・・?」



夏希は目をぱちくりさせた。



「いちおう妹の子供がいるからってさあ。 結局高宮の長男だし。 妹は婿もらって、オヤジさんの地盤を継いで議員になってんだろ? そんで子供は男の子だし。 将来、いろんなしがらみとかそんなことに巻き込まれなけりゃいいけどって、」



斯波は心配して言っているつもりなのだろうが



夏希はそんなことのかけらも考えたことがなかったので



なんだかピンとこなかった。

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