第10話 どうした物なのか

 もう数ヶ月歩いている。未だに何も見えない見えてもしょうがないのだが。


「サザナミぃ、暇だぜな」

「…………」


 無言で殴られた。いや、喋れないんだけどな。この数ヶ月で向上した事なんて活舌位だ。


「最近は熱く無くなったが、HPが減っている感じはしないな」

「…………」

「疲れもしないし、眠気もない。俺には何があるのやら」


 おかしな言い回しで進む俺と黙って付いて来てくれるサザナミ。正直、これ以上やる事もない。何をするべきか。


「お、ゴブリン」


 後ろから奇襲をかけてきたゴブリンはノールックで首を飛ばす。もう、周囲の物体の動きすら俺には感知可能になった。


「森の最奥に着くか、森を越えるか、どうするか」

「…………」

「森越えを目指すか」


 普通なら準備をしなくちゃ森を超えようなんて考えは思いつきもしないのだろうが、俺とサザナミなら何も準備しなくても大丈夫だ。


“サポートさん。今更だが、この森は何なんだ?”

“検索完了。地域名【フォールネックの大森林】。ここは大量のゴブリンとボアが繁殖している森です。命知らずが入り、死者を多数出します。中心には全てのゴブリンの始祖【オリジンゴブリン】が生息しています。森の中域には流れ者の街があります”

“俺がいた街?”

“いいえ。そことは違います”


 最初に俺が生まれた街を思い出す。が、思い出があまりない。商品を盗んだことしか覚えていない。そういや、聖水を投げてきた奴は元気にしているんだろうか。


“あの町はどうなったんだ?”

“検索完了。地域名【フォールネリア】。現在は【死霊・ロードレイス】の襲撃の影響で壊滅状態です。ゾンビ化した住人はロードレイスに連れていかれました。現在、街としての機能を維持するのは難しいらしく住民の別の街への移住が進んでいます”

“そのロードレイスは何処に行ったんだ?”

“現在は地下に潜り南下しているようです”

“俺の事はどう思っているんだろう”

“眷属作りに失敗したと思われています。追ってくる様子はありません。放置しても支障はないと思われているようです”

“つまり、雑魚扱い。俺とロードレイスはどっちが強いんだ?”

“ロードレイスです。ご主人様には一分の勝率もありません”

“まぁ、実際その通りだが”


 おっ、デカいゴブリンが束になって掛かってきた。連携はうまいが、これくらいならどうにでもなるな。楽勝だぜ。


「ブアァァァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「ブアァァァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」「グギャァァ!」「ギャッ、ギャッ!」「グギャァァ!」


と、思ってた俺に言いたい、数は脅威だ。こいつはキツイ。しかも、後ろから援軍が来る。疲労はしねぇが物量できたら対応しきれねぇ可能性がある。


(仕方ねぇ。撤退だ)


 樹々の上を飛び移っていけば撤退は容易だろう。簡単に撒ける。実際きちんとまくことが出来た。というよりも、一定以上の距離から外には出ないようだ。

 無双ゲーみたいに吹き飛ばす様にとは言えねぇが、それくらいの力は身に付ける必要が出てきたな。考えてみれば実戦だと初めての敗北だ。損耗は少ないがこの辺で見切りをつけてレベル上げだな。奥に進みたければ強くなるしかない。

 これでようやくちゃんとした目標が出来た。さて、修行を頑張るぞ。

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