雪女ちゃんの憂鬱

レイド

~雪女ちゃんの憂鬱~

「あっついわ~……はあ……やってられない……」


そう愚痴を零したくもなる……何故かと言うと、暑いからで、何故暑いから愚痴を零すかと言うと……私は……まあ……一言で言うと、人々が恐れ慄く妖怪と呼ばれる存在だからであり、その妖怪にも色々な妖怪がいるのですが、私は雪を操る妖怪、雪女と呼ばれている存在だからである。で……そんな雪女の私だけど、実は……女学生と言うのをやらせて貰っている。まあ……何で女学生をやっているかと言うと……雪山に一人で篭っててもね? 人一人こねーのですよ。私のいた雪山って、いっつも猛吹雪ですよ? で、人一人いない状態で雪女としての活動? 意味無いと思ったので、人里に下山したと言う訳ですね。ちなみに雪女のやる事と言われてるのは、常に「死」を表す白装束を身にまとい男に冷たい息を吹きかけて凍死させたり、男の精を吸いつくして殺すとか言われてるらしーですけどね?

はっきり言うと私は雪女としては失格なのでしょうね? 白装束なんか着たくねーですし、男の精を吸い尽くして殺す? いやー……男と関わりたくないからこれも嫌だと。私の持論は、人生楽に生きてりゃいいですから、いや人じゃ無くて妖怪なんだけど。で……人里に下りて来て、女学生と言うのをやってみたのですが……まあ……何と言うか、山より都会?って言うのですかね? 山と違って、気温が高いんですよね……気温を見たら、34℃とかあるじゃないですか、山の平均温度が氷点下だったので、こりゃーえらい温度が違うなあ……と。まあ……せっかく女学生になったんだし、とりあえず……女学生として振舞おうと思っていたのですが……


「ちょっといいかな? ユキさん?」


「はい……何でしょうか?」


ある日の事、授業が終わったので、帰り支度をして、戻ろうとしたら、声をかけられた。声をかけて来たのは、同じクラスメイトの相沢百合さんで、この私に一体何が?って思ってしまった。あ、ちなみに学校で使っている私の名前はと言うと、山野ユキとして使っている。


「ちょっと変な事聞くけどさ……昨日……誰と話してたの?」


「え……? 誰とって?」


「実はさ……聞いちゃったんだ……昨日……ユキさんさ? 女子トイレで誰かと話してたよね? ユキさんが女子トイレを出た後、あの後、女子トイレに入ったんだけど、誰もいなかったんだよね? ユキさん? 女子トイレで何と話してたの?」


「……」


聞かれてたのか……ここはどう言ったらいいのだろう? 昨日か……昨日は……この学校の女子トイレにいる花子に色々と世の中の愚痴を言っていたのよね……花子は「なんで私があんたの愚痴を聞かなきゃいけないのよ……まあ……寂しかったし、べ、別に何でもないわよ!?」とか言っていたけど……ちなみに花子と言うのは、私と同じ妖怪で、トイレの花子さんと呼ばれている妖怪である。花子さんいらっしゃいますか? と尋ねる行為を一番手前の個室から奥まで3回ずつやると3番目の個室からかすかな声で「はい」と返事が返ってくる。そしてその扉を開けると、赤いスカートのおかっぱ頭の女の子がいてトイレに引きずりこまれる」というもので、最初に出会った時に「貴方……人じゃないわね? 何者なのよ?」と言われてしまい、それから仲良くなったのよね……? さて……ここはどう言えばいいんだろうか? とりあえず……


「えっと……独り言を呟いていたんです」


私がそう言うと


「独り言? でも……私が聞いたのは、二人の話声だったんだけど……あ、もしかして……ユキさんって……」


「な、何ですか?」


「電波さん?」


「え? 電波さん?」


電波さんってなんだろうか? 新しい妖怪の名前?


「あの……電波さんって、何でしょうか?」


「荒唐無稽な妄想や主張を周囲に向かって公言する者のことを指す言葉なんだけど……ユキさんって、そんな感じなんですか?」


「いえ……違いますけど」


何かすごい事を言われてしまった。この子には私がそう言う風に見えるんだろうか?

そんな事を考えていると


「じゃあ……女子トイレで何してたんですか……?」


「えっと……ただの独り言ですよ? 他に用はありませんよね? 私はこれで失礼致します」


そう言ってこの場から離れる事にした。


「あ、ちょっと……」


彼女が何か言っていたけど、無視する事にして、自宅に戻る事にしたのだった。それから……何というか……やたらと彼女の視線を感じる風になった。気のせいかもしれないけど、けど……なんか……彼女に見られているって思ってしまう。何で目をつけられたんだ? もしかして……私が人間じゃない事がバレたのだろうか?いや……別に秘密にしている訳じゃあないけど、特に言う事も無いしなあ……とりあえず私は、花子に相談してみる事にした。


