第9話 サザナミが進化します!

 はい、進化したゾンビ、いえ、ハイゾンビ君です! 日光に対する耐性は獲得できていませんが日に当たって身を焼かれてもそれを上回る回復力で体を修復する。


“サポートさん、俺の体が焼かれない様にするにはどうすればいいですかね?”

“検索完了。耐性を獲得する為には体への異常となる要因を取り続ける事で獲得が可能です。ご主人様の体は聖域である日光が照射されることで浄化されます。それによって身が焼けているのでもっと日に当たる事をお勧めします。前まではHPが低かったので命の危険がありますが、進化した状態である今ならば耐えて日光への耐性である浄化耐性を獲得できます”

“成程。なら日光浴を続けますか”


 そうと分かれば、多少薄着になり日光浴を開始する。と言っても、森の奥に入るのを止める意味もないので木漏れ日に当たりながら直進する。しかし、服を手に持っているといざという時に邪魔だな。


「…………」


 何となく心配してくれてそうなサザナミは撫でつつ、脱いだ服を背嚢にしまうとまた直進をつづける。あ、ゴブリン。まぁ、腕を伸ばして一気にチョンパで終了。ほれ、サザナミ。食っていいぞ。美味いか? 美味いだろう?


「…………」


 そう不服そうにするな。まだ弱いお前を守ってやるんだし、いやならお前も強くなるんだな。


「…………」


 もういいのか? ああ、分かった。出発するかっ! んだぁ!? いきなり後ろから。


「フォゴォォォォっ!」


 何だ? ゴブリンみたいだけど、体格が違うな。普通のは小学生くらいだけど、目の前のはプロレスラー位ある。サザナミは回収済み。しかし、周りにはゴブリンが沢山いる。つまりこいつは進化した個体だ。俺とは違う種類の奴だ。

 取りあえずサザナミを拳に纏わせる。窒息狙いと直ぐにでも逃がせるようにするためだ。剣を抜いて一先ず雑魚を牽制する。

 デカゴブリンは棍棒を持ってそれを力任せに振り回してくるが軌道を見切れば躱すのは難しくない。俺は腕を伸長化させて広範囲のゴブリンの頭を一瞬で切り捨てる。


「ギャッ!?」

「ブァアッ!? ………グァアァァァァっ!?」」


 デカゴブリンは先に危機を察知して上に避ける。しかし、駒がやられた事に動揺したのか騒いでがなり立てる。それにビビる俺ではなく、一気に距離を詰めて顔面にサザナミを貼り付け後ろに回って首をはねる。


「…………? ……………!」


 断末魔の叫びは外に洩れずデカゴブリンの首が落ちた。サザナミはそのまま首の捕食を始める。俺もデカゴブリンの吸収を始めるか。ん? 引っ掛かりを感じる。何だこいつ体から石が出てきたぞ。綺麗だな宝石みたいだ。サザナミもみるか?


「…………」


 喜んでるみたいだ。綺麗なモノを見る感性は死んでいないらしい。さて、これが何か大体予想は付くがサポートに聞いてみるか。


“サポートさん。これは何?”

“検索完了。それは魔石です。空気中の魔力が結晶化された物です。魔物から出てきた魔石はスキルの因子が転写されている可能性があるので吸収出来ればスキルを獲得できます。より強力な魔物であればあるほど吸収した場合にスキルを獲得できる可能性が上がります”

“この魔石でスキルを獲得できる可能性はどれ位?”

“検索完了。全知識領域からの経験に基づくならば約二割ほどです”

“成程。ならば、俺とサザナミのどっちに吸収させるのがベストだ?”

“検索完了。現在レベルが下の個体名【サザナミ】に吸収させるのがベストです。魔石の吸収でもレベルが上がる経験値を積むことができます”


 サポートさんがここまで言うのなら魔石をサザナミに食わせる。多少嫌がってはいたがすぐに溶けて吸収された。


■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■

名前:サザナミ雪波陽子 種族:スライム 状態:従魔 Lv32


称号:異世界転生者 同行者 雑食 悪食


HP:340/340

MP:400/400

SP:820/820


コモンスキル

捕食(LvMax) 健脚歩(Lv1) 鑑定ステータス表示(LvMax) 魔力感知(LvMax) 五感補助(LvMax)

固有スキル

吸収捕食(LvMax) 擬態(Lv3) 大辞典(Lv6)

■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■


 どうやら能力が上がったらしい。魔石の吸収が上手くいったのだろう。こいつもちゃんと進化してくれると嬉しいが。


「…………」


 レベルが上がった事で充実感があるんだろう。何となく気分良くなっている感じがする。相も変わらずこいつは喋らん。俺の最近の会話相手はサポートさんだ。そのサポートさんが言うには将来的には喋れる可能性があるらしい。


❖  ❖  ❖


 数日後。キノコを見つけた。味覚や痛覚はないが色合い的にやばい感じの奴だ。


“サポートさん。このキノコは?”

“検索完了。品種名【ムシリダケ】。体内に大量で危険な毒素が収納されています、触れるとその毒素を放出します。一般人が食べたり触ったり、吸引した場合は絶命します。ご主人様および個体名【サザナミ】が吸収しても毒が作用することはありません。大量に採取して緊急時に投げつけて、敵を排除するのに利用することを推奨します”


 そうと決まれば大量に採取しよう。予備の袋の中にキノコが毒素を放出しない様に慎重に採取していく。と思ったが、踏む位しないと放出はされないらしい。背嚢の横に付けて緊急時にも使いやすいようにする。

 サザナミはどうするのかと思ったが、なんと食ってる。マジか。死にはしないだろうが猛毒だぞ、ソレ。あ、色が変色した。腹でも壊したか? 薬品でも食べるか? 一応、薬品も同時にかける。すると、紫と緑が混ざった微妙な色になり最終的に緑がかった紫色になった。


■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■

名前:サザナミ雪波陽子 種族:キュアポイズンスライム 状態:従魔 Lv35


称号:異世界転生者 同行者 雑食 悪喰 毒喰 医喰


HP:370/370

MP:430/430

SP:850/850


コモンスキル

捕食(LvMax) 健脚歩(Lv1) 鑑定ステータス表示(LvMax) 魔力感知(LvMax) 五感補助(LvMax)

固有スキル

吸収捕食(LvMax) 擬態(Lv3) 大辞典(Lv6) 毒液生成(Lv1) 毒液貯蔵(Lv1) 薬品生成(Lv1) 薬品貯蔵(Lv1)

■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■


 変化している。窒息を狙いつつ毒で弱らせる作戦が使える上に薬品を売れるかもしれない可能性が出てきた。やったー! 金蔓確保ー!


「…………」


 そう、軽蔑した感じを出すな冗談だよ。それにこんな森の中じゃ何にも利用なんてできないし。まぁ、森を歩き続けるか。

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