第12話

咲姫が寝たきりなのは、zooウイルスに感染して、身体がクマになって冬眠したからなのか?


辻褄は合っているように思える。

でも、何だか拍子抜けと言うか、これでいいのかって感じなんだよなぁ。


例えるならば、五択のマーク問題で①が連続で続いていて不安に思う感じ。


どこかに引っかけ問題がありそうだ。


テストでは誰に相談出来ないけれど、今なら出来る。


「なぁ、咲姫はウイルスによってクマになって、冬眠したことで合っているかな?」


僕は珠玖ミミに尋ねる。


「まぁ、クマであることは間違いないね」


断言


実際に耳が猫な珠玖ミミが言うなら間違いない。

つまり、咲姫はzooウイルスでクマになった。


更々木咲姫は、白雪姫でも眠り姫でも無くて



「となると、春になったら目覚めるってことか」


寝たきりでなく冬眠なのは朗報だ。冬眠なら春になれば目覚めるってことなんだから、春まで待てば再び咲姫の顔を見れる。


「それは分からないなぁ」


「それは分からないのかよ」


咲姫が春になっても目覚めない可能性があるってことだろうか。だったら、僕は・・・・・・


「ひょっとすると、今すぐにでも起きるかも知れないよ」


え、逆っ! 

ずっと目覚めないのではなくて、今すぐに目覚める可能性がある!?


「どうすれば咲姫は目覚めるるんだ? 教えてくれ」


「それはね・・・・・」


勿体ぶって間を開ける珠玖ミミ。


「君が彼女に目覚めのキスをすればいいんだよ」



●◯●◯●◯●◯●



「えっ!? よく聞き取れなかったもう一回言ってくれないか?」


「君は難聴系主人公かな? 大事な事だからもう一度言うけど・・・・君が再々木咲姫に唇を合わせれば彼女は目覚めるよ」


「え!? いいの?・・・・・じゃなくて、流石に寝込みを襲うのは良くないのではないのか?」


「君にはそれを言う口があるとは、私は驚きだよ」


わざとらしく口を大きく開けて驚いた顔をする。


「そのアメリカの通販番組みたいなオーバーリアクションはやめてくれ」


「だって、最初に『え!? いいの?』とか言っといて、白々と正論をぶつけられたんだよ。驚かない人はいないでしょ」


ちっ 聞こえてたか。


「・・・・・・まぁその話しは置いとてだ。仮に僕が咲姫にキスしたとして、クマ耳が元に戻って、尚且つ冬眠から目覚めるなんて、こんなご都合主義は現実では起こらんだろ」


「いや、君がキスしたところで、クマ耳は治らない。これは一生付き合っていかないといかないんだよ」


自分にも語りかけるみたいに、珠玖ミミは自身の猫耳を縦に伸ばしながら撫でる。


「でも、お前さっき咲姫が目覚めるって・・」


「起きるけど、耳はそのまんま。あと、君が寝込みを襲った話、いや、君が見事に狩人ハンターの罠にかかった話も置いとかないで、そのまんま続けるよ」


出来れば気にせずに置いとて欲しかった。てか、僕が罠にかかった話? 何だそれ


珠玖ミミは謎が増えて、てんやわんやな僕の事は全く気にしていないようで、その話を更に続ける。


「男女の関係において、男はよく獣に喩えられるけど、その場合、女は獣を狩るハンターだよね。男は好きな異性がいれば、先程の君のように真っ直ぐ、分かりやすい行動をするけど、女は直ぐには行動せずに罠を張る。罠を張って好きな異性を捕まえる。綺麗な身なりや、料理とかでね・・・・あと他にも、演」


「えぇと、これは何の話?」


僕は話の意味がよく分からず、話を遮る形で疑問を口にする。


「白雪姫や眠り姫もひょっとするとハンターかも知れないって話だよ」


ん? もっとよく分からなくなった。

お姫様がハンター?


「まぁ、君が理解しなくてもいい話だね。とにかく、彼女を救いたければ、王子様と同じようにキスすればいいんだよ」


さっきまで、寝ている咲姫にキスしようとしてた僕が思うのは、人に見られている中でキスするのは、とても恥ずかしい。


てか、人前でキス出来る人の方が少ないだろ。


それに加えて、珠玖ミミがするキスコールがムカつきすぎて、どうにもそんな気分になれない。


「はい! キース ほら! キース キスキスキスキスキス! 男ならブチュッとやっちゃいな! 好きならキスなんて出来るでしょ! だってキスを反対で読むとスーキ! 好きなキスを隙だらけの彼女に好きなだけやっちゃいな!」


あームカつくなぁ、とてもなくムカつくなぁ

コイツをどうにかして黙らしたい。

けど、ただ黙らせるだけでは物足りないな。

お風呂入っている時にとかに思い出して、わぁーってなるほど屈辱的に黙らせたい。


「キスはよ! ほら! キスまだ? はい! キス キス!キス!キス!キス!キス!キス!キス!キス!」


よし、決めた! 


キスして黙らそう。


口を塞げば、この妙にイラっとするコールを止める事が出来るし、何より散々咲姫にキスをするように煽っていた相手に、自身がされたとなったら屈辱的だろう。


僕は珠玖ミミに向かってゆっくりと歩く。


「キス!キス!キス!キス!キス!キス!キス!キス!キス!」


自身の唇が狙われているとはつゆ知らずに、珠玖ミミは手拍子に合わせてキスコールは続けている。


僕は珠玖ミミの前で止まり、キスしやすいように顎を指で掴み、少し上に上げる。


キス キス キス キス キス キス キス キスキス」


まだ、続けるのかよ。  

最初は寸止めして、ビビらそうと思ったが、そっちがそう来るなら、僕も手加減はしない。冗談抜きでやってやるよ。


珠玖ミミの顔にゆっくりと近づく。







すると・・・・・・


「だめっだめぇーーーーーーーーーー!!!」


聞き慣れた叫び声が聞こえると同時に僕は横に吹っ飛んだ。


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