「花子~どうしたらいいと思う?」


私がそう言うと、花子が呆れた感じになって


「あのね……ここから出られない私に言ってどうするのよ? 結局さ……ユキはどうしたいの?」


「ん~……気ままに暮らせたらそれでいいかな~って思ってるんだけど」


「はあ……ユキって雪女と呼ばれている妖怪なのよね? それはそれでいいの……?」


「だってさあ……私のいた山奥って、人一人いなかったし、男を凍らせて気を奪うとか? はっきり言うと、嫌って思っちゃったしね?」


「はあ……ま、まあ……ユキがいなくなるのは、寂しいと思うし……って、私は何を言っているのかしら……」


花子と二人で話していると、ガチャっと扉が開く音がして


「ここにいた、ユキさん……やっぱり……誰かと話してましたよね……?」


百合さんがやって来て、思った事は……ここにいる花子の事は見えているのかな? と思ったので


「えっと……百合さん……私の他に何か見えるかな?」


私がそう聞くと


「え? この場所にユキさんしかいないみたいだけど……もしかして……誰かいるの?」


その言葉で確信した事が一つ、百合さんには花子の姿が見えないと言う事が解った。


「ユキ、私の事が見えないんでしょ? じゃあ……私の声も聞こえてないと思うわよ?」


「だよね……じゃあ……ここはどうしようか?」


「はっきり言っちゃたら? 何で付きまとうのか?ってさ?」


「う~ん、そうした方がいいのかもね……」


「ユキさん、誰と話してるんですか?」


「ここにいる花子とよ」


「……花子? それって……もしかして……妖怪とかそういう存在……?」


「そうね……ねえ、何で私に付きまとうのかな? 私……貴方に何もしてないよね?」


私がそう言うと、百合さんが何故か顔を赤らめてきた。え……なんでこの子顔を赤らめてるの……?


「それは……貴方が好きだからです! だから私と付き合って下さい!」


「……は?」


「マジで? 確かにユキは美人だとは思うけどさ? ユキはこんな性格よ?」


「花子、ちょっと黙ってて……え、えっと……百合さん……それって本気なの?」


「本気です! 初めて見た時から凄い気になってしまって、貴方の事を考えている時間が多くなって……ユキさんって本当に綺麗で、まるで人間じゃない感じもたまらなく愛おしく思っちゃったんです」


「うわ~この子ガチみたいね……どうするの? ユキ」


「どうするって言われても……あのさ……実は私、人間じゃないのよ。さっき貴方が言った妖怪って言われてる存在なんだけどさ? それでも私の事、好きなの?」


「はい、全然OKです! えっと……ユキさんってどんな妖怪なんですか?」


「えっと……雪女……」


私がそう言うと、何故か百合さんが私の手を握ってきて


「雪女の話は知ってます。確か……常に「死」を表す白装束を身にまとい男に冷たい息を吹きかけて凍死させたり、男の精を吸いつくして殺すとかですよね? それって……男が好きだからそんな事をしてるんですか?」


「いやいや、私……雪女としては変わってるのよ。男と本当に関わりたくないし……」


「じゃあ、私とはどうですか? 私……ユキさんに凍らせられて精気を吸われてもOKと思っています……」


うわ……この子、目がマジだよ……ど、どうすればいいの?


「私とじゃ駄目ですか……? 私……ユキさんと本当に付き合いたいんです……」


「は、花子……どうしたらいい?」


「私に聞かれても答えようがないわよ……とりあえず、ユキ? 山には戻りたくないんでしょ?」


「ま、まあね」


「なら……答えは出てるんじゃない?」


答え……そう言われて考える。

確かに私は、人っ子一人いない山奥から、ここまでやって来た。で、なんとなーく女子高生としてやってるけど、別に男目当てでこの学校に潜入した訳ではないし、それにこの子……見た目は可愛いから、男を捕まえるよりかはマシかも知れないと思ったので


「えっと……付き合うと言う事はちょっと解らないけど……こんな私と仲良くなりたいって事でいいのかな?」


「はい、駄目ですか?」


「……え、えっと……よろしく……で、いいかな?」


「あ……ありがとうございます!あの……これは、私の気持ちです!」


そう言って、近づいたと思ったら、いきなり唇をふさがれてしまった。


「ん……!」


「ユキさん……好きぃ……」


「な、何やってるのよ!? ここはそういった事をする場所じゃないわよ!?」

うわー花子に見られちゃってるよ~

でもこの子ばっちしと私達のキスシーン見てるじゃん。

こっちは無理やりされたんだから、どうしようも無いじゃない……

数秒間ぐらい繋がった後、


「私……幸せです……これからも彼女として、頑張りますので、よろしくお願いしますね? ユキさん」


「えっと……うん……」


こうして、雪女の私に彼女が出来てしまった。雪女として、これはいいのだろうか? ま、誰にも迷惑かけなかったらいいのかも知れないなあ……と思う事にした。ちなみにキスした後、何故かは知らないけど、百合は花子の姿が見えるようになっていたのであった。




